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第6話「スオメタルの決意」

 ダンの言葉を聞き、スオメタルも記憶が一気に甦ったようだ。

 発する言葉が熱を帯び、真摯な眼差しがダンをしっかりと見据える。


「お前は人間! はいっ! 確かに私は人間でございますっ! 自分では確信しておりますが、愛するマスターから改めてそう仰って頂き、凄く凄く嬉しいでございますっ!」


「当たり前だ! もしもお前を悪く言う奴が居たら、俺がぶっ飛ばしてやる!」


「うっわ! 嬉しいですっ! ……ええっと、話を戻しますと! バラバラになり打ち捨てられた私でしたが……自動人形の心臓部分……魂の部分だけは無事でした」


「だな! それが一番ラッキーだった」


「はい! 超ラッキーでございました! 何とか意識があった私は……全てを! マスターがおやりになった事を、はっきりと見ていましたっ!」


「そうか、俺は見られていたのか? ずっと……」


「はいっ! 私はず~っとず~っと見ておりましたっ! あの時の事は絶対に忘れられませんっ!」


「そうか!」


「はい! マスターは! マスターはっ! 勇者となってから……失われたガルドルドの都を探索中、打ち捨てられ……朽ちかけた私を発見しましたよねっ!」


「うん、お前から後で聞いて驚いたよ。お前が生まれ育った……失われし魔法帝国ガルドルドはある日、突如地の底から出て来た多くの悪魔と戦った……と知ってな」


 ダンは記憶を手繰った。

 全てはスオメタルから聞いた話である。


 元は人間の少女だったスオメタルは……

 魔導工学士たる父の手で魂を自動人形へ移し、

 魔法帝国ガルドルドで暮らしていた。

 

 戦闘用自動人形(オートマタ)のスオメタルは父から命じられ、

 突如襲来した悪魔の大群と戦ったのだ。

 しかし圧倒的な数に押され、最後には敗れ、破壊されたのである。


「ああ、スオメタルは良く頑張ったと思うよ。残念だったな……」


「はい! ですがっ! あの時は全力で戦ったので悔いはありませんっ!」


 ダンは、幼い頃から営んで来たジャンク屋の性癖から、打ち捨てられたスオメタルを放ってはおけなかった。

 

 それゆえ、高さ300m以上ある崖を降り、何度も何度も往復し、

 バラバラに散らばったスオメタルの身体を丁寧に優しく全て拾い上げ、

 何とか、助け出したのである。


「ああ、結構高く急な崖の下にお前は居たんだ……」


「です! ですっ! そしてっ! 私をこの城へ持ち帰ったマスターはっ! 超貴重なオリハルコンと超レアなミスリル合金を使い、足りない資材は、世界中探し回り、稼いだお金も惜しみなく使い、半年以上の時間を費やし、丹念に修復してくださいましたっ!」


「まあ、魔王討伐の最中、見つけた資材もいろいろ使い、王女の目が届かない時に時間を作って何とかって感じだったが……上手く治せて良かった」


「ありがとうございますっ! 頭部と四肢は勿論、魔導瞳に魔導髪、魔導皮膚等々、マスターが父のマニュアルを基に再現し更に改良、造り上げた全てのパーツは物理魔法両方の耐久性、柔軟性、運動性は勿論、手触りと見栄えが最高なのですっ! 誰も私を自動人形とは見抜けません!」


「おう! 幸い、スオメタルが打ち捨てられていた場所にあった、お前のお父上のマニュアルも一緒に見つけて持ち帰ったからな。俺はジャンク屋時代に壊れた自動人形いじった事があったし、王宮で勉強させられたから、古代語も読めたし……今のお前は見た目、普通の可愛い女子だ」


「うふふ! ありがとうございますっ! そしてマスターは! 私を再起動する為に! 考えられないほど膨大な魔力を! ……ご自身の魔力の殆どを! 魔力ゼロになったら死んでしまうのにっ! 私を復活させる為! 命も省みず注入してくださいましたっ!!」


