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星辿り  作者: 海乃海
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第2話-初めての星渡り-

今回は少し長く書けたと思います。

覚悟を決めて目を瞑ったと思ったら強い光が瞼を照らし、2人の目に飛び込んでくる。そして足が地面を失い浮遊感に苛まれたと感じた瞬間とんでもないほどの気持ち悪さに悶えることになった。


「すまない2人とも。この条件での星渡りはとてつもなく酔うんだ。慣れればそうでも無いんだが初めての2人には厳しかったね」


意識を失いそうになるほどの吐き気と目眩の最中、遠くの方からアリオンの声が聞こえてきた。そして2人とも密かに復讐を誓い意識を手放したのだった。(絶対許さない…)(絶対許さねぇ…)


遠くで誰かの話し声が聞こえてきた方向に微かに回復した意識と重たい体をわずかに動かして耳を傾ける。


「今どき星渡りでここまで酔ってしまうなんて珍しいですね」


「2人とも生まれて初めての星渡りだったので仕方ないですよ」


「初めてだったのですか!最近は戦争の影響であまり1つの星で長居出来ないのに…平和な星だったんですね」


(戦争ってなんだ!?物騒な話を聞いちまったな…アリオンが言ってたのはこのことだったのか?)


先に目が覚めたヴァレリオスだったが不安の種が増える結果となってしまった。そして辺りを見回すと白い天井に少し灰色がかった壁の部屋でベッドに横になっていた。他の星の話はアリオンに聞かされていたので自分が病院というところにいることは理解出来た。その時にアリオンが部屋に入ってきた。


「目が覚めたんだねヴァレリオス。意外と早く回復した様だ」


時計を見ると昼前だったので祠の時点から1時間弱しか経っていなかった。そしてアリオンの話し声で目を覚ましたアマラがキョロキョロと辺りを見回していた。


「おはよう2人とも。早速だが回復したら昼ごはんついでに友に会いに行こうか」


­­--­­--­­--­­--­­--­­--­­--­­--­­--­­--­­--­­--­­--­­--­­--­­--­­--­­--­­--­­--­­--­­--­­--­­--­­--­­--­­--­­--­­--­­-


星暦220年-シルバーヘイブン星-


病院を出た2人はいきなり目に飛び込んできた光景に声を失った。物心付いてからずっとアリオンと双子の相手以外の人間に会った事が無かった2人が大人数の人を見たからである。


「こんなに多くの人がいるなんてこの星はすごいんだね!」


「何を言ってるんだいアマラ。ここは文明レベルも人口も全然だよ。」


その言葉を聞いた2人は更に絶句してしまった。移動しながらアリオンに聞いた話ではこの星は高度文明のベッドタウンのようなものでここ自体に特に何も無いらしい。そんな星だがアマラとヴァレリオスからすれば未知との遭遇だった。


そして目まぐるしく変わる景色に目を奪われていると前の方からアリオンよりも長身でがっしりとした体格の男が歩いて来た。がっしりとした体で髭も生えているがそれに似合わない程優しい目をしているのを見るに警戒が必要な人では無さそうだ。この人がアリオンの友と言っていた人だろうか?と考えているとその答えはすぐにわかった。


「久しぶりだなレイナード」


「何年ぶりだアリオン!まさかアリオンにガキが出来たとはな!」


「私とこの子達に血縁関係は無いんだがそれでも家族だと思っているさ」


「何か訳ありって感じだな…」

「そんなことより久しぶりに会ったんだ!ガキ達の分は俺の奢りだ好きなだけ食いな!」


「俺には奢ってくれないのか?」


「お前は俺よりも稼いでるだろうがよー」


アリオンとレイナードの会話に2人は自分たちの見た事のないアリオンの姿を見たことで少し拗ねる気持ちと家族だと思っているという言葉の気恥しさでなんとも言えない表情になり、アマラとヴァレリオスは互いの顔を見合わせていた。



