空気と思考
「んぅ………うん?」
「おっ!起きたか?」
「うるさいぞ。ペッパー。起きたのか?」
診療所でベッドで寝ていた大陸人が起きた。
まだ身体が痛むのか、体を起こす事なく首だけ回して辺りを見ていた。
ペッパーと呼ばれた助手が動いた事に気がついたのか顔を近づけて反応を確認した。
すると、驚く表情を浮かべた事から意識はしっかりしている事の確認が取れた。
ペッパーの大声で目が覚めたのか隣のベッドから医者が起きてきた。
「言葉分かるか?って分かるわけないか。」
医者は大陸人に近づくと話せるかどうかと意思疎通出来るか確認しても、他の人種と関わったことのないこの島の言葉を知るわけないかと頭を掻いてめんどくさそうにしていた。
「ドク先生!なんとなくで分かりませんか?!自分には分かりません!!」
「分かるわけないだろう。馬鹿なこと言っていないで、さっさとリビィ様を呼んだこい。あの人なら話せなくても意思疎通が出来る。」
ペッパーはドク先生の指示を聞くとアイアイサー!!と敬礼して扉をバーン!と力強く開けて出て行った。
「静かに開けろよ。たく……」
ドク先生は最近開発された煙草を吸いながら待つことにした。
めんどくさく眠たげな頭がスッキリする感覚がとても心地よかった。
ドク先生が心地良くタバコの煙を吐いていると冷たい視線を感じた。
「なにかね。君も吸いたいのか?悪いが君に吸わせるわけにはいかないな。」
その視線を羨ましがっているのかとドク先生は思ったが、未知の大陸人にメルビラン用の煙草を吸わさせて具合悪くする程度ならいいが、死なせて仕舞えばお仕置きは確定である。
「コイツはそんな身体に悪いものを吸うなと言っているんだよ。」
「リビィ様、お早いお付きで。」
「先生!リビィ様を連れてきました!!」
検討はずれの発言をするドク先生に大陸人が何言っているのかをリビィが訂正した。
後ろからペッパーの元気の良い声が聞こえるが、リビィの体で一切見えていなかった。
「そうなのかい?それにしても身体に悪い?煙草は身体に良いものだ。大陸では違うのか?」
煙を吐き出しながら何おかしい事を言っているんだ?とドク先生は不思議がっていた。
海藻と島に生えている薬草を混ぜて作られているこの煙草はメルビランの精神を落ち着かせる効果があるのだ。
ただ、独特な匂いと煙が苦手な人が多く、忌避する人も多いのが現状だった。
今でも喫煙者の肩身は狭いのに、そこに身体に悪いなんて噂が流れた更に悪くなるとドク先生はうざがっていた。
「そんな事よりお前は大陸から来た人間か?」
「………………」
得体の知れないリビィ達に話す事はないとダンマリを決め込む事にした大陸人だったが、リビィはそこにから感じた僅かな空気を読んだ。
「そうか、大陸人か。」
「っ!」
「あぁ、俺は眷属じゃないぞ。候補ではあるがな。」
自分の思考を読まれた事を察知した大陸人はリビィの事を神の眷属かと疑ったのだが、リビィが即座に否定した。
その上で自分が眷属候補である事を明かす事で、その感覚をハッキリさせた。
その独特な雰囲気を感じた大陸人はリビィが候補者である事を感知して警戒した。
「へぇ、お前が会ったことのある候補者は俺より弱いのか。」
「くっ!」
出来る限り思考を停止しようとしているのにそんなの関係ないように読まれてしまう事に混乱していた。
リビィは思考ではなく、空気を読んでいるため、幾ら思考を停止していても漏れ出す空気を止めない限り読まれてしまうのだ。




