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「お嬢様……なんて素敵なお召し物でしょう」


 自室に戻った私に、ついてきたエリィが目を潤ませた。


「ディアンヌ様でしたか? あの方がお嬢様の味方になってくださって本当に良かった。どこで知り合われたのです?」

「それが、今日初めてお会いしたのよ」


 散歩していて馬車に拾われたことを話すと、エリィは渋い表情になった。


「ディアンヌ様でしたから良かったですけれど、そんな風に殿方の馬車に連れ込まれたりしたら、ちゃんと叫び声を上げてくださいね!」

「わかってるわよ」


 確かに、夜に一人で出歩くのは無防備だったな。エリィも普段だったら止めたんだろうけど、今日はデビュタントの件があったから少しでも私の気分転換になるように行かせてくれたんだろう。


「それにしても、本当に素敵な服ですね。手触りが素晴らしいです。普段着用のドレスなのにこんなに良い生地を使っているなんて……」

「そうなの。お借りした白いドレスも一級品だったわ」

「お嬢様が着ているところを見たかったです。でも、お嬢様が夜会へ行けて本当に良かった……」


 エリィが涙ぐんだので、私までなんだか目が熱くなってきた。


 駄目ね。自分の境遇にも家族にももはや何の期待もせずにやり過ごすつもりだったのに、心にはしっかり傷が付いていたのね。泣いてしまうだなんて。もっと強くならなくてはいけないのに。


 そう、ディアンヌみたいに。





 その夜、私は夢を見た。


 枕元に、美しい女性が座っていて、じっと私をみつめていた。


 誰かしら? もしかして、国王に処刑されたというカレンス家の娘?


 ああ。私があなたのドレスを勝手に着てしまったから、怒っているのね。

 ごめんなさい。でも、貴女は怒っているというより、寂しそうに見えるわ。

 どうしてかしら?





 不思議な夢を見たせいか、それとも昨夜の疲れのせいか、少しだけ寝坊してしまった。


 早く着替えて準備をして、ディアンヌを迎えなくては。


 そう思って昨日借りたドレスを着ようとしたところ、エリィがげっそりとした顔をしているのに気付いた。


「まさか……」

「申し訳ありません。お嬢様が眠っている間にクローゼットから持ち出されたようです」


 既に取り返そうとしてくれた後なのだろう、朝だというのに、エリィは疲労困憊といった様子だ。


 私はふつふつと怒りが沸き上がってきた。昨日、あれだけ言ったのに、ディアンヌも忠告してくれたのに、どうして、なんで聞き分けないの?


 私は寝間着のまま部屋を出て、憤然と歩き出した。




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