幼き白虎と幽霊部屋の謎 前編
あるニュータウンにある団地にはあるウワサがあった。その内容は存在しないはずの13号室が存在するというウワサであった。
どこか怪奇譚を思わせる内容に団地の人々はそんなものは都市伝説と否定したが、団地にはそのウワサが静かに暗い影を落としていた。
◆◆◆◆◆
「今日こそ幽霊部屋の謎を解き明かして見せるよ!」
そう意気込む小学5年生、加賀崎美琴。彼女は幽霊部屋のウワサに興味津々でしばしば団地内を冒険しているのだ。
今日も放課後、団地に帰宅もそこそこに幽霊部屋の謎を探るべく団地内を探索を始めた。
美琴は団地の二階の廊下をウロウロしながら存在しない13号室を探していた。
「あら、美琴ちゃん、また探検かしら」
すると、団地の住人である千晶が美琴に声をかけしてきた。
「あっ、千晶ママ! 今日も美琴は幽霊部屋の謎を探しているの」
「そう、見つかるといいわね……でも、お母さんを困らせちゃダメよ?」
千晶は美琴を危険な真似をしないようにたしなめる。
「うん、千晶ママは何か幽霊部屋について何か手がかりになりそうことはない?」
「ごめんなさい……何も幽霊部屋についてわからないの。役に立てなくてごめんね」
「わかった! 千晶ママ! 又今度ね」
「美琴ちゃん、頼むから危ない真似しちゃダメよ」
そう言って美琴は千晶の前を風のように去っていった。
◆◆◆◆◆
美琴は団地の階段を元気よく昇り三階と四階の間の踊り場部分のどこまでやってきた。踊り場の壁にはゴミ出しルールの啓蒙張り紙、地域のイベント情報、そして誰が張ったかわからない謎の怪文書が張り出してあった。
美琴はさすがに階段の昇りに疲れてきたので少し踊り場で立ち止まり休憩した。すると向こう側から目つきの悪い男が階段から降りてきた。団地では見かけない顔だ。団地の四階に何の用だろうか? 美琴はそう思った。
目つきの悪い男は美琴を一瞥すると、そのまま立ち去っていった。しばらく休むと美琴は四階の階段を登っていった。
四階は部屋の住人が少ないので不気味に静まり返っていた。
美琴は恐る恐ると四階の廊下を足を進める。やがて美琴はある部屋の前に足を止めた。なぜだか知らないが足を止めないといけないと思ったからだ。部屋の名前は9号室。美琴は試しにドアをノックしてみた。反応はない。9号室の住人は知らぬ間に引越でもしたのだろうか?
しかし、何か違和感がある。 見事は意を決してドアを開けてみた。ドアは拍子抜けのように簡単に開いた。美琴は思い切って9号室に侵入してみた。
九号室の室内は雑然としていて生活感を感じさせていた。まるで人間が9号室から忽然と消失したように見えた。美琴はなんだか9号室が不気味に見えてきた。美琴は慌てて9号室を出て、そのままの勢いで四階から二階まで降りてきた。美琴の顔は青ざめていた。
美琴は自室に戻り、布団をかぶって丸まった。
(四階の9号室に何が起きたの?)
一つだけ考えられるのは四階の階段から降りてきた目つきの悪い男が9号室の住人に何かをして9号室の住人がいなくなったということだ。ひょっとしたら目つきの悪い男は殺し屋かもしれない。美琴は恐ろしい想像が止まらなかった。その恐怖感は、美琴の両親が戻ってくる時まで続いた。