聖騎士
適正なしもクソもないだろうが。聖騎士というくらいだから真正面から切り結ぶタイプだと勘違いした。
俺の目の前で大剣が消えた。これもおそらくなんらかのスキルかルールなのだろう。こいつは俺が知らないルールを思い切り使い顔面の骨を打ち砕いた。そういうやつなのだ。そうくるならこっちだって手段を選ばない。
「さぁ!とりあえずリセットだな!」
パラディンが俺に馬乗りになり拳でトドメを刺そうとする。ご丁寧にどうも。しかしパラディンが拳を振り下ろす前に俺は自分の片手剣で首を裂いた。
リスポーン地点は審査場のなかだった。空に拳を振り下ろすパラディンを振り返ってみた。
「なかなか根性があるじゃないか!時短精神は感心だな!」
今度は両手に片手剣がでるようにイメージする。
ルールなんぞ知ったこっちゃない。手数で攻めて何もさせないが正解だったのだ。
パラディンに向かって駆ける。徒手のパラディンは間合いからだいぶ離れているのになぜか正拳突きの構えをしだした。
非常に嫌な予感がする。しかし盾もないこちらが出来ることは攻めるだけだ。双剣で飛びかかるがパラディンが正拳突きを放つ。その瞬間俺の体は吹き飛んだ。
ありえない。拳の間合いと剣の間合いで拳の方が先に当たるなんて。いや当たっていないのだ。明らかにパラディンの拳から衝撃波のようなものがでて、拳の間合いの外から俺を殴った。
「パラディンスキル!ジャスティスパンチだ!」
勝ち誇ったような顔をしたパラディンに苛つきながら俺はもう一度リセットした。
何度も何度も文字通りの死闘をパラディンと繰り広げたが結局一度も彼女に勝つことは出来なかった。
「どうやら君は直感!特に自分の危機に対して敏感らしい!それは磨けば強力な武器になるだろう!とりあえず技能認定しておこう!」
技能認定…。まさかスキルのことか!早口でステータスを唱え確認する。
【直感 2】そう表示されていた。死にまくってようやく手に入れた初スキルだ。感慨深い気持ちになる。
「ありがとう。パラディン。君のおかげでスキルを習得できた。」
「なに!私は職務を遂行したまでだ!礼には及ばないよ!それに本番はここからだしね!」
本番。そうだ。やけにパラディンは焦っていた。これから起こることはこれ以上にやばいことなのか。
「これから何が起こるんだ?こんなに死んだのだ。これ以上の地獄があるとは思えないな。」
「地獄はこの世界にはないぞ!状況はすべて捉え方次第だ!」
随分と適当なことをいう奴だなとこの時は思った。