意識
こいつらはこの森でかなり不用心に立ち回る。直感スキルと敏捷性があるためなまじ下手に警戒しなくても何とかなるのだろう。
直感スキル。これまで幾度となく助けられたが敵に回すと非常に厄介だ。まず奇襲が効かない。敵意を向けた瞬間距離を取られてしまうからだ。さらに対面戦闘になっても攻撃が当たらない。
どう攻略するべきか。パラディンとの訓練の日々が思い出された。
最初の頃はパラディンに肉薄されかわす余裕もなかった。スピードが速すぎて体が追いつかなかったのだ。前妖精に一撃を与えたのはこのパターンだろう。
だがそれでも回避されかけたし今度はこちらから近づかなければならない以上、気取られたら距離を取られて終わりだ。
このミッションに呼ばれる数日前くらいになるとパラディンの攻撃を半分くらいは避けれるようになった。しかし他の半分はどうしても避けることができなかった。そこにヒントがあるはずだ。
パラディンは昼前になると腹が減るようで明らかに攻撃に集中しなくなる。だがそれに比例するようにパラディンの攻撃は避けづらくなっていた。空腹、それが関係する?そんなわけない。集中力だ。意識の集中。それが鍵だ。
奇襲はどうせ効かない。意を決して妖精の前に姿を表す。出来るだけ木が多いところを狙った。妖精は顔の肉を歪めて笑うと右手を振った。
意を決したつもりだったが思わず慄いてしまう。慌ててバックアップで距離を取る。轟音と共にさっきいた場所の木が倒れる。これではいけない。
仕切り直しだ。木の陰に隠れて一旦妖精を巻く。深呼吸して森の空気を肺の奥まで入れた。冷えた空気を吸って頭が冷える。再び妖精の前に躍り出た。