最終日
時間が過ぎるのは早いもので遂にミッション挑戦日の一日前を迎えた。今日はトレーニングを早めに切り上げ各々が明日の準備をしている。
俺もドクターのポーションや加速薬を一つずつ並べて最後に雷切と脇差の手入れをする。雷切は相変わらず無骨でウェポンのように武器の些細な機微は分からなかった。しかしどこか気が早っているような感じはした。自分を投影させているだけだろうか。
リビングのソファでナイトの趣味であるという家庭菜園を窓越しに見つめる。彼の家庭菜園は植木鉢三つほどで控え目にベランダで飾られていた。
ナイトが俺の横に座った。彼は中々気の良いやつでこうして俺が暇を持て余しているとよく話しかけてきた。
「よぉ。オーガ。準備は万端そうだな。」
机に並べられたポーションを見てナイトが言った。
「ナイトはどうだ?そのデカい顔を縮める為の美顔器はちゃんと処分したのだろうな?この世界に居るのは今日で最後なのだからな。」
ナイトは気まずそうに顔を背けた。どうやら失念していたらしい。彼が俺の視線の先に気づく。
「そうだ。俺のダンディライオン達をオーガにやるよ。せっかく育てたのに枯らせるのも忍びねぇし。」
ふむ。観葉植物か。逡巡するがどうしても必要だとは思えなかった。
「考えておこう。」
ナイトはその返事に満足したようだった。リンクとスネイクが帰ってきた。彼女達に粗悪なポーションの買い替えに行かせていたのを思い出した。
「ただいまです。魔女さんの家で買ってきましたよ〜。でもあの人って本当に大丈夫な人なんですか…?」
リンクが不安そうな顔でこちらに尋ねるとスネイクが紙を擦り合わせたような笑い声をあげて言った。
「オーガ。リンクの奴、魔女の家につくなり怪しげな薬の材料にされるって言って逃げようとしたんだぜ。」
「そうなのか。リンク、お前の直感スキルもレベルが上がったようで何よりだ。」
軽く揶揄うとリンクはすぐに顔を真っ赤にして机にポーションを音を立てて置いた。
「オーガ。ツウィンとヴァンはどこに行ったんだ?」
ナイトが訪ねて来る。ツウィンとはツインとポニーのことだ。
「彼らはまだ訓練してるぞ。ちゃんと夕方には終わるように指示しておいた。」
リングが背筋に悪寒が走ったかのように腕で体を抱いた。
「あの訓練後にまだやるなんて…。あの双子も成長しましたね…!」
彼女はスネイクと協力してアイテムを纏めていた。スネイクが突然彼女の手を掴む。