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 陛下の御前を辞すると、早速お父様が掴みかかってきた。


「アデル! どういうことだ!?」


 お父様と私の間に、ディアンヌ様が体を差し込んで、私を庇ってくれた。


「アデルは国の大事なお仕事をする身ですの。丁重に扱ってくださる?」


 お父様はディアンヌ様を睨んだが、陛下の王命があるため言い返せないようだった。


「アデル。貴女、そのドレスはどうしたの?」

「そうよ! お姉様の部屋には何もないはずなのに、どこに隠していたの! 黙っているなんてひどいわ!」


 定期的に私の部屋を漁っているのがバレるから、発言には気をつけなさいよ。ここは公爵邸ではなく夜会の会場なのだから。


 思わず呆れた私だったが、リリアンがドレスに手を伸ばしてきたのでその手を払った。


「痛いっ! なにするのよ!」

「リリアン。お父様、お母様。このドレスはディアンヌ様にお借りしたものです」


 いつものように奪わせる訳にはいかないので、少しきつい口調で言ってお母様を睨みつけた。

 さすがに、他家の令嬢に借りたものをリリアンに寄越せとは言えないだろう、ちゃんとリリアンを抑えろ、と牽制を込めて。

 お母様は少し怯んだが、リリアンはそれでも納得しなかった。


「どうして、お姉様だけ借りれるの! ずるいわ! 私にちょうだい!」

「黙りなさい、リリアン。ドレスのない私を憐れんでディアンヌ様がお貸しくださったのよ。染み一つ付けずにお返ししなければならないの。そもそも私のものではないから、あなたにはあげられないわ」


 私はこめかみを押さえた。どうしてこんな常識を言って聞かさなければならないのだろう。情けないを通り越して疲労を感じる。


「でも、お姉様が着ているのだから、私にくれてもいいでしょう!」

「……お母様」


 理屈が通じないリリアンへの説得を早々に諦めて、まだかろうじて羞恥心が残っているであろうお母様を睨む。


「リ、リリアン。あれはアデルのものではないのよ。夜会が終わったらお返しするの」

「どうしてよ! お姉様が私の持っていないドレスを着ているなんてひどいじゃない!」


 人前でもこんなに異常なことを言えるだなんて、本当にこの子は大丈夫なのだろうか? 一度、医者に見せた方がいいのでは、と不安になってくる。


「聞きしに勝るわね」


 ディアンヌ様が私の耳にこそっと囁いた。ああ、やはりディアンヌ様は我が家の事情をご存じだったのだな。

 それで、私にドレスを貸してくれたのか。


「ここにいると人目が痛いわ。あちらへ行きましょう」


 ディアンヌ様に手を引かれ、私は泣きわめく妹をどうにかなだめようと苦労している両親から離れて人の群に分け入った。




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