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戦場の少年少女
22/22

幕間・作戦後

 ハッチが開くと、ヘルメットを脇に抱えたリゼルがコクピットから現れる。


「思ってたより強くなかったぜ。2対1だから最初は焦ったけど、あの程度じゃ次の作戦も余裕そうだな」

「こちらとしては、痛い目見て少しばかり口数が減ってくれたほうが嬉しいがな」


 コクピットへとつながる足場の手すりに寄りかかりながら、男は言った。EUIW連合部隊試験小隊を構成する6名の1人。リゼルとツーマンセルを組む少年、ライトだった。特徴的な碧眼がリゼルの顔を覗き込む。


「俺の強さはお前が一番わかってるはずだろ?」

「それほどの自信があるなら、もう少し圧倒して欲しかったな。あの衝突でできた刃こぼれもだいぶ酷い」

「あれはびっくりしたな。俺の機体も機動力は化物だとは思っていたが、まさかこの機体とアレが同じ、いやもしかしたら少しアレの方が上となると、もう少し用心したほうがいいかもな」

「珍しく弱気だな」

「そりゃあな。次の作戦で負けるわけにはいかねぇだろ。それに、あいつらの所為で俺たちはこんなんになったんだから」


 2人で簡易エレベーターに乗り、地上へと降りる。


「この歳までその感情を抱けているのもすごいと思うぞ。ほとんどの奴は、どこかで割り切って気にしてる奴の方が少ないんだから」

「別に、本気にしてるわけじゃねぇよ、俺も。どっかでわかってんだ。でも、あいつらが生まれなかったらこんな体で生まれてくることもなかったんだぜ」


 リゼルは己の左手を見る。肌の色とかけ離れた、鋼色の腕。デコードとの接続を可能にした特注の義手である。EUIW連合部隊試験小隊は義足や義手、人工臓器を使用したメンバーのみで編成されている。


「まぁでも、エデンに対抗してわざわざ俺たちみたいなやつを作ろうとしたこの国の奴もどうかと思うが、な、隊長」


 リゼルとライトは1人の男の前で立ち止まる。隊長と呼ばれた男はパネルを片手に、整備士へ指示を出していた。

 指示を中断し、2人の方へと振り返る。


「そんなことは俺に言うな。俺はお前らの指揮を任されただけで、お前らを生み出したわけではない。国としては、とりあえず列強として劣るわけにはいかなかったんだろうな。あと、リゼルはもう少し口の聞き方に気をつけろ。今は俺だから、まぁいいが」

「はいはい、わかってますよ。」

「それに、作戦時以外の時間は自由なんだから、施設に閉じ込められているエデンよりもよっぽどましだと思うが」

「まぁ、確かに。あの国、次の作戦内容にしても何やりたいのかよく分かんねぇよな」


 リゼルは明後日の作戦内容を思い出す。あの国で何かが渦巻いている、そんな予感がした。


「理由は、今はどうでもいい。今は、明後日の作戦に集中してくれ」

「まぁ大丈夫だろ。確実に遂行できるように隊長が俺達を選んだんだ。まさか、こういう作戦で第三者が人質に取られるとは思わなかったな。しかもそれが隊長の娘とは」

「その点は、すまんな…。こちらでもう少し、注意していればよかったと思っている」

「でも仕方ないとは思いますよ。今までこんなことは起こっていませんし。逆に、何故あっちが人質を作ってまで作戦を……エデンのメンバーの1人を殺してほしいのかが気になりますね」

「そいつが邪魔だからとかじゃねぇのか? 危険人物だったりとかでエデンの名前を汚す奴とか」

「それは、可能性としては低いだろ。隊長が言ったように、エデン全員がずっと施設内で過ごしてるんだ。そもそも危険行為をすること自体が難しい」

「じゃあなんでだよ。隊長はなんか、知ってるのか?」

「いや。だが、調査する価値はある。前々からあの男は少し警戒する必要があったからな」

「あの男って、今回の依頼主か?」

「あぁ。気持ち悪いほどに頭のいい男だ。そしておそらく、今この世界で最もデコードに詳しい男だ」


 徐々に陽が沈み始める。時は止まることはなく、ひたすらに刻み続けその時へと迫ってゆく。

 いつか失った悲しみや憎しみを、それでも忘れることはなく子供達は大人になってゆく。命を落とすその日まで、新たな憎しみを振りまきながら。

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