着付け
いきなり馬鹿呼ばわりされて言い返そうとすると老婆はそれを遮るように言った。
「あんたの選択は間違っていないと思うよ。武器の素養はなさそうだが、五感を活かして回避重視、そのための刀はあんたに向いている。
この世界の召集では防具で防げる攻撃なんて無視していい。特にあんたみたいな貧弱は攻撃を防いでも体力を持っていかれちまうよ。とにかく避けるんだ。」
どうやらこの老婆はわずか数分で俺のスタイルを看破したらしい。その慧眼に驚くが同時にパラディンへの不信感が募った。
あれだけ痛めつけられる必要は本当にあったのだろか。こんな老婆に一瞬で看破されたようなことをパラディンは俺を百回ボコって教えたのだ。
「なるほどな。納得したよ。失礼な態度を取りすまなかった。魔女よ。」
ウィッチと呼んでおくれ、そう言いながら俺に先程の浪人のような服を渡した。
「それ着ておりてきな。防具にあてるポイントはアイテムに使うべきだよ。」
老婆は部屋から出て階段を降りて行った。
この部屋はどこか居心地が良い。前世での服を脱ぎ袖に手を通す。淀みなく着付け、軍刀と脇差を腰に差し、階段から降りた。
老婆はカウンターに座っており、降りてきた俺を見つけると鼻で笑いながら言った。
「あまり似合ってないね。」
西洋風の顔立ちの俺にはどうも着こなせていないらしい。割とどんな服でも着こなせる自信はあったので落ち込んだ。
アイテムを見せてくれ、そういいながら老婆の対面に座った。