表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界揚げ物屋さん〜婚約破棄?追放?大歓迎ですの!私、そんなことより!揚げ物を食べたいんですわぁ!〜  作者: 坂東太郎
第二部『第四章』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/48

第十一話

短めです


 ルガーニャ王国、国境近くの街ベリンツォ。

 難易度の低いフィールドダンジョン『魔の森』や農地に囲まれて、普段は平和な街は、喧騒に包まれていた。


 大通りの両脇には人が連なり、目を見張って驚きを口にする。


「ん? なんだあれ」

「おいおいおい、お嬢様、ドラゴンを倒したってのか!?」

「ばっか、なに見てんだ! あの鮮やかな色、あれは単なる『ドラゴン』じゃねえぞ!?」

「まさか…………『カラード』ドラゴン!?」

「属性龍の討伐なんて聞いたことねえ!」


 通り沿いの窓という窓から人々が顔を出す。

 ある子供は花びらを撒いて、またある者は行列の中心に手を振った。


 馬車に乗るアレナ・マリーノと、足元できりっとした顔を見せる子狼のカロリーナ(オス)に向けて。


「ほーっほっほっほっ! みな驚いてますわねぇー!」


「わふっ!」


 マリーノ家が初代の残した『異世界転生日記』の記述をフル活用して作り上げた特製馬車はいま、幌が外れてオープンタイプになっている。

 つまり、驚き、褒め称えてくる民衆の姿がアレナからはよく見える。


 アレナは誇らしげに胸を張って高笑いしていた。

 なぜかカロリーナもご機嫌だ。


 馬車の上にいるのはアレナとカロリーナだけではない。


「あの、いいんでしょうかベルタ先輩、わたしまで……」


「お嬢様はこう言っています。『途中で回復しましたわよね? つまりダリアも「ドラゴンスレイヤー」ですわぁ!』と」


「ええ……? わたし、『上級治癒(エクスヒール)』を一回使っただけなのに……?」


「おめでとうございます、ダリア。『ドラゴンスレイヤー』としての諸事は任せましたよ」


「ま、まさかベルタ先輩はこうなることわかってて、手を出さなかったんですか!?」


 メイド服姿のアレナの侍女・ベルタと、ベルタより簡素なメイド服を着た侍女見習い・ダリアの姿もあった。

 ベルタは周囲の喧騒に影響されることなく凛と立ち、ダリアは思わぬ名声に腰が引けている。


 そして。


「さあ、みな刮目してご覧あそばせ! これが! カラードドラゴン! そして、『カラ(ード)揚げ』の素ですわよぉー!」


 馬車のうしろには荷車が続いていた。

 足は遅いが力の強い農耕馬を四頭揃えて、それでもあまりの重さに進みの遅い荷車が。


 荷車の上には、アレナが倒したグリーンドラゴンが載せられている。


 風属性をまとった鱗は死してなおエメラルドグリーンに輝き、鋭い爪と牙、なによりその巨体がいまなお威容を見せていた。


「讃えなさい! (わたくし)! 『ドラゴンスレイヤー』になりましたのよ!」


 馬車の上から荷台を指し示し、アレナが住人たちにアピールする。

 (くらい)だけを鼻にかけた貴族として、ではない。

 たしかな実力を持った冒険者として。


 両サイドに並ぶ冒険者から、街の住人から、拍手と歓声が飛ぶ。花びらが舞う。


 ただでさえデカいアレナの態度がさらにデカくなって、伸びた鼻はさらに伸びて、得意げに胸を張りすぎてうしろに倒れるんじゃないかとダリアが心配しだしたところで。


 馬車と荷台が止まった。

 アレナの悲願であった自分の店、「揚げ物屋さん」の前で。


 並んでいた従業員(マリーノ侯爵家から派遣された)や、アレナに拾われた兄妹、それに奴隷の少女がいっせいに頭を下げる。


「おかえりなさいませ、お嬢様!」


 揃った声で出迎えると、アレナに大恩のある奴隷少女がおそるおそる問いかけてきた。


「あの、アレナさま。それはどうするんでしょうか? その、献上したりしてアレナさまが国に戻るお許しを得るとか……」


 アレナ自身がなかば望んだこととはいえ、アレナは「国外追放」された身だ。

 けれど、もし属性龍、カラードドラゴンを献上したとなれば王家からの許しも得られるだろう。

 まあ、某王子の暴走ゆえに実際はもうなんの問題もないだろうが、それはそれとして。


 だが、奴隷少女フラウの質問にアレナは首をかしげる。


「なにを言ってますの? ()()は私のものですのよ?」


 献上するとかマジで理解できない、とばかりに。


 なにしろアレナが「カラードドラゴン」を狩りにいった目的はたったひとつだ。


「献上なんてするわけありませんわ! 私! ()()で! 『カラ揚げ』を作るんですのよぉー!」


 アレナの決意がベリンツォの街に響き渡る。

 集まっていた住人たちは「から揚げ」がなんなのかわからず戸惑っている。


「『カラ揚げ』の試作に成功した(あかつき)には!」


 馬車の上に乗ったままのアレナが、バッと手を広げる。

 さーっと伸ばしたままの腕を動かして群衆を示す。



「すべて私の振る舞いによる、『カラ(ードドラゴン)揚げ』『鳥揚げ』祭りを開催いたしますわぁー!」



 アレナが宣言する。

 住人が沸き立つ。

 カロリーナが興奮して「アオーンッ!」と高らかに吠える。


 ドラゴンの肉でさえ超貴重なのに、狩った記録のほとんどない属性龍、「カラードドラゴン」の肉が振る舞われるのだ。

 みなの興奮も当然のことだろう。



 ともあれ。

 こうして、アレナ・マリーノはベリンツォの街に帰還した。

 『ドラゴンスレイヤー』となって、グリーンドラゴンの素材とともに。


ということで、短めですが更新再開します!

ぼちぼちペースになると思いますが……

週イチぐらいで更新できたらいいなあ……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
続きください....
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