ホテル
ウェポンとアーシュを背負い、夜の街を歩く。点滅するネオンの看板。軒先に吊るされた洋燈。通り過ぎる人々の赤らんだ顔までよく見える。
「しかし…、まぁなんともピカピカした世界だね。」
ドクターが周囲の様子を窺いながら呟いた。
「そこらへんのホテルに今日は一泊するぞ。」
「ホテルって言ってもお金はあるのかい?」
通りすがりの男と肩がぶつかった。相手の視線がアーシュとウェポンに行く。軽く頭を下げて、道を進み、ドクターに財布を渡した。
「現地調達ってわけか。基本だね。」
ふむふむ、紙幣製なんだね。そういってドクターは目についたホテルに入っていった。
部屋を借り、アーシュとウェポンをベッドに寝かせる。
ドクターが緑の薬品を入れたフラスコをウェポンとアーシュの顔にかけた。ウェポンは飛び起きたが、アーシュはうめいただけだった。
「ちっ。不覚。」
ウェポンは静かに装備の点検をベッドの上で始めた。
ドクターはアーシュの腕にまた別の薬品を注射していた。アーシュの露出した肌はまだら模様にピンク色で染まっており、白い肌との対比で一層毒々しく見える。
「さて、作戦でも立てよう。」
柔らかな椅子に座り、テレビをつけた。テレビを見るのも、もう何十年振りになるのだろうか。
「今回。敵。厄介。武器。調達。必要。」
「僕はアーシュの病状回復に1日は費やすよ。」
「ならばいつも通り各自、自由行動でいいな。」
「ちなみに今回の参加者と敵の居場所だけ教えとくよ。」
そういうとドクターは腕に埋め込まれている液晶パネルを操作し、テレビ画面に地図を表示した。
「敵はまとまって一箇所にいるようだ。ここから南西の方向に90キロメートル先だね。参加者は点在してるけど、もう三人やられてる。」
「そうか、今回は相手もこちらの情報に詳しいだろう。お互いの居場所が分かっている以上、短期決戦になる可能性が高い。俺は先に行くぞ。」
ドクターはテレビ画面から地図を消した。元のテレビに戻ると自衛隊か何かの特集をしているらしい。ウェポンがそれに食いついた。
「オーガ。いや。ツクモ。この世界。詳しい。この銃。どこ。」
オーガが自衛隊のアサルトライフルを指差して尋ねた。
「それなら米軍基地でも行ったら腐るほどあるだろう。というか、別にポイントで買えるんじゃないか?」
「買える。でも。オーパーツ。高い。俺。滅多に使えない。」
銃は俺たちの世界ではまだ文明的に作れないのか。部品をちまちま購入して組み立てればまだ安上がりだろうが、わざわざそんなことする奴もいるまい。
「じゃあ、今日は寝よう。」
口が勝手に動き、身体は制御を失いベットに倒れ込む。
(おい、ツクモ。)
(いいじゃないか。オーガ。最近働き詰めで僕も疲れたよ。今日ぐらいは。)
(…分かったが、敵の気配が近づいてきたらすぐ起こすからな。)
(了解、オーガ…zzz)
(気楽なやつだな)