等価交換
朝起きる。どうやら眠っていたらしい。体を起こす。気持ちが悪い。水浴びをしたいが水を浴びる場所も分からないし、生活必需品が圧倒的に足りていない。
部屋を出てファザーを探すがいなかった。シャワー室と書かれた部屋があったのでそこで身を整える。
本当にこの記憶はどこから来ているのだ?前世で湯が出てくる機械など一度も触ったことはなかったのに使い方が分かる。
教会のステンドグラスがある聖堂にでると眩しい朝日が差し込んでいた。誰もいない。清々しい朝だ。
いや、教会の長椅子に何かがいる。近づいてみると聖書を枕にし、酒瓶を抱いて寝るノンダクレがいた。
そうか、ここは誰でも入れる設定だからこのように浮浪者は入り込んでくるのだな。
なんとなしにノンダクレが枕にしていた聖書を抜き取る。頭が叩きつけられる鈍い音とノンダクレの呻き声が聖堂に響いた。
等価交換の台に聖書を持っていきパンが出てくることを祈る。聖書は静かに消え一欠片のパンが出てきた。一欠片のパンをさらに聖書に戻そうと祈る。
するとそこには聖書の表紙のみが残っており、聖書の麗しい重みは消えていた。
まったく等価交換ではない。本当にこのノンダクレは適当なことしか言わないのだな。
ノンダクレの長椅子を腹いせに蹴り飛ばして聖堂の外に出る。秀麗な庭園はすべて計算して作られており、朝日に照らされた花々は教会の神聖さを強めていた。
これもファザーが管理しているのだろうか。まめな男だ。しかしこれだけ綺麗な環境にいればここに永住するのも悪くないのではないかと感じる。あのミッションがなければな話だが…。
道を出て数分歩くと審査場についた。審査場の石造のドアを開けようとすると、後ろから肩を叩かれた。