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 何が届いたのか、と不思議に思いながらディアンヌに引きずられていくと、連れて行かれた部屋には目の覚めるような美しいドレスが掛けられていた。

 薄桃色で、スカートが幾重にも広がって、金糸の留め具が飾られている。

 最先端の洗練されたデザインだ。



「うわあ……素敵……」


 思わず呟くと、ディアンヌが満足そうに頷いた。


 明日の夜会用のドレスなのだろう。

 そうか。明日でディアンヌはお役目を終えるんだ。もう、古いドレスを着なくて済むのだ。

 きっと、このドレスを着て第二王子殿下の横に立つに違いない。だって、これは王子の婚約者にこそふさわしいドレスだ。


「おめでとうディアンヌ! このドレス、絶対にディアンヌに似合うよ!」

「何を言っているのよ。これは貴女が着るドレスよ」


 ディアンヌがとんでもないことを言った。


「わ、私!?」

「そうよ。何を驚いているの?」


 ディアンヌは平然としているけれど、私は動転していた。


「わ、私、こんな素敵なドレスは借りられないわ! いくらなんでも」

「何言っているのよ。貸すんじゃなくて、これは貴女のために作った貴女だけのものよ」


 ディアンヌがくりっと首を傾げる。

 いやいやいや! いくらなんでも!


「う、受け取れないわ!」

「はあ……あのね。これは貴女への正当な報酬よ。受け取らないだなんて、私に恥をかかせるつもり?」

「で、でもでも、この一ヶ月、私はまともな生活をさせてもらっただけで……」


 むしろ私が報酬を払うべきでは!?

 はっきり言って私はこれまで生きてきた中で一番満足のいく暮らしをディアンヌに与えてもらった。

 この上、ドレスまで受け取るわけにはいかない。


「まったくもう。でも、貴女は明日、絶対にこのドレスを着るのよ。夜会を欠席することは許さないし、他のドレスは貸さないからね!」


 ディアンヌにはっきり言い渡されてしまい、私は涙目で途方に暮れた。


「こ、こんな素敵なドレス、ディアンヌが着るべきよ」

「私はちゃあんと用意してあるの。 観念なさい」


 ディアンヌに言い含められ、私はがくりと首を落とした。


 ああ。こんな素敵すぎるドレスを着ていったら、リリアンがまた騒ぐだろうなぁ。

 それもまた憂鬱だ。

 まあ、あの子は私がどんなドレスを着ていても騒ぐんだろうけど。




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