楽しいサバイバル
広場にあった猪を拠点に移している最中、川を見つけたので血抜きをして猪は川に沈めた。水温は低いのである程度腐敗を遅らせることができるだろう。
川は上流へと続いていた。明日上流へ行き澄んだ水を手に入れよう。
肉を焼いて食べた後火を消して狭いシェルターで体を横にした。本当なら火を消さないほうが獣はよらずいいだろうが、この森には妖精が住む。
奴らに気付かれたら終わりだ。目を閉じ体だけ休めて熟睡はしない。
既に夜の帳に包まれていて、空を見ると幻想的な星空が広がっていた。この森は美しい。改めてそう感じるがそれに似つかずあたりは不気味なほど静かであった。虫の音も聞こえない。あるのは時折風に揺れる木々のざわめきのみ。
本当に一年間ここで暮らすのだろうか。どうしようもない不安が襲ってくる。教会のベットを恋しく思う。
理不尽に森に叩き込められ一年間高確率で死ねる妖精の森でサバイバルを強いられている。しかし不思議と惨めで媚び諂い続ける必要があった冒険者時代よりは精神的に楽であるなと感じた。
この森で生活して一月が経過した。相変わらず熟睡できない日々は続いている。何度も心は折れたが死を目の前にすると甘えた行動はできなかった。体は痩せて日々力は衰えていく。
川の上流には夥しい数の妖精がいた。そのため拠点は出来るだけ上流から離れた場所に転居し今は洞窟で暮らしている。
食料は猪などの野生動物や妖精が食べていて毒性の無さそうな草や果実を食べた。しかし安定した食料供給の目処は立っていない。飯が見つからずポーションを使って生き延びる週もあった。
このままでは一年など到底暮らせない。