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「アデル、アデル」

「ん……?」


 優しく揺り起こされて、私は目を開けた。


「ディ……ートリフ殿下?」

「ただいま」


 ディートリフ殿下がにっこりと笑う。

 私、寝ていたんだ。夢を見ていた……


「はっ!」

「ど、どうしたアデル?」


 私がカッと目を開いて飛び起きると、殿下が面食らった。


「殿下! お願いがあります!」




 ***




 ディートリフ殿下は私のお願いを叶えてくれた。

 私は王宮に部屋を用意してくれるという申し出を断って、あの旧カレンス邸に住ませて欲しいと頼んだのだ。


「これで、寂しくないでしょう?」


 お茶を飲みながら、小さく呟くと、まるで返事をするように風が吹いて、木の葉をしゃらしゃら鳴らした。


 ディートリフ殿下は離宮を用意してくれると言っていたけれど、私としては婚姻後もできればこの家に住みたい。

 私がここに住んでいる限り、もう呪われる王子は現れないと思うから。


「お嬢様。王子殿下がお見えです」


 エリィが訪問を告げ、私はディートリフ殿下を笑顔で出迎えた。


「……え?」


 ディートリフ殿下からもたらされた知らせに、私は目を丸くした。


「両親と妹が、病気で入院した……?」

「そうなんだ。あの日、アデルの絶縁の手続きとフルブライト家への養子縁組み、私との婚約を知らせに行った使者が発見した。体中に痣ができる症状で、詳しく調べないといけないし、感染症だったら大変だからしばらくは隔離して治療となる」

「そう……ですか」


 あの体力の有り余っているリリアンと、両親が病気だなんて。うまく想像が出来ない。

 公爵家は跡を継ぐものがいないのでなくなって、領地は王家の直轄地となるらしい。

 ディートリフ殿下は、いずれ公爵位を与えられ直轄地を割譲されることに決まっているので、もしかしたら元フェザンディック公爵領が与えられるかもしれない。


「使用人達には伝染っていなかったから安心してくれ。一部はこの家で働いてもらって、残りはちゃんと他の家に紹介する」


 殿下のお言葉を聞いて、私はほっと胸を撫で下ろした。ずっと私を心配してくれていた使用人達が無事で良かった。


「ところでアデル。アデルのドレスを作りたいんだが」

「え? もう十分いただきましたよ?」

「夜会用とお茶会用の服を何着か作っただけだろう? まだまだ足りない!」

「でも、普段はカレンス家の娘の服を借りて着ていますし……」

「そんな古着ではなく、私が贈った服を着て欲しいのだ!」


 このところ、殿下はやたらと私の服を作りたがるのでちょっと困ってしまう。

 いきなり私のものが増えて、幸せすぎていっぱいいっぱいなのだ。これ以上増やされたら、私の胸が幸せで破裂してしまう。


「こら。「親友」の言うことを聞きなさい」

「~っ、ディアンヌっぽい言い方するのはずるいですっ!」


 男性に戻ったというのに、殿下は時々ディアンヌみたいに色っぽい顔をするので油断が出来ない。

 私は顔を真っ赤にして、「親友」にときめいてしまう自分に困ってしまうのだった。




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― 新着の感想 ―
とても面白かったです。 アデルが幸せになれて良かったです。 元家族へのざぁまも完璧でした。実の両親なのに姉妹で対応が違いすぎるの本当になんなんだろうね。妹も強欲過ぎるし・・・病気かなぁ。
[一言] ざまぁ部分も含めてとても楽しかったです
[良い点] とっても面白かったです。 最後にカレンス家の娘さんも寂しい思いをしなくてすんで良かったです! ただ、名前が全く出てこずに、カレンス家の娘とだけ呼ばれるのは少し寂しく感じました。
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