第9話「土いじり」
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朝食を摂って、歯を磨き……
ダンとスオメタルは城を出た。
昨日同様、本日も快晴。
眩しい陽の光が「さんさん」と降り注いでいた。
天気が良いと幸先が良い。
ダンはそう信じている。
「お~、今日も春らしく、いい天気だなぁ。ほどほどの暖かさだし」
「は~い! 御意でございます。本当にそうです。気持ち良いでございますね、マスター」
「だな! よっし、畑を作る場所はあそこだ」
ダンは敷地の端を指さした。
その一画は周囲に遮るものが殆どなく、陽がたっぷりと降り注いでいた。
植えた作物が良く実りそうだ。
リシャール王から、この領地譲渡の話があってから……
城のリフォームは勿論、荒れ果てていた庭も、境界線がほぼない敷地内も、
ダンとスオメタルが雑草や石を取り除き整地し、各所へ芝も植えていた。
と、ここでスオメタルが尋ねて来る。
「了解でございます。マスター、ひとつ質問して宜しいでしょうか」
「ああ、遠慮なく聞いてくれ」
「状況次第だと思われますが……魔法と人力、マスターなら両方余裕で行けますが、作業の仕分けをどのようにお考えでしょう?」
「うん、特に決めていないけど……作業時の体調に問題がなければ基本、人力で行おうと考えている。王宮のしごきじゃないけど、鍛錬を兼ねてね」
「成る程……申しわけありませんが、自動人形たる私の体調は常にフラット状態、故障したとか魔力不足でなければ、ほぼ変化がございません。なので、逐一指示をして頂けますか?」
確かに……
スオメタルは、彼女の言う通り体調不良などない。
その都度命令するのは煩雑だが、ダンは労を惜しまない。
……というか、スオメタルは自分と話す機会を、
少しでも増やしたいと望んだに違いない。
ダンは、スオメタルの健気な気持ちを見抜いた上で、あっさりOKを出す。
「了解! スオメタルへは毎回指示を入れるよ。イレギュラーな場合もあるだろうから」
「うふふ、マスターは凄く優しいです! 私の気持ちをちゃんと理解して頂き凄く嬉しいです!」
「あはは、俺は優しくないって。ほら手をつなごう」
「え? 手を? 宜しいのでございますか?」
「うん、朝の魔力補給のついで、つ・い・で、だよ」
ダンの吸収魔法同様、スオメタルにも同じく、
動力となる魔力を手から吸収する能力がある。
「うふふ、ついでなんて。先ほどの食事で、魔力はほぼ充填されております。すぐばれる嘘はいけませぬよ、マスター」
ふたりは仲睦まじいという感じで、畑予定地へ向かい、歩き始める。
「基本は防衛の為でございますが、マスターがお作りになった魔法障壁は農作物を荒らす害獣にも有効でございますね」
「だな! ドラゴンも侵入出来ないから、少し強力すぎる気もするが……防犯、獣害兼用という事で構わないだろう」
「全くの御意! ……でございます」
安全の為、特に夜間、安眠する為……
城の敷地内を、そして敷地の上空100ⅿまで……
ダンが仕込んだ対物理、対魔法の両方に絶大な効果を持つ、
魔法障壁――ベタに言えば、バリアがぐるりと取り囲んでいた。
この魔法障壁は、肉眼では見えないし、音声も通すが……
敷地内に入ろうとしても弾き返されてしまう。
なのでふたりが言うように、
敵たる魔物の侵入は勿論、鳥、熊、鹿、猿等ノーマルな獣が及ぼす害も心配ない。
障壁の真ん中に、ダン達が起居する城がある。
全体の敷地の広さは、王都の中央広場5つ分くらいあった。
公園のような貴族邸宅が数十ほど入るくらいの広さと言ったら分かりやすいかもしれない。
「よっし、ここだ。まずは訓練がてら人力で行くぞ」
「了解です。どれくらいの広さで土を掘りますか」
「とりあえず、10m×10m四方くらいで行くか。ふたりで食べる野菜ならそれで十分すぎるだろ?」
「いえいえ! 念の為、その3倍で耕しましょう。どうせあれもこれも食べたいと、植える作物がどんどん増えると確信しておりますゆえ」
「3倍? う~ん、まあ大は小を兼ねると言うし、さくっと行ってみるかあ!」
「御意でございます! スオメタルは凄く気合が入って来ました」
ダンとスオメタルは顔を見合わせ、同意。
にっこり笑ったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ダンは魔王を倒した元勇者……
スオメタルは単身、悪魔の大群と渡り合った最強の自動人形。
いくら3倍に目標を課しても、畑仕事は……楽勝だった。
ふたりで普通の農機具を使って作業したが、ものの30分もかからなかったのだ。
ちなみに、用意した腐葉土をたっぷり、若干の石灰も入れてある。
「成る程……腐葉土とは、植物や作物を育てる土を改善する為の堆肥なのですね」
「ああ、そうだ。今回使用したのは地の魔法で精製したものだが、天然の腐葉土も欲しいな」
「ふむふむ、元々は「腐植土」と呼ばれていて、枯れて落ちた樹木の葉や枝が長い年月をかけて、土状になったものと……」
「その通り!」
「そして石灰とは消石灰なのですね。石灰岩などの主成分を1,100℃ほどに加熱する、と……OKです。昨夜ご説明頂いた、ろ過装置地やシャツの網同様、私の魔導回路に記憶させました!」
「よし! という事で畑仕事は本日のノルマ完了! っておい、大丈夫か、スオメタル」
疲れていないはずのスオメタルだが、表情が少しだけ暗い。
「はい、マスター。私の苦手なミミズが……たくさん出現しましたので、気分がちょっと……でも! マスターに排除して頂いたから、大丈夫! 無事任務完了……でございますね」
「まあ、ミミズは土を良くしてくれるから、殺せない。スオメタルの見えない場所に移すだけ、まあ俺に任せろ」
「助かります!」
「それに俺もゴキブリが苦手だからなぁ。気持ちは分かる」
「うふふ、私もゴキブリは苦手でございます。私とマスターは似た者夫婦でございますゆえ」
「ははは、だな! と、なれば」
「いよいよデートタイムに、とつ、にゅうでございます」
「よっし、早速出かけよう!」
「ラジャーでございます」
ダンはスオメタルから農機具を受け取り、早速ポンプを稼働させ、
水を出し、洗った。
「スオメタルの作った井戸、ばっちりだな」
「それはようございました! マスターのお役に立て本当に嬉しいです」
使い込んだ農機具は泥を落とされ、綺麗になった。
ダンは、それらを収納の腕輪に仕舞った。
入れ替わりにダンは、二振りの鞘入りスクラマサクスを腕輪から出し、
ひとつをスオメタルへ渡し、もうひとつを自分の腰から提げた。
「頑丈で、切れ味抜群。魔力伝導率の高いミスリル合金製のスクラマサクスだ。俺が作った」
「ありがとうございます。お揃いの探索用の剣でございますね、さすがです、マスター。素晴らしい出来栄えでございます」
「サンキュ! このスクラマサクスも、通常使ってるオリハルコンの魔法剣同様、属性魔法が付呪出来る。じゃあ行こう」
「はいっ!」
ダンの差し出した手を、スオメタルはしっかり握った。
手をつなぐのは、ダンからスオメタルへの単なる魔力の補給ではない。
確かな魂の絆が、ふたりにはしっかりと結ばれつつあったのである。
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