ジャスティスウーマン
閑静な住宅街に俺の絶叫が響き渡る。あいつらの一番嫌がるであろうことをしてやった。対立勢力の参戦だ。
上級者達の警戒レベルが一気に引き上げられる。どうやら全ての上級者達が意識をすぐに引き戻し、この場所に集合したらしい。
後ろ手に椅子の残骸が括り付けられた男と、数人の上級者達が睨み合う。奇妙な構図だ。
随分長い間睨み合っていた気がする。もう一度呼んでみようかしら。思考が少しバグってきたころ住宅街のある一つの家、禍々しい次元の歪みをあたかも家のように設置してる住宅から突如電気を弾くような音が鳴った。
ようやくご登場だ。金色が一瞬煌めくと目前には審査場の住人であるパラディンが出現した。
「平時は世を忍ぶ仮の姿として君たちの審査素養を務める麗しの聖騎士ことパラディン!懐かしの初心者君の助けを求める悲痛な声を聞きつけ、真の姿ジャスティスウーマンとして参上だ!」
巨大な大剣を肩に担ぎご丁寧に決めポーズもして登場だ。やはり来てくれたかパラディン。いつの日かの約束を覚えていてくれたのだ。
彼女は言ったこの世界にいる限り君がどこにいようと助けを求めたらすぐに駆けつけると。
これほど頼もしい味方はいない。パラディンがいたら教会まで逃げる補助を十分にしてくれるだろう。
パラディンはこちらに振り向き嬉しそうな顔をした。
「生き残ったのだな!初心者君!正直普通に死んだと思ってたぞ!」
そういうとパラディンは朗らかに笑った。
「パラディンよ。君の熱い正義に俺は今心打たれている。しかしヒーローは窮地に現れるものだな。今非常に厳しい状況である。逃走の幇助を頼みたい!」
「君!何か悪いことしたのか??」
パラディンが真面目くさった顔で訪ねてくる。彼らにいわれ無く監禁されていたのだとパラディンに伝えると彼女はまぁ片方の意見だけ聞いてもしょうがない、君が気づいていなくても彼らの気に触ることを君がした可能性もあるのだよと急に冷めた口調になった。
こいつ意外とめんどくせぇな。
パラディンは上級者達に歩み寄り話を切り出そうとした。刹那、突如パラディンの真横にチャイナ女が現れた。彼女は長い脚でパラディンの顔目掛けてハイキックを放った。
やはり速すぎる。何か種があるに違いない。パラディンを見ると彼女は事もなさげに片手でチャイナ女の足首を掴んでいた。パラディンが力を込める。嫌な音がした。骨が砕ける音が辺りに響き渡る。
間を開けずに大量の武器で覆われた男が短剣二つを持ちパラディンに斬りかかる。パラディンはこれもまた片手で大剣を自在に操り男の攻撃を捌いた。そして蝿でも叩くかのように大剣の腹で男を弾き飛ばした。
老紳士の装いをした老人が杖から剣を抜き出し、目を瞑った。あれはパラディンの思考を読もうとしているのだ。パラディンは掴んでいたチャイナ女を投げ捨て、大剣を地面に刺し正拳突きの構えを取った。老人は駆け出したが剣の間合いに入る前にパラディンの正拳突きは宙を飛び、老人の鳩尾に突き刺さった。
瞬く間に三人の上級者を戦闘不能にした。そんな彼女はふふんと自慢げに笑い叫んだ。
「ジャスティスパンチ!」




