帰還ミッション
「それで俺を呼びつけた理由はなんだ?女」
目の前に仏頂面の男三人と不満げな女二人、怯えた女一人が机越しに並ぶ。
申し訳程度に出された茶菓子をアーシュが遠慮なく食べた。
「一応、私の名前はリンクです…。他の人たちの名前は———————」
「いいわ。覚える気ないもの。」
アーシュが手を振って答える。この女は随分楽しげだな。
リンクが唾を飲む音が聞こえる。金髪の男が不機嫌そうな顔で割り込んできた。
「用がないなら帰ってみるのはどうだい?僕達の家は暇つぶしにもならなかっただろうけどね。」
吐き捨てるように言った。
「そう拗ねるな。お前達は新参のわりにはよくやっているではないか。」
嗜めるように言うと顔のデカい男が眉を顰める。
「まぁ一年間生き残ったプライドは俺らにもある。そちらも先輩としてプライドがあるならイジメはやめて今日は帰ってくれないか?」
顔のデカい男が硬質な表情を浮かべて言った。まだ鳩尾は痛むらしい。手で抑えている。質の悪い回復薬を使っているようだ。しかしこいつら俺より先輩なのか。
「帰れ帰れと言われても元々俺は招かれた立場だ。ここまで手間取らされたのだ。要件くらい聞いて帰ってもバチは当たるまい。」
双子の姉妹がリンクを睨んだ。リンクは背筋を伸ばす。
「はいっ!はい!本当に色々と申し訳ありませんでした…。」
「何、一度命を救われたよしみだ。リンク。このくらい許そう。」
命を救われたと聞いて少し騒然となる。蛇男がリンクに尊敬の眼差しを向けた。リンクは居心地悪そうにしている。
「うぅ…。絶対なんか勘違いされてる…。」
金髪の男が何かに気付いたように顔をリンクに勢いよく向けた。
「まさか…!リンク、キリガヤの奴らに助っ人を頼むつもりか!」
アーシュが驚く。
「助っ人?」
「貴方、随分命知らずなのね。うちの派閥の理念はよく知ってるでしょ?」
アーシュがリンクを睨んだ。ただでさえ小柄なリンクが更に身を縮める。
「ちょっと待て。話が見えない。結局リンクの頼みはなんなのだ。」
「この子は帰還ミッションのクリアに貴方の助太刀を求めてるのよ。」
アーシュがつまらなそうに答えた。
「ほうほう。それの何が問題なのだ。」
「オーガ。キリガヤ本人の唯一にして絶対の意思を忘れたの?帰還と停滞を許さないのが彼の意向よ。」
アーシュが呆れたように言う。
「そんなもの聞いた覚えもないぞ。」
アーシュは遮るように言う。
「つまり私達は次の階層に行こうとするもの以外には厳しいの。実際帰ろうとする奴なんて臆病者ばかりだしね。」
アーシュが対面の集団に一瞥をくれる。金髪がまた飛び出そうとしたが今度は蛇男と顔デカ男が抑えた。