聖騎士と朝
振り返るとジャージ姿のパラディンが立っていた。
ジャージに美女はダサい物の象徴だと思っていたが本当の美女はジャージでも着こなすらしい。
パラディンは汗ばんでおりどうやらランニングをしてきたようだ。
「昨日の初心者君だな!生き残ってくれたようでうれしいぞ!おめでとう!」
長い金髪を揺らしながらパラディンは手を差し伸べてくる。彼女の汗が朝日にきらめき、昨日の二割り増しで美しく見える。
彼女の手を掴み握手をした。
「祝ってくれてありがとう。君の拷問にも似た素養審査でなんとか生き残ることができたよ。」
少し皮肉を混ぜて返答すると彼女は朗らかに笑い審査場の中に入った。
「体を綺麗にするから中で少し待っていろ!今日も私に打ちのめされにきたのだろう?」
続けて審査場に入る。パラディンはジャージを脱ぎながら奥の部屋に消えて行った。
審査場を改めて見回すと中々の広さであった。円形になっており、入ってきたドアからまっすぐ歩くと彼女の部屋があるらしい。
設定上ここはだれでも入れるようになっているらしいが、邪な者はパラディンを襲うことなど考えないのだろうか。あれだけの美貌だと人の目にもつくだろう。
地面を見るとすこし赤みががっていることに気がつく。昨日彼女にリンチされたことを思い出した。ふむ、パラディン以上の実力のある者はわざわざ彼女を襲おうなど思わないのだろう。リスクとリターンがまったく釣り合っていない。
待っている時間も無駄だったので少し考えていたことを実行してみる。それは武器についてだ。ファザー曰くミッションを一度クリアすると武器屋に行けるらしくそこでポイントと引き換えに武器を入手できるらしい。
弓と矢をイメージして目を瞑る。手には昨日通り弓と矢が現れた。さらに的をここから一定距離離れた場所に現れるようにイメージする。成功だ。想像通りの赤い的が遠くに現れた。
矢を番えて狙い放つ。放たれた矢は空気を切り裂き空を駆けた。そして的のスレスレを掠め減速し地面に突き刺さる。
「弓矢、適正なし!」
パラディンの声が奥の部屋から聞こえた。どこから見ているのだあの女は。