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修羅道  作者: サムライソード
邪悪な魔女の箱庭
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キリキリマイ

試しに周りを取り巻く霧に空絶を放ってみる。だが霧は少し揺らいだ程度でダメージには至らなかったらしい。


今度は後頭部に敵意が来たので合わせて脇差を振る。青白い手から赤い血が飛び出た。しかしその赤い血もまた手と共に霧となって消えてしまった。


「面倒だな…。」


カウンターを繰り返してちびちびダメージを負わせていくのが正攻法だろう。つい先程Dランクミッションに失敗しかけた俺だ。安全策を取るのも悪くない。


そもそもあのミッションはかなりCランクよりだったしいつもと比べて時間がなかった。慢心も無かったといえば嘘になる。しかし一番の誤算は黒夜叉の急成長だろう。味方の夜叉を目の前で殺されてから明らかに覚悟が違っていた。


色々言い訳を並べる。だが死にかけたことには変わりはない。


俺もあのミッションを通じて成長した。最たる例は源力の認識だろう。相手のスキル発動が目に見えて分かるようになった。後は燕返し。しかし今脇差に源力は耐え切れない。


そうだ。まどろっこしいことはせず手に直接源力を纏うのはどうだろうか。敵の首筋を狙う攻撃に脇差を突き立てながら左手に放たない空絶を貯める。左手を軽く投げ出してみた。


手に痛みが走るわけでもなくぼんやりと源力は装填された。こんなに簡単ならば早くやっとけばよかったな。そんな陳腐な感想が頭を過ぎった。


意識を敵に戻し辺りの霧を目を開いて見つめてみる。敵は攻撃の瞬間、霧を一点に凝縮し手を構成する。つまるところ全ての霧が実体なのだろう。


こちらも左手で辺りの霧を凝縮させるイメージを作ってみた。左手の源力が強制的に霧を蠢かし始める。


段々左手に感触が出てきた。一番頭に残っていた色男の顔を想起すると、困惑し顔に汗をかいた色男の頭が具現化した。


「ご機嫌よう。」


顔面を鷲掴みし笑いながら話しかけてやると愚鈍なチームメイトはようやく自分の仲間が死に掛けていることに気づいたようだ。


双子の姉妹が歩調をそろえて駆け寄ってくる。掴んでいる頭をどこか遠くに夜叉の首の要領で投げると辺りを包んでいた霧は晴れた。


双子の姉妹の斬撃が縦横無尽に襲いかかる。不思議なことに振り回す曲刀はどの片割れの柔肌にも傷一つ付けない。もちろんこちらにも傷はつかないが…。


脇差で曲刀を撫でてやり態勢を崩し詰め寄った。両方の後頭部を思い切り殴る。古い表現だが彼女たちの目に火花が散った。


刹那、視界の端でなにか煌めく物が見えた。慌ててサイドステップで距離を取ると俺がいた場所に針のような物を突き立てようとしている蛇男がいた。


「ちっ…!」


蛇男がゆらりと揺れて舌打ちする。


こいつ無気を使うのか。中々冷や汗をかかされた。直感だけに頼っているような妖精達だったら確実に今ので死んでいただろう。生き残れたのはウェポンの教育のおかげだ。


弱めの空絶を放つと蛇男は訳もわからない様子で吹き飛ばされていった。


振り返ると必死に赤い目に力を込めようとしている男を見つけた。


「もう源力切れか。ナルシスト。」


瞬歩で距離を詰め脇差の鞘で力強く頭を叩きつける。男は顔から地面に倒れ込んだ。殲滅終了だ。無事に何事もなく済んで良かった。心の底からそう思う。


戦闘の余波で立っていた土埃が晴れると家の前で呆然と立ち尽くすリングの女を見つけた。


鷹揚に手を挙げて挨拶をする。


「さっきぶりだな。女。」


すると女はへたりこんだ。


「ごめんなさい…。ごめんなさい…。ごめんなさい…。ごめんなさい…。ごめんなさい…。命だけはどうか許してください…。」


同じ言葉を壊れたオモチャのように繰り返す女はよくみると頬に涙を流していた。




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