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やっぱり水着審査とかあるのかな(金木犀2)

 二学期最大の行事は体育祭である。今年は、前年度ナンバーワンの連だった荻原有理が実行委員長となり、有理と今年の連を組んだ杉山想平が副委員長となった。他の実行委員がくじで選ばれるのは、学園祭と同様である。

 

 新学期が始まって間もなく、今年のプログラムが発表された。午前中は毎年決まった演目であり、各学年の一組、二組、三組同士で組んだ三チームに分かれてリレーや騎馬戦、応援合戦等で盛り上がる。

 注目は、実行委員会が自由に企画できる午後の部である。掲示板に貼り出された内容は、


・連対抗二人三脚

・各部対抗リレー

・ミスター参宮、ミス参宮

・各賞発表

・閉会式

 であった。


「大体想像できるけど、ミスター参宮、ミス参宮ってのは?」

 廊下で掲示板を眺めながら、徹が楠ノ瀬麻紀に尋ねる。

 九月に入ったとはいえ残暑はまだ厳しい。窓からの日差しに目を細めながら徹は額の汗を拭った。


「体育祭だからスポーツに関係あるんじゃない。美少女コンテストっていうなら、あたし達も一肌脱くけどね」

 楠ノ瀬は大きくはだけたブラウスの胸元を手で扇ぐ仕草をしながら、隣のリタに同意を求める。勝手にリボンタイを外しているのは、クラスでも楠ノ瀬だけである。


「や、やっぱり水着審査とかあるのかな」

 勢い込んで口を挟む桐嶋を、リタが冷ややかに一瞥する。

「い、いやその、ボ、ボディビルとかほ、ほら、よくミスター何とかって。『切れてる切れてる』とか声援送ったりして――」


 桐嶋は両腕を胸の前で交差させ必死に弁解したが、その大袈裟な反応を更に楠ノ瀬にからかわれ、一層深みにはまっていく。

 掲示板の前であれこれ話していると、後ろに人影が立った。


「その企画は、当日までシークレット」

 片目をつむった茶目っ気たっぷりの表情で、荻原有理が唇に人差し指を立てていた。

「ミスター参宮、ミス参宮とも候補者は八人。三人が自薦で四人が人気投票、残りの一人が実行委員長推薦にするつもりだけど、何をするかは当日のお楽しみ」


「有理ちゃんは?」

 楠ノ瀬の問いに、有理は首を横に振った。

「実行委員長は、残念ながら不参加」


 有理は、制服のスカートから覗く丸い膝を軽く曲げて、徹たちを軽く見上げるような格好で笑った。相変わらずの艶やかな黒髪が、背中から肩口へと流れ落ちていく。

「ちなみに徹君は、委員長推薦決定だから」

 目を剥く徹をよそに、有理は言葉を続けた。

「まあ、徹君は人気投票でも選ばれるかな」


 どうして有理は、こんな台詞を平気な顔で言えるのだろう。

(三.荻原有理の特技は嘘を付くこと――)

 あの夜の出来事が、昨日のことのように脳裏に蘇る。


 二学期が始まってすぐ、高宮武が有理に振られたという噂が学園中に広がった。噂には尾鰭がついていて、抱きすくめようとした高宮を有理が投げ飛ばしただとか、妹の有為との三角関係が原因だとか、明らかに嘘臭いものまで混じっていた。

 

 そしていつしか有理とは、何事も無く普段どおり話す関係に戻ってしまっている。だが徹は、告白した自分に返事をしない有理が卑怯だとは思わなかった。それを言うならあの時の徹の方こそ、ルール違反だった。   

 あれは真夏の夜の夢だった――徹はそう自分に言い聞かせている。


「そうそう、言い忘れたけど」

 有理は、徹の顔を見てにっこりした。

「瓜谷先輩が、『あんまり俺に楽な勝ち方させるなよ』だって」


(早くも最強のライバル出現ですか……)

 思わず徹は遠い目になる。

「ふ、藤原のこと応援するよ」

 目尻に皺をよせた桐嶋の相変わらず人の好いコメントに、徹は力なく答えた。

「あぁ。切れてる切れてるって叫んでくれ」


「なるほど。私もそう言って応援しよう」

 横でターコイズブルーの瞳の少女が、無表情にコメントした。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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