外伝1
Syu's view
何故か最近、奏音と一緒に帰らなくなった。奴の周りは忙しいから、仕方がないのかもしれない。
「叔父さん!」
「叔父さんって呼ぶな!」
反射的に振り返りながら叫んでしまった。道路の向かい側からショートカットで線の細い女の子が手を大きく振りながら走って近付いてきた。
「えー、なんで?」
「俺とお前は同い年だろ!」
同い年の女の子から叔父さんと呼ばれる俺の気持ちになって欲しい。
「でも、叔父さんなのは事実だよ?」
俺のことを叔父さんと呼ぶこの女の子は、泉穂乃香。俺が何故彼女から叔父さんと呼ばれているかというと、彼女は俺の姪であるからだ。だから、彼女から見れば俺は正真正銘叔父さんにあたる。このようなことになったのも、年の離れた兄の子供が生まれた年に母親が俺を産んだからだ。俺の両親頑張りすぎだろう?
「叔父さん、何ぼーっとしてるの? 頭大丈夫? 置いてくよ」
「だから、叔父さんと呼ぶなと何度も言ってるだろ」
穂乃香は『え~』と駄々をこねて、納得のいかない子供のような顔をしながら見上げてくる。
「でも、私と周君の愛の前では呼び方なんて些細なことだよ」
何故か、こいつは俺の事が好きらしい。それも、ライクでなくラブだ。でも俺は妹的な奴としか思えない。まあ、好いてくれるのは俺としてもうれしいんだが。でも、でもだな……、
「俺とお前の間に愛があるのかは、とりあえず置いておくとして……、そろそろ俺をストーカーのように付け回すのはやめてくれないか?」
こいつのストーカー癖はどうにかしてほしい!
「ストーカーはひどいよ!」
「じゃあ、洗濯機の中の俺の服のにおい嗅いだり、俺が入ってるときに風呂場に入ってこようとしたり、俺の予定を全部手帳に書いて俺より把握してるのはストーカーって言わといんだな?」
最近ではパソコンを使って俺の行動をシュミレーションしたりもするらしい。
「私はただ周君が好きで好きでたまらないだけなんだよ。周君が十八歳になったら私達結婚するんだから、そのあとの生活と変わらないでしょ」
普通なら嬉しいはずの愛情表現も、穂乃香からだと頭痛の種にしかならない。そして、俺は穂乃香と婚約した記憶はない。
ちなみにこいつは俺とは別の家に住んでいたが、最近親父に無理言って俺の家で居候をしている。いや、親父は喜んでいたが……。
そして、俺はこいつのせいで彼女ができたことがない。好きな子に告白しても二股はいけないよって断られることが何度あったか。
「私はどこまでも周君に着いて行くから!」
「おもいっきり、ストーカーじゃん。というか、俺らは三親等なんだから結婚とかできないんだけど?」
いとこなら結婚できるんですけどね。
「それでも私は構わない!」
「俺は構うんだよ。いつかは結婚したい!」
「私と?」
「お前とじゃねぇ!」
本当に頭が痛くなる。どうして俺は、穂乃香の叔父さんに生まれてきてしまったのだろうか。




