懐古
キリガヤ。半年間あの廃墟で暮らしていたが結局会うことは出来なかった。
「キリガヤにツクモ。一体どういう関係なのだ。」
つもり募った疑問をウィッチにぶつける。
「いいだろう。この機会に教えてあげよう。ツクモはこの世界を作った男だよ。私の息子でもあるね。」
「この世界を作った…?待て。訳がわからないぞ。それだとしたら何のためにこの世界を作ったのだ!」
まあまあ、落ち着きんしゃい。そう言ってウィッチは紅茶を飲む。木で作られた机のが香りする。
「この世界を作ったと言っても、ミッションやポイントなんかは作っちゃいないよ。ツクモはただ教会や審査場、武器屋やナンバーズの制度なんかを作ったのさ。」
そう言って彼女は紅茶を上品にティーカップの上に置いた。なるほど。彼が作ったのはこのどこか中世ヨーロッパのような雰囲気のある世界観ということか。
確かに住宅街などは統一感は無かったが教会や武器屋などは如何にもファンタジーな秩序を持って作られていた。
「ツクモが来る前はあたしも含めてただミッションをこなす獣達の荒野だったんだよ。けれどツクモが来てからは一変した。ツクモは瞬く間にあたし達を追い抜いてあたし達に戦い以外の道を示したのさ。」
ウィッチが感慨深そうな目で紅茶を眺める。
話だけを聞いていると俺はツクモが作ったルールのお陰で万全の対策をして妖精達の楽園に挑めたのではないかと思える。そう考えるとツクモは第三の命の恩人だ。
「それでそのツクモは今どこにいるんだ。」
以前ウィッチの息子はどこかで生きていると彼女自身が語っていた。
「ツクモは一万ポイントで元の世界に帰ったよ。どうやらやり残したことがあったらしいねぇ。」
「意外だな。ウィッチを凌ぐ実力者も元の世界に帰るのか。」
茶菓子を頬張る。
「あたしなんさただの老ぼれだよ。もちろんツクモは今で言うナンバーズ一位だったけどね。」
どこか誇らしげにウィッチは言う。
「詰まるところあのパラディンを超える実力者と言うわけか。」
「そうさね。ちなみにパラディンやハンマーにファザーはツクモの後を継いだ子達だよ。今では随分立派になったが初めの頃は可愛いもんだった。」
彼女はおそらくこの世界で最古参なのだろうとは思っていたがまさかパラディンのことを子供扱いするとは。