帰還
また目を覚ます。辺りは元の小部屋に戻っていて、人数は当初の半分以下になっていた。数人俺の後に現れた後、また小部屋のドアが空いた。
生き残ったのはこれだけか。あまりに多くの死を目の前にして愕然とする。
小部屋の住人たちは何を話すでもなく壁にかかったボードをひとしきり眺め、小部屋から出た。
また俺は取り残されボードを見るとそこには
<地下蜘蛛の駆除>
リザルト
【20位】鬼 蜘蛛 1 ポイント 合計1ポイント
【1位】軽業師 蜘蛛 58ポイント
大蜘蛛 10ポイント
百脚蜘蛛 100ポイント 合計168ポイント
と書かれた紙が貼り付けられていた。軽業師、それがおそらく今回の参加者だったのだろう。そして鬼は俺か。随分と物騒な名前だ。
1ポイント。蜘蛛一匹分のポイントだろう。軽業師と書かれた者は合計168ポイントも稼いでいる。それがどれだけ凄いのかは分からないが、1位と書かれているくらいだから凄いのだろう。
それにしても、分からないことだらけだ。審査場に戻りパラディンに全てを聞こう。
審査場を思い浮かべ、小部屋から出る。
しかし小部屋を出た先は夕陽が差し込む教会だった。
十字架の下に誰かいる。神父の装いをした男が等価交換の台を運んでいた。
神父はこちらに気づくと柔和な笑みを浮かべこう告げた。
「生還おめでとう。ニュービーよ。分からないことだらけでしょう。私にすべてを聞きなさい。」
この世界に転生してから初めて俺のことを殺そうとしない男にあった。何故か妙に感慨深い気持ちになる。
「着いてきなさい。ゆっくり座って話しましょう。」
男は台を置き教会の奥の部屋へ歩き出した。
軽く息を吐く。全身に回っていたはずの毒は無くなっていた。今のは幻だったのか?身体から疲れが噴き出た。指一本たりとも動かしたくない気持ちだった。
しかし行かなければ。赤い陽を透過するステンドグラスをよく見ると天に祈りを捧げる女が描かれていた。