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 ドレスを着ないと出来ない仕事なのか。


「あの、どんな仕事なのでしょう……?」


 少し不安になって恐る恐る尋ねると、ディアンヌ様は「そんなに心配しないで」とカラカラ笑った。


「実はね。この家は呪われているの」

「え……?」

「カレンス家の呪いって知ってる?」


 そう言われて、私は昔亡くなったお爺様に聞いた話を思い出した。


 今から百三十年ほど前。

 国王は婚約者であるカレンス家の娘を溺愛し、彼女に似合うドレスを百着作らせた。

 だが、他家の娘が王妃の座を狙って国王に近づき、カレンス家の娘の悪い噂を広め国王を唆した。国王はカレンス家に罪を着せ、一族を娘ともども処刑してしまった。

 その後、国王は他家の娘を王妃に迎え、たくさんの子を作ったが、子供達は次々に変死。最後には王妃も「カレンス家の娘の幽霊が見える」と怯え狂い死にしてしまった。

 カレンス家の娘が住んでいた家は王妃の親に与えられていたが、彼らも「幽霊に殺される」と言いながら衰弱死した。

という話だ。


 王家の犯した罪に触れることになるので、書物などには残されていない。昔から仕える貴族の家にだけ口頭で伝えられている。


「そうよ。でも、その話には続きがあるの」


 ディアンヌ様が語った続きはこうだ。


「国王は新しい妃を迎えたけれど、跡取りの男児は皆早逝してしまったの」

 困り果てた国王は占い師に尋ねた。

「占い師が言うには、「呪われた王子が成人を迎えるまで、カレンス家に王子と同じ年の娘を住まわせ、かつて王が贈ったドレスを着て過ごしなさい。他者が身につけることでカレンス家の娘の想いを浄化し、呪いを解くしか方法はない」

 それ以後、呪われた王子が生まれると、王子が十八歳になるまではこの家に女を置き、カレンス家を名乗らせるのよ」


 私は自分が着ているドレスを見下ろした。

 では、このドレスがそのうちの一着。

 つまり、第二王子は本当は病気ではなく、呪いのせいで臥せている。その呪いを解くために、ディアンヌ様がこの家で過ごしている。


 それで、陛下はディアンヌ様に優しかったのか。第二王子のためにずっとこの家で古いドレスを着て過ごしているから。


「では、私の仕事というのも……」

「第二王子の誕生日まで後ひと月、それまで私の話し相手になってちょうだい。私が退屈して逃げないようにするのよ。重要なお仕事でしょ」


 ディアンヌ様がイタズラっぽく笑った。


 そういうことなら……。

 要は第二王子のための大事なお役目を果たされているディアンヌ様を、側でお世話するのが私の仕事だ。

 ほんのひと月。貴族としての最後の務めだと思おう。


「わかりました。私でよろしければ、ディアンヌ様のお手伝いをさせてください」


「よかった! それじゃあ、私のことは「ディアンヌ」と呼んでちょうだい。今日から「親友」なのだから」

「ええ……?」


 こうして私は、奇妙な形で「親友」を得たのだった。




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