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 夜会では両陛下を始めとしてたくさんの人に声をかけられお祝いされて、私はあまりのめまぐるしさにくらくらした。

 夜会が終わると王宮に用意された部屋に通される。ディートリフ殿下は「用がある」と言ってどこかへ行ってしまったので、メイド達に世話を焼かれながら待っていた。


 まさか、ディアンヌがディートリフ殿下だったなんて。

 ディアンヌが中身は男性だなんて全然気付かなかったわ。私よりよっぽど色っぽかったし……


 そう言えば、ジョーゼフ様は知っていたらしい。

 カレンス家と名乗ったのを聞いてわかったと言っていた。ジョーゼフ様の家は古くからの名門だから、「カレンス家の呪い」についてもちゃんと伝えられているのだという。


 ……お父様は知らなかったのかしら。知っていたらディアンヌにあんな態度とらないわよね。知らなかったのね。


 フェザンディック公爵家は王室に連なる家なのに、どうしてお父様は知らなかったのかしら。

 知らなかったの? それとも、教えられたけれど忘れてしまったのかしら?


 これから、あの家はどうなるのだろう。

 リリアンの性格では家を継ぐことは出来ないし、社交の場であれだけやらかしているのだから婿に来てくれる家を探すのも難しいのではないだろうか。


 まあ、私にはもう関係ないけれど。


 ディアンヌ――ディートリフ殿下は「後で取り返す」と言っていたけれど、カレンス家の娘のドレスを、ちゃんと返してもらえるのかしら。


 そんなことをつらつら考えていると、いつの間にかうたた寝してしまっていた。


 夢の中に、美しい女性が現れる


『ああ、やっと声が出せた!』


 これまでずっと何か言いたげに口を開いていた女性から、初めて言葉が発された。


『貴女! 騙されているわよ! あいつは本当は男なのよ! 油断しないで!』

「え……?」


 まるで私を心配するようなことを言われて、私は面食らった。


「あの……貴女はカレンス家の方ですよね?」

『そうよ! あのクソ野郎とアバズレにハメられて処刑されたの! 悔しい!』


 ぷんぷん! と頬を膨らませるカレンス家の娘。


「あ、あの、もう王家を呪うのはやめてください。貴女の怒りはわかりますが、子孫の方に罪はないはずです」


 私がお願いすると、カレンス家の娘は決まり悪げに首を傾げた。


『わかってるわよ。子孫は悪くないって。そもそも、呪いって言っても、別にとり殺したりするつもりじゃなかったもん。ただ、あのクソ野郎みたいに女遊びしまくった挙げ句に邪魔になった婚約者に罪を着せて殺すようなクズが二度と現れないように! 女の気持ちを理解できるようにしてやれーって思って』

「え……?」


 そ、そんな理由で、思春期の男子を女性の身体で過ごさせたの?


『でも、最近は何もしていなかったのよ? でも……王子を女性にするのをやめたら、あの家に誰も来てくれなくなったんだもん。だから、また王子を女の子にすれば皆来てくれるかなーって』


 おい。

 まさか、ディートリフ殿下が女性にされたのは、寂しかったから?


 最近は何もしていなかったって、確かに王太子殿下はずっと男性で、女性になっていたことはない。第二王子のディートリフ殿下だけ女性にされたのは、家に誰も来なくて寂しかったからなの?


「だったら、呪いなんて掛けなくても、誰か家に住んでくれるように頼めば良かったじゃない」

『だって、私の声が聞こえたの、貴女が初めてだもん。王子には何度呼びかけても全然反応無かったわ。夢にも入れなかった』


 カレンス家の娘は首を傾げた。


『なんで貴女の夢にだけ入れるのか不思議だけど、もしかしたら、貴女と私が同じ苦しみを抱いていたからかもね』

「同じ……?」

『なにもかも奪われた、っていう想いを、悲しみを抱いていたから、貴女にだけ私の声が届いたのかもしれない』


 カレンス家の娘の言葉に、私は目を見開いた。





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