アリス
ノンダクレが俺を酒にしようとしなくなり、俺の感覚も落ち着いた。
なんだかこの場所に来てから感覚が鋭敏になっている気がする。兎も角、分からないことだらけだ。
状況を整理するとこの場所では物理攻撃では死ぬことはない。ノンダクレの審査場に行けという言葉、あれは嘘ではない。
審査場に行こう。もちろん行き方など微塵も分からないのだが。
教会の扉を両手で押し開けると美しい青空と緑の庭園が広がっていた。ノンダクレのここは天国だという発言は間違いではないのか?
いや天国の住人がいきなり酒瓶で殺しにかかりはこないだろう。庭園を抜けるとおそらく住宅街が広がっていた。鉄筋コンクリートのマンションや木造の文化住宅、茅葺の家に竪穴住居、中世の城、レンガ造りの家、次元ホールまである。
どれもこれも人が住む家と言えるのでここは住宅街と言えるだろう。しかしなぜ俺はこれらの奇怪な建物が人の住む家と分かるのだろうか。分からない、過去を思い出そうとしても思い出せない。これは記憶が操作されているのか?
整備された道を歩きながらどこにあるかもわからない審査場を目指す。
あてのない道中多くの人とすれ違う。どれも共通して言えることは共通性がないこと。いわゆる中世の甲冑をきた人間とすれ違うこともあればリザードマンや学生服の学生、尻尾が二股の猫とすれ違うこともあった。
これは夢なのか?もうなにも分からない。道ゆく人に審査場を聞くが、明瞭な答えを返したものはいない。曰く望めば行けるらしい。これもルールなのか。
だんだん道が狭くなっていき人とすれ違う幅も無くなった。それでも進んでいくと目の前に大きなドーム状の石造の建物が現れた。ここが審査場。きっと合っているだろう。そんな気がした。