審査場
石造のドアを開けると一人、美しい金髪を長髪に流した、ガタイがいい騎士の格好をした女が立っていた。女と目が合うと女はバカみたいな大声で告げた。
「ここは審査場!君の素養を審査する場所だ!審査人は私、聖騎士ことパラディンが勤めさせて頂く!」
パラディンは大剣を地面に突き刺し俺をまっすぐ見た。彼女の長い金髪が揺れている。
「素養を審査?何のために?」
疑問がそのまま口から出る。
「ふむ!君はおそらく教会からそのまま来たタチだな!なるほど!時間がないな!」
「時間がない?」
「君にいつ召集がかかるかわからない以上!君の素養をできるだけ早く洗い出す!よって!君の質問は便宜上すべて無視する!」
一体何だというのだ。だがパラディンが俺の為に何かをしてくれるというのは間違いなさそうだ。
「君の得意武器は!何だ!」
得意武器。冒険者の時は三年間片手剣と盾で凌いできたが、得意と言えるような腕前ではない。
気づけば俺の両手には冒険者自体の装備が一式揃っていた。なぜだ。教会の時はなかったのに。
「スタンダード!シンプルイズベストだ!私は気に入ったぞ!さぁ時間がない!構えろ!」
パラディンが大剣を地面から抜いた。どうやらやる気のようだ。浮浪者のノンダクレに殺された時とは違い今の俺には武器がある。それになぜかパラディンからは粘りつくような嫌な敵意を感じない。
本当に素養を試されるのならこちらは全力でやらせてもらおう。
盾を前に突き出し、パラディンの攻撃を待つ。青年ほどの大きさはありそうな大剣だ。必ず攻撃の後に隙があるはず。カウンター。それのみに集中する。
パラディンが駆け、距離を詰めてくる。突きの体勢だ。盾ごと貫くつもりのような勢いで攻めてくる。
盾で突きを横にいなし、剣で刺す。ルール上死ぬことはないだろう。パラディンの大剣の先端が盾に触れた。盾をやや斜めにしパラディンの大剣を弾く。
はずだった。弾くはずのパラディンの大剣が消えたのだ。俺は滑稽にも盾を空振りし無防備な体を晒した。パラディンは走る勢いそのままで俺をなぐりつけた。グーパンだ。
パラディンの硬い鎧の拳は俺の顔面の骨を打ち砕いて振り抜かれた。
あまりの痛みに俺はもんどりうった。そんな俺を尻目にパラディンは告げた。
「片手剣、盾、適正なし!」