魔女
軍刀は25p、脇差は15pなので予定より10pオーバーしてしまった。脇差をもう少し安いものにするべきだったか。
少女が丁寧に頭を下げてご来店ありがとうございましたと告げた。
まぁいいか、他の装備で調整だ。
武器屋を訪れたことで行ける場所が増えたらしい。道具屋の位置が頭に思い出された。どうやらここからは離れた場所にあるようだ。
軍刀と脇差を右脇で抱えながら道を歩く。盗まれたりしないだろうか。少し不安に思う。また軍刀を抱えて持つ自分の姿がひどく不恰好な気がして早歩きになる。
しばらく歩くと魔女の家のような蔦が這う古びた民家にたどり着いた。ここが道具屋である感じはするが、少し気後れしてしまう。一応ノックをしてみる。
軽い音が3回響くが返事はない。意を決してドアを開くといかにも魔女といった装いの老婆が片目を開きこちらを見た。
しまった、俺は老婆の目を見てそう思った。このまま俺は彼女の後ろにある巨大な鍋に放り込まれ怪しげな薬の材料となるに違いない。そう思わせるほどの凄みが彼女にはあった。
「何を突っ立っているんだい。木偶の坊や。道具を買いに来たのだろう。」
しわがれた声で老婆が告げた。どうやら勘違いだったらしい。
失敬失敬と小さな声で呟きながら老婆に近づく。ここでもホログラムで商品は展示されているらしい。
ここで防具を買えるのだろうか。そう考えると色とりどりの防具が目の前に浮かぶ。10000pの装備もあったので予算を思い浮かべて絞っていく。
皮の鎧やチェーンメイル、様々な防具が浮かび出されるがいまいちピンとくる物はなかった。
「あんた、その抱えている物は刀かい?珍しいね。」
老婆が話しかけてきた。集中したかったので生返事で返す。
「あぁ」
老婆は俺の気のない返事を気にも留めずに話を続けた。なんだこの婆さんは。俺はあまり買い物中に話しかけられるのが好きじゃない。売り手の金儲けの欲を醜く想像してしまい純粋な目で商品が見れないからだ。
「うむ。あんたの身体のサイズも特に問題なさそうだし、あたしの息子のお古をあげよう。」
驚き思わず老婆の顔を見る。皺だらけの顔を歪めていた。どうやら笑っているらしい。ついてきな、そう言って老婆は階段を登って行った。