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 旧カレンス邸に到着すると、私は早速寝間着から着替えさせられ、菫色の上品なドレスを着せられた。


「では、まずは大事なお話をさせていただくわ」


 着替えた私とエリィを座らせ、ディアンヌはエリィの前に二枚の紙を差し出した。


「単刀直入に言わせてもらうわ。貴女、たった今から公爵家をやめてここに勤めてちょうだい」

「え?」

「ここに、というか、アデルに、ね」


 ディアンヌは面食らう私とエリィに説明を始めた。

 おおよその内容は、エリィを公爵家ではなくディアンヌが雇うことで、私と共にこの家で働けるようにしたい、ということだった。


「知り合いがいた方がアデルも安心でしょう?」


 確かに、エリィがここにいてくれるのはうれしいが、私のお役目の期限はひと月だ。それ以後も、エリィをここで雇ってもらえるだろうか。


「もう、はっきり言ってしまうけれど、私、ひと月が過ぎた後もアデルをあの家に帰すつもりはなくてよ。まだはっきりとは言えないけれど、アデルがちゃんと生活できるように取りはからうつもりよ」


 ディアンヌは私を安心させるように言った。


「それにはっきり言って、あの公爵家に未来があるようには思えないわ」


 きっぱりと言うディアンヌに、私は何も言えなかった。それは私もエリィも、あの家の中の人間すべてが口に出さずとも思っていたことだからだ。もちろん、両親と妹を除いて。


「だから、今ここで見切りをつけてアデルに仕えてほしいの。どうかしら」

「喜んで!」

 エリィは勢い込んで「公爵家への辞職届」と「陛下の名の雇用契約書」にサインした。


「それで、私は何をすればいいの?」


 私が仕事内容を尋ねると、ディアンヌは椅子にふんぞり返った。


「私のご機嫌伺いよ!」

「はあ……」

「より具体的に言うと、一緒に勉強したりお茶をしたり食事をしたりよ。というわけで、まずは朝食を食べましょう」


 そう言えば、朝食がまだだった。


 朝食を食べた後はディアンヌと共に語学の勉強をして、昼食の後はマナーの勉強、休憩でお茶を飲んで、夕食の時間まで読書をして過ごした。

 まったくごく普通の令嬢の一日を過ごして、夕食を食べた後で、公爵家へ送られて帰宅した。


 これが仕事でいいのかしら?

 私、カレンス邸の使用人達にとっては仕事を増やしているだけじゃあ……?


 疑問に思いつつも、ディアンヌがそれでいいと言うので、私は開き直って楽しむことにした。

 お友達とお茶を飲んで、読んだ本について語り合ったりするの、ずっと憧れていたから。


 帰る前に菫色のドレスを着たままだとまたリリアンに奪われてしまうから、とディアンヌに相談したけれど、彼女は「盗られても何も言わなくていいわ。後でまとめて取り返すから」とニヤリと笑っただけだった。




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