表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/15

外伝5

 学園ではいつも通りの時が流れている。池宮城さんの噂を話す人ももう少なくなってきた。奏音ちゃんは昨日学園を飛び出して以来何をしているのか分からない。夕方私の家に来たけれど、玄関のドアを開けたら奏音ちゃんの姿はなかった。私は嫌な予感がしたので、奏音ちゃんの家に行ってみたけれどいつもどっしりと構えている奏音ちゃんのお母さんが、寂しそうに奏音はもう帰って来ないのよと話してくれた。どうして帰って来ないのか、この場面に出くわしてそれを聞かないのは当事者か全く興味がない人だけだろう。私も聞かずにはいられなかった。

 私が尋ねると奏音ちゃんのお母さんは全部は教えてくれなかったものの、大まかな内容は教えてくれた。その話によれば、奏音ちゃんはお爺さんに引き取られて、もうこちらには帰って来ないということだった。

「それは奏音ちゃんが望んだんですか?」

 今、奏音ちゃんは池宮城さんの事で頭がいっぱいのはずなのにお爺さんに引き取られるなんてそんなことを望むだろうか?

「あの子には何も知らせてなかったのだけれど、私達夫婦と私の父との間で交わした約束だったのよ。だからあの子からしたら、急に無理やり連れていかれたという感じで望むなんてことは全くないでしょうね」

「何でそんな勝手な約束をしたのですか? 奏音ちゃんの気持ちを考えて上げてください!」

 もし、私が同じ状況になったら嫌だ。何故、本人に話もせずにそんな大切な約束をしてしまったのだろう?

「悪いことをしたと思っているよ。でも、仕方がなかったんだい。私の父は頭が固くて自分の言う通りにならないと強引に何でもしてしまう人だからね。今まであの子がここにいれただけでも譲歩してくれてたんだよ」

 もう、抵抗することに諦めたかのような発言。お爺さんと今までに何かがあったのだろうか?

「奏音ちゃんは学園には来るんですよね?」

「多分、転校すると思うよ。あの人は今の奏音を放し飼いにする気なんてないだろうから」

 奏音ちゃんのお母さんの話を聞く限りだと、お爺さんにとって奏音ちゃんはとても大切なものらしい。でも、それが孫としてではないことは理解できる。

「……今頃、奏音ちゃんはどこで何してるんだろう?」

「どうしたのさ、瑞希ちゃん?」

 私の席の前には周君が立っていた。周君は奏音ちゃんの親友だけれど、私と二人で話したことはほとんどない。その周君が私に話しかけてきたということは、奏音ちゃん絡みのことではないだろうか?

「どうしたって何が?」

 ぼーっとしていた私には周君の質問の意味が分からなかった。

「さっきから心ここにあらずって感じで目の焦点も定まってないし、ぶつぶつ何か言ってるしでどうしたんだろうと思ったんだよ。こういう役は奏音の方がいいだろうけどあいついないしな」

 私はその奏音ちゃんのことで悩んでいると周君には話した方がいいのだろうか?

「俺さ今まで奏音とつるんで来てすごく楽しかったし、よかったと思ってる。何か最近は俺の相手どころじゃなくなって疎遠になってたかもしれないが俺は時々話すだけでいい友達だと実感できた。だから、昨日もそんないつも通りの感じで話していたんだけれど、あいつ急に怒り出して帰るから俺が怒らせたんじゃないかと思って帰りに家に謝りに行ったんだよ」

「えっ!」

 周君も昨日奏音ちゃんの家に行ったの? じゃあ、周君も知ってるってこと?

「俺が奏音の家に行ったときにあいつの母ちゃんから聞いたんだけれど、あいつ転校するかもしれないんだってよ」

「そうらしいね……」

「知ってたのかよ。それで俺はあいつに転校なんてして欲しくない。あいつはが学園でのいい話し相手だからな」

「私だって転校してほしくなんかないよ。私にとって奏音ちゃんは大切な人だから……。でも、私には何もできそうなことはないみたい」

「そうだな、今はあいつが頑張る時だよ」

 そう言うと周君は離れていった。

 奏音ちゃん、私たち力にはなれないけれど応援してるから……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