派閥
ファザーはドアを開けながら答えた。
「なるほど、システム的な話はすべて終わったので、この世界に住む人々について答えましょうか。
なに、そこまで複雑な話ではないのであなたの部屋への案内がてら語りましょう。」
薄暗い廊下をファザーと共に歩いていく。
「この世界には三つの派閥があります。一つは次の階層に進む為、ミッションクリアを第一に置く派閥。二つは元の世界に戻る為、ポイント稼ぎを一番に置くもの。三つは私たちのようにこの世界で楽しく生きていこうと言うものです。」
俺は少し驚いた。この世界は元の世界に戻る為に努力する者が大多数だと思っていたからだ。
こんな世界に留まろうとする者、ましてや次の階層を目指そうとする者が一定数いて派閥を作っているなど考えもしなかった。
「では、ノンダクレは君たちの派閥に属しているのか?」
ファザーは少し声のトーンを落として答えた。
「いいえ、彼らは諦めた者です。ミッションをクリアすることができず、ただただ死を待つ者たちです。」
ファザーはなぜか自責の念を抱えているように語った。
「彼らも元々はあなたと同じように初心者だったのです。最初のあなたの質問に返りますが、私たちは彼らのような存在を生み出さないように、このような教会や審査場を作り出しましたのです。」
俺もあのような存在に成り果てる可能性は多分にあるのか。
「つまり君たちの行動は善意に満ちた高潔なものであるということだな。感謝する。お陰で右も左も分からない状態から進むべき道を見つけることができた。」
ファザーが歩みを止めた。俺の目を彼の美しいサファイアのような双眼が貫く。予期せず心臓が跳ねた。
「これはそんなに美しい善行ではありません。ただの約束なのです。彼とのね。」
どうやら部屋についていたらしい。彼、彼とは誰なのか。そう尋ねてみようとしたが遮るようにファザーは部屋のドアを開けて告げた。
「ここがあなたの部屋です。ミッションを3回こなすまではこの部屋で滞在することを認めます。それまでにポイントを稼ぎ、次に住む部屋を購入しなさい。
なに、部屋などは選ばなければ1pで買える物もあります。この世界になれるまでの仮の住まいとしてここは利用してください。」