第52話 重なる
帰り道の車から見える景色は茜色に染まった街。いつにも増して綺麗に見えたその光景は少し幻怪にも見える。
「それで、どうするんですか?」
「どうするって、何をですか?」
運転席から草薙さんが声をかけてきた。普段の軽い感じではなくて真面目で少し重い雰囲気を纏った声だった。
「性別の件です」
「...」
「今回の件でわかったと思いますが、また似たような機会があったときに性別については聞かれると考えるのが妥当だと思います。もし、知られるのが嫌なのであればNGワードに指定しておくのも手なのですが....」
「そう...ですね....少し考えてもいいですか?」
「それは、もちろん」
そこで会話は終わり車内には車の駆動音だけが響く。
ボクは別に男でいることに不快感を感じているわけでも違和感を感じているわけでもない。なのにどうして、どこからどう見ても女の子にしか見えない【氷柱ゆい】を受け入れたのか。そこはいまいちボクには分からない。
確かに今まで母さんにいろいろ言われてきたけど、別に性別に関して何か言われたことは無い。ボクの潜在意識が女の子になることを求めていたということは否定できないけど、無いに等しい。
じゃあ、何でボクは....
ボクは新しいボクに....
《《この体》》は【水瀬ゆうき】で《《あの体》》は【氷柱ゆい】
別物じゃん。
じゃあ、ボクは...【ゆうき】はどうなんだろう。確かに【ゆうき】がいなかったら【ゆい】は生まれてこなかったけど、それは【ゆい】であって【ゆうき】じゃない。
どうなっているんだろう????
もう、わからないや....
ああ、こういうことなんだ
ボクはボクであって【ボク】じゃないんだ。
「『これで大丈夫』」
◇◇◇
「つきましたよ。さっきは急にあんなことを言ってしまって申し訳なかったですね...でも確かに必要なことなので、考えてもらえると嬉しいです」
ドアを開けながら草薙はそう言ったが《《彼》》の答えは決まっている
「『もう答えは出ているので大丈夫。公表はしない形でお願い。《《担当さん》》♪』」
「え」
ここで草薙は違和感を覚えた。
「『ふぇ?どうかしたの?』」
「だって声が、ゆいちゃんの時の声になっていますよ?」
「『?それがどうかしたのかな?これがボクだよ??』」
草薙はここでも違和感を覚えたが、いつもの仕返しでこのようなことをやっているのだと判断したのか、それ以上は言及せずに、お疲れさまでした。とだけ声をかけてその場を去った。
「『う~ん、変な担当さん』」
草薙の対応に違和感を感じながらもエントランスをくぐり家に戻る《《彼》》。違和感を少し覚えてはいるが、まだこの変化にまだ誰も気が付いていない。
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