男爵家は賑やかです
ミレー先生がひんけつを起こしてしまったため今日の授業はおやすみになった。
ひんけつ?ってなんだろう
ライルがそう頭の中で考えるだけで全知内参照スキルは発動し望んだ回答をライルに届ける
解答 貧血とは体内に循環している赤血球が何らかの理由で足りず、体内の酸素量が不足し目眩や立ちくらみなどの症状をきたす事の総称。症状の原因が貧血以外の可能性もあるため、判断は慎重に行う事を推奨
頭に何か入ってきたけど、なんて言ってるか分からない!よ!
ひんけつってどういう意味なの!!?
・・・抽象化、映像出力中・・・
頭の中に絵が出てきた!
どれどれ、上がぼくの血の流れ、下がミレー先生の血の流れか!赤い丸いのがさんそ?をいっぱい運んでるね!
あれ?ミレー先生の方何だか赤い丸いのが元気ない・・・ああ倒れちゃった!!
なるほど。動くためのエネルギーが足りないんだね!よくわかったよ!ありがとう!頭のなかさん!
解答 どういたしまして
その後も
「さんそはなに?」
「どうしてちの元気がないとミレー先生も元気がなくなっちゃうの?」
「なんで倒れるの?」
「他に何かわるいこと起こるの?」
散々ライルに質問され続けそのたびに感謝され、どういたしましてと言うたびに、どこか疲れが漂いだすスキルなのであった。
じゃあちょっとミレー先生のお見舞いに行ってこようかな?
教室は自分の住む屋敷の一室を改装して教室にしてあるため、この屋敷には他にもライルの家族が大勢住んでいる。
どこでミレー先生が寝込んでいるかを確認するためにライルは近くにいた恰幅の良いメイドのホフマンさんに尋ねる。
あ。ホフマンおばちゃんだ!ミレー先生どこにいるか聞いてみよ!
「ホフマンおばちゃん!こんにちは!」
ぺこりとライルはお辞儀をする。
すると掃除をしている手を止めライルに向き直り、ホフマンも一礼。
「あら!ライルおぼっちゃまこんにちは!今日も素敵なお辞儀、ありがとうございます」
な、な、なんて可愛いのかしら!私の息子に欲しいわぁ〜
と惚けているとライルから質問が飛んでくる。
「ねぇねぇホフマンおばちゃん。ミレー先生がどこにいるか知らない?僕お見舞いに行きたいんだ!」
「先生思いの優しいおぼっちゃまには特別に教えて差し上げますね。この階の左側にある客間で今お休みになられていますよ!」
それを聞くとぱぁっと顔に花を咲かせ一目散に客間へと走り去っていく。
あ。ホフマンおばちゃんにありがとしてなかった!
ライルは急ターンし惚けた眼差しでライルを見つめるホフマンの前に戻ってくると満面の笑みで
「ありがとう!ホフマンおばちゃん!」
というとまた一目散に客間へと駆け出していくのであった。
もぉ〜ライルお坊っちゃまは本当に可愛らしい!目に入れても痛くないとは正にこの事ね!
惚けているホフマンをよそにライルは駆け出していき客間のある曲がり角へ差し掛かる。
えっと〜左はどっちの手だったかな!
頭の中にノイズが走り、参照スキルが回答する。
解答・・ジジッ・・ナイフを持つ方の手だ。
そっか!ナイフを持つ方の手か!ありがとう!頭の中!
自信満々にライルは駆け出していく、右の方へ。
そして右の方の部屋にたどり着くと小さな手で大きな音を立てられるようめいいっぱいノックを3回する。その時思わず自分もコンっとノックの音を口に出して言ってしまう。
「コンっコンっコンっ!ライルです、失礼します!」
勢いよく扉を開けて、ミレー先生を探す・・・
がもちろんここはミレー先生が休んでいる客間ではない。部屋の左側が客間で、右側は応接室になっているのだ。
あれ?ミレー先生いないや!父さまと母さまと一緒にいる人たちは誰だろう?とりあえず挨拶しなきゃ!
ライルはミレー先生から取り敢えず今は誰か知らない人に会ったら挨拶をしておけば良いと言われていたのでぺこりと挨拶をする。
「おきゃくさまこんにちは!ライル・カーティスです!」
おきゃくさまは3人なんだ〜
男のひとと女のひとと女の子がひとりづつだね!
客は目を見開いていた、どう見てもまだ歩き始めてそこらの子供が拙いながらも丁寧にノックをして我々に挨拶をするではないか。
来客の中にいた少女もまた、同じような事を考え、興味を持つのであった。
え。何この子超可愛いじゃん!
低い身分の子供だし、パパに言えばすぐ買ってくれそう!
ライルの父と母も初めこそなぜ入って来たのか、何か失礼な事でもないかと戦々恐々としながらライルを眺めていたが、無事に挨拶が認められたようでホッと肩を撫で下ろす。
「ライル、こちらはグラン・ミリシア公爵とレイラ・ミリシア公爵夫人。そしてその御令嬢の・・・」
とライルの父が口に出したところで当の御令嬢がその小さな身にはまだ大きすぎるソファーから身を乗り出しライルの前に立ち、優雅に一礼。
「ライル・カーティス男爵家子息様ご機嫌麗しゅう。私キラナ・ミリシアよ!よろしくね!」
優雅に輝く金のボブヘアにぱっちりした吊り目がちの健康美少女、それが今のキラナの見た目だった。
キラナは何としてもこのライルを自分の側仕えにしてやろうとかなり前のめりに挨拶をする。
あまりに急な事だったのでライルはびっくりして目をパチクリさせながらもこの後どうするべきかを考える。
あれ、確か女性は挨拶の時には容姿を褒めるといいってミレー先生がいってた気がするなぁ。
「はじめましてキラナさま。僕はライル・カーティスです、キラナさまみたいに綺麗な方とお会いしたことがないので、どうすれば良いかわかりませんがお会いできてとってもとっても光栄です」
コテンと首を横に傾けながらそう挨拶するライルに、両親含め周囲の気持ちは一つに。
きゅん!
特に大きなその胸の高鳴りを覚えたのは、当初側仕えにするために近づきはじめたキラナである。
何よこの子何よこの子!神だわ!!これは神が使わした天使に違いがありませんわ!!
側仕え??いいえ!私決めたの!この子と結婚する!この子以外あり得ない!
「父上、母上。私決めましたわ!このライル・カーティスと結婚します!」
「はぇ?」
ライルは急に結婚だの話が出て混乱する
けっこんって父さまと母さまみたいになるって事?このきれいな子と?ちょっとうれしいな。でもこういうのって急に決めてもいいのかな?頭の中さん!どうですか??
・・・ジジッ
回答 キラナはお前の一番の味方だ。絶対にここで決めておけ
なんだか最初の時とこえがちがう気がするけど、きっとまちがってないよね?
ライルは男らしくいこうと考え、小さな胸を少し張ってここで宣言する。
「僕もキラナさまとけっこんします!」
当の両家両親はそんな小さな少年たちの宣言にただ口を開けて見てることしかできなかった。