神父
神父の後を追うと、机と椅子しかない随分簡素な部屋に連れてこられた。
神父は俺に座るように促し、俺の対面に座った。
近くで見ると端正な顔立ちに薄く青い髪色をしている。年は25、6に見えたが立ち振る舞いはどこか老成していた。
「私の名前はファザーです。唐突だが君は一度死んでいます。まずはそこを受け入れてくれますか?」
優しい声で俺に尋ねる。
「あぁ、ファザー。ここにいた浮浪者から随分丁寧に教えてもらったよ。」
浮浪者と言う言葉を聞いて神父は顔を顰めた。
「すみません。あのノンダクレは私が召集にかかった時を狙って転生した初心者を酒にするのです。」
おそらく俺が転生した時本来目の前にいるはずだったのはノンダクレではなくこのファザーだったのだろう。
「何、過ぎたことだ。そんなことよりも俺には聞きたいことが山ほどある。説明してくれるな?」
ファザーは幼児に歩き方を説くかのように丁寧に俺の疑問に答えた。
考えられる限りの質問をファザーに投げかけたが、大半の質問はまるで頭が理解を拒むように、理解できなかった。ファザー曰くまだこの世界への慣れが足りないらしい。長い時間を費やして結局手に入れた情報はで主だった物はこれだ。
この世界は死後の世界。
この世界の住人はある一定の周期であの小部屋に召集される。そこでミッションを与えられ、皆訳も分からず戦っている。
戦って得たポイントは主に三つの使い道がある。
一つ、ここで物資を得る。
二つ、次の階層に進む。
三つ、蘇り元の世界に戻る。
戦わずに逃げ回り、ミッションに失敗すると貯めたポイントはすべて没収される。二回連続でミッションに失敗すると強制的に死を迎える。
この世界で死んでも蘇るのは審査場、教会などリスポーン設定がオンになっている場所のみだけ。
そして今現在の俺が行ける場所は審査場、教会、武器屋のみ。
結局もっと情報を得る為にはミッションをクリアして慣れる、つまりはこの世界に順応しなければならないらしい。
部屋の小窓から外を覗くと、あたりはすっかり暗くなっている。冷たい風が室内に入りんできた。
ファザーは席を立ち、窓を閉めた。
「疲れたでしょう。教会の部屋を一部屋開けているのでそこに泊まりなさい。」
なんとも慈悲深い男だ。だがそれ故の疑問がまた生じる。
「ファザーよ。ご親切にどうも。しかし、君やパラディンはなぜこうも親切なのだ?」