「お前らも大変だったんだなぁぁぁ!」


デカい大人がアリオンから聞いた話で号泣しているのを見て少し引いたが悪い気はしなかった。


「でもこいつが親とかキツくないかぁ?こいつすげぇ厳しいし甘やかして育てなかっただろぉ?」


「いえ、アリオンは私達にとってとても優しくて頼りになるお父さんのような人ですよ!」


このアマラの言葉で今度はアリオンが恥ずかしそうにそっぽを向いてしまった。それを言っているアマラも顔が真っ赤になっているのが伺える。それを見たレイナードが笑いながら子が親に似るとはこの事か!と言っていた。


――――――――――――


食べ終えて店を出ると空が少し赤く染っている。昼過ぎから夕方までずっとレイナードがうるさかったくらいしか覚えてない程アマラとヴァレリオスは恥ずかしい反面飯を爆食いしていたので会計の時レイナードの顔が引き攣っていた。


その後レイナードの事務所に移動し、今後の旅について話し合うことになった。レイナードはアリオン達のような旅人に行き先の情報を渡しているという。その旅の目的に応じた行き先を必ず見つけてくるらしいので相当情報を集めているようだ。


「それで?アリオン達はどこに何をしに行きたいんだ?」


「私には目的は無いが、この2人は今まで1つの星しか見てなかったからな16歳になったことだし色んな星に連れて行こうと思っていてな」


「なるほどなぁ、しかし時期が悪いな…今は戦争が起きる可能性が高いんだよ。そんな中どこかの星に行くとなると最悪巻き込まれかねないけどな」


「それについては問題ない。この2人には戦争に参加しろとは言わないが実戦経験が必要だからどこかで戦わせるつもりだったんだ」


こんなこと初めて言われたので2人して目を見開いた。大きな驚きと共にアリオンの目的がないというのになにか引っかかった2人だったが何も言えなかった。


「それなら次はテクノポリスって星が良いかもな。文明レベルは高いしあそこは星間連合の重要拠点だからすぐになにかに巻き込まれることは無いだろう。しかも武器までいいのが手に入るからな!」


武器と聞いて心が踊る2人。しかしそれを遮るようにしてアリオンが核心に着いた。


「すまないレイナード。2人には自立して欲しいからな。武器を買う金も自分達で稼がせなければ行けないんだ」


「それならやはりテクノポリスがいいな!あそこの星はステラリアン社の大きな支部があるからな」


「それはいいな。ステラリアン社なら傭兵派遣会社も兼ねていたな」


テクノポリス?星間連合?ステラリアン社?傭兵派遣会社?色々聞いたこともない単語が出てきて混乱し始めたころ、ふと腕についているステラバンドを見るとステラリアン社と書いてある紋章が書いてあったのを見つけた。このバンドを作っている会社がステラリアン社ということなんだろうか?


「2人ともよくわかったなそのバンドを作っている会社、そしてこれから先星渡りのゲートを管理しているのもそのステラリアン社だ」


アリオンがすぐに疑問に答えてくれた。しかしいつも思うのだがアリオンは背中に目でも着いているのか?という疑問がでてきたがそんなわけないかと疑問を押し潰した。


「とりあえず今日は3人ともここに泊まっていきな。明日には次の星に行くだろ?ゆっくり休めよぉ」


「ありがとうレイナード。お言葉に甘えさせてもらうよ。2人とも明日も早いから早く寝ようか」


------------


双子と別れて部屋に入ると綺麗なベッドとシャワーがあったので手早くシャワーを浴びて寝る支度を済ませた。今後どんなことが起こるのかといつもとは見せないような不安そうな顔を浮かべるアリオンだった。


「ここら辺の星は行ったことがないからレイナードを頼ったが…やはり初めて行く場所となると2人が心配だな。……この旅でも私の目的は達成されないかもしれないな…」


窓の外には月が2つと彗星が夜空を照らしていることからも知らない星だと自覚させられる。アリオンの独り言は月明かりに掻き消されてしまったがそれを望んでいるかのように眠りについた。



読んで下さりありがとうございます。

まだまだ続くのでよろしくお願いします。

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