訓練
「お前らもそうだ。そんな貧弱な体で俺を止められると思っているのか?」
源力を心臓から血液に飛ばすようにイメージする。筋肉は源力を纏い、汗臭い男二人など物ともせずツインに詰め寄った。
「ツイン、今からそこで震えている妹を殺す。お前はそこで見ておけ。」
ツインの目の色が変わる。自分が殺されかけてもやる気を出さなかったくせに妹に殺意を向けられただけで息を吹き返したようだ。彼女の瞳を通して激しい憎悪の念が飛ばされてくる。
ヴァンが部分的に変身し青白い手と鋭利な爪で俺の心臓を狙うがその指が体に触れる前に手のひらで彼の頬を力一杯張った。
後ろから押さえ込もうとするナイトを一本背負いで投げ飛ばし指を弾いて空絶を放った。一本の空気を割く斬撃がナイトの胸に刻み込まれる。
後ろからリングが泣きながら襲いかかってきた。気配を隠す気もない。地面を音を立てながら蹴りジタバタと無様な足取りだったので裏拳で潰す。
仲間が自分を守ろうと奮闘する中でポニーは最初から最後まで震えていた。ゆっくりポニーに歩き寄り彼女の顎を掴んで瞳を見る。何が起こっているか分かっていない様子だ。ただ理不尽な暴力に怯えている。
そんな彼女の首元にそっと脇差を滑らした。鮮やかな鮮血が首元から滲みでる。それでも彼女はまだ恭順の意を示したかのように両手を投げ出したままだ。ここまでか。
そう諦めかけたその時、後ろからツインが殴りかかってきた。それに呼応するようにポニーが拳を握りしめる。喉元から血を垂れ流しながら鬼の形相で俺の頬を殴った。
口を手で触ると出血していた。ツインの蠅が止まるような拳を背中で受け止める。良いパンチだ。先程の甘えた攻撃よりは。
ポニーが俺の脇差を素早く抜き取り首を狙って一線を放つ。想像以上のスピードにたじろぎポニーを蹴飛ばした。しかし間に合わず斬撃は俺の片目を捉える。
ポニーが幽鬼の如く立ち上がった。後ろからツインの殺気が炎のように熱く背中を焼く。
「妹は私が「守る。」
前後から声が重なった。しかし前方のポニーは源力のこもった前蹴りが効いたのか倒れ込んでしまう。
ここからが本番だな。
「立て!!死にたいのか!!」
千鳥を抜いた。しかし起き上がらない。ツインを振り返るがもう既に意識はなかった。千鳥で薄皮一枚、彼女の鼻筋に線を入れるが起きない。
やっぱり殺すしか—————
「もういいでしょう!!オーガさん!!」
小柄な男が空間を割くように現れ涙声でそう告げる。やり過ぎの時に止めるように指示した蛇男は縋るように俺の体に纏わりついた。
「いや、これからじゃないか?」
「もう本当に本当に十分です!!ありがどうこざいまじた!!!」
惨めったらしく鼻水を垂らしながら蛇男ことスネイクは有無を言わさない口調で言い放った。
千鳥を収める。周りを見渡すと太陽が爛々と輝く良い日に死屍累々、さまざまな格好の仲間達が倒れていた。
今日は良い日だから青々しい芝生を全身で感じたいと思うその心持ちは同感だ。しかし…
「さぁ!早く立て!トレーニングは終わってないぞ!」
彼らの訓練はしっかりとつけてやらないといけない。
彼らを死の間際まで追い立てる日々は続く。




