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修羅道  作者: サムライソード
邪悪な魔女の箱庭
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峰打ち

ベールを黄色い少女に蹴り飛ばした。ベールは両手が塞がれた状態でつんのめりながら黄色い少女に特攻する。


黄色い少女は彼女の周囲の岩の盾をふんわりと動かし彼女を優しく受け止めた。空いた空間に瞬歩で入り込む。岩の剣が襲いかかってきた。黄色い少女がこちらを見つめているのを確認して刀身を立てる。太陽の光は刀身で身体を躍らせ黄色い少女の目に飛び込ぶ。彼女の目は光に灼かれた。


更に瞬身で岩の剣を避ける。混乱した彼女は四方八方に弾丸を飛ばし始めた。体の臓器だけをすべて源力で包んで致命傷を避ける。腕で弾丸をもろに受ける。腕の肉が削がれたが構わず刀を振り下ろそうとした。殺った。雷切は確実に彼女を二等分にするだろう。


その刹那。ベールの顔とナイトの死に顔が脳裏に過った。夜叉が俺の背中を爪を立てて握りしめた様な妄想に取り憑かれた。無意識のうちに刀を裏返し刀の峰を彼女の頭に叩きつける。


馬鹿が。何をしているんだ。自分に叱責したい気持ちを無理やり抑え込んだ。


暴れ狂っていた岩の剣は地面に沈んで砕け散った。黄色い少女は糸が切れた人形のように倒れ込む。無事な方の腕で彼女を捕まえる。


「ジャーちゃん!!!」


ベールの悲痛な叫びが耳に飛び込む。


「大丈夫だ!殺していない!さっさとズラかるぞ!」


遠くの空を見ると赤い流れ星のようなものがこちらに向かってきていた。おそらく赤い魔女だろう。ベールと黄色い少女を掴んで路地裏に逃げ込んだ。


荒れ果てた道から急いで離れる。入り組んだ道を黄色と青の荷物二つ抱えて走る。


五度目の曲がり角を曲がった時初めて脳内に響き渡る警告は鳴り止んだ。ポーションを腕に振りまき息を吐く。


どうやらようやく蒔いたらしい。厄介な魔女だ。これから先あいつが障害になることは間違い無いだろう。


近くの民家にまた入り込んで気絶している少女を部屋に閉じ込め、連れ回されて目が回ったのか吐き気を催しているベールを別の部屋に閉じ込めた。


二体の魔女の捕獲完了。汗を拭きやっと落ち着いて地面に座り込んだ。


水を具現化させて飲む。


「一体何をしてるんだ…。」


思わず呟いた。別に黄色い少女を生け捕りにする必要などまったくなかった。なんならナイトの仇として今までなら無惨に殺していただろう。


「まさか情で鈍ったのか…!」


恐ろしい考えに身を震わせた。そんな筈はない。そうだ。黄色い少女ならばバリアが貼られておらず拷問なりなんなりで情報を炙り出せるだろう。そう考えたら俺の行動は合理的で正確だ。


俺は間違っていない。それらしい答えを無理のある理由でこじつけで今はとりあえず納得する。


水道が詰まった様な音が聞こえる。よくよく聞くと隣の部屋のベールの嗚咽音のようだ。あのガキ。ついに吐きやがったな。


布と水を持ってベールのいる部屋の扉を開けた。何のプライドかは知らないが彼女のドレスは清潔なままで吐瀉物は床に撒き散らされただけだった。


彼女の口元を布で拭き、水で口を濯がせた。


「ずみまぜ…ん…。」


汚い奴だ。涙目になりながら彼女は謝る。吐瀉物はバリアを通過するのか。どうでも良いことを発見した。


彼女を連れて元々俺がいた部屋に連れてくると彼女は吐いてスッキリしたのかなぜか晴れやかな顔をしていた。


そのまま部屋を出ようとすると彼女に呼び止められる。


「あっ。ありがとう…ございます!!」


振り返ると両手を縛られた彼女は頭を地面に擦り付けていた。


「なんだ?ゲロを拭いてやったことの感謝か?」


彼女は申し訳なさそうな顔をする。


「違います…。ジャーちゃんを殺さないでいてくれたことです…。」


虚をつかれて反応に困る。


「別にお前の為にやった訳じゃない。」


そう言って黄色い少女の部屋に向かった。

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