「ああ、折角スオメタルの身体を治すんだ。出来る限りの事をしたかった。持てる全力を尽くしたつもりさ」


「いえいえ~、この通り! バッチリ完璧以上に治して頂きましたっ! 従来の魔力をみなもととする動力のみでなく! 食事も摂れるようにして頂き、お肉も! お魚も! お野菜も! 紅茶も! あふれ満ちる我が力となります! 食べ物全部が! すっごく! すっごく美味しいので~す!!」 


 涙ぐんだスオメタルは、ぴょんぴょん跳び、腕もぶんぶん回して見せた。


 自動人形オートマタに涙!?

 そう、スオメタルはダンに救い出された時の事を思い出し、

 嬉しくて泣いていたのだ。

 

「重ね重ね、ありがとうございますっ、マスター! 貴方の多大なご苦労に超が付く大感謝ですっ! 加えて、いろいろ偶然も重なり、超ラッキーだったで~す! マスターの古代語習得だけは意地悪王女にちょっぴり感謝で~す!」


「だが、スオメタル。お前はある意味眠っていたのに……俺が無理やり起こして余計な事をしたかな?」


「い~えっ! とんでもないで~す! スオメタルはマスターのお陰で華々しく復活し、その上、素晴らしくパワーアップ、ビルドアップ致しましたからぁ!」


「おお、そうか!」


「は~いっ! 故国ガルドルドで蓄積した知識と経験、習得したスキルが、今後の生活において、お役に立てばと思いますしっ! 行使可能な魔法もスキルも大幅に増え! 数多な新機能もい~っぱい加えて頂き! 今や世界最強の自動人形オートマタとなったのでございま~す!」


「ああ、頼もしいよ、スオメタルは。これからも頼むぞ」


「は~いっ! ありがとうございますっ! マスター! 復活した私には、マスターという、生きる張り合いが出来ましたっ! ……悪魔に殺された……亡き……父からは……スオメタルが人間に、本当の身体に戻りたいのなら、けして困らないよう魔法で厳重に保存保管しておくと言われましたゆえっ!!」


「うん、それも聞いてる。生身の人間に戻れるのなら良かったじゃないか。でもお前を見つけた遺跡にはそれらしきものはなかったぞ」


「は~い、残念ながら、あの遺跡には見当たらなかったです! でも私は父を信じますっ! 本当の身体は無事だと信じておりますっ! だからいつか! この世界のどこかに眠る本当の身体を見つけて魂を戻し、生身の人間として妻となり! マスターに添い遂げたいと思う所存でございますっ!」


「まあ……スオメタルが生きる張り合いを持ってくれたなら、理由はともあれ、俺は嬉しいよ」


「マスターは現在18歳でございます。私が魔導工学士たる父の研究の為、魂を移して自動人形になったのが16歳の時。いわば年齢も近いベストカップルでございます」


 本当は……旧き時代に生きたスオメタルの方がずっと、お姉さん……

 しかし、沈黙は金。

 ダンは余計な事を言わない。


「お、おう、ベストカップルね。良いかもしれないな」


「御意でございますっ! マスターが30歳になる12年以内には! いえいえ! なるべく早くっ! 私は本来の身体を発見致しますっ! そしてそして! 私スオメタル・リンティラは正式にマスターの妻となるのですぅ!」


「ええっと……正式な妻云々(うんぬん)はともかく、スオメタルの身体を探す手伝いは俺もするからな」


「わお! 身に余る温かいお言葉! 凄く嬉しいのでございま~すっ! でも私は必ずマスターの妻になるのでございま~すっ!! これは宿命でございますからっ!!」


 きっぱりと言い切ったスオメタルは……

 燃えるような目でダンを見つめたのである。

いつもご愛読頂きありがとうございます。

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