うーん、男らしくないぞ(向日葵 1)
連の組み合わせが決まると、暦はゴールデンウィークである。
徹が帰り支度をしていると、するするっと荻原有理が寄ってきた。これから部活なのだろう、赤いスポーツバッグが膨らんでいる。
徹は反射的に教室を見渡して高宮がいないことを確認した。と同時に、そんな反応をした自分に落ち込む。
「ライバルのオギワラユリが、何の用だい」
徹が自己嫌悪から立ち直ろうとしながら尋ねると、有理は目の前で軽く拝む仕草になった。相変わらず有理の対人距離は、徹よりかなり近い。
「ゴールデンウィーク空いてる?」
(これはもしかして)
途端に心臓の鼓動が倍になった。
「空いてるよ」
(平静を装うことがこんなに難しいなんて)
徹は唾を飲み込んで、有理の次の台詞を待った。
「一緒に遊びいかない? ゴールデン・ウィークに仲良くなるのって連の基本なんだけど、やっぱり何組か一緒の方が自然なんだよね」
有理の誘いに、徹は思わず声が裏返った。
「い、いいけど。みんなの予定合わせるの大変じゃない?」
(だから、二人で出掛けようって)
徹は必死に電波を送る。そんな真剣な顔つきを不安の表れと誤解したのか、有理は腰に手を当ててると任せろとばかりに胸を張った。
確かに荻原有理の胸は大きくなかった。
だが、そんなことはこの際、問題ではない。全くもって問題ではない。
「既にオギワラユリが根回し済だから、大丈夫」
「へ?」
徹は間の抜けた声を出した。有理は徹の反応など無頓着に続ける。
「みんな、五月三日だったら空いてるって」
(みんな……みんなってことは……みんなってことは)
「リタも?」
「リタちゃんも」
「杉山も?」
「杉山君も」
声が小さくなっていく徹に、有理が大きく頷いた。
「もしかして、俺に最後に声掛けた?」
「あ、徹君ちょっと暗い顔した。うーん、男らしくないぞ」
「……押忍」
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