第47話「負けません!②」
魔法障壁は解除され……
ダンとスオメタルが進み出る。
「おう、ニンジャだか、何じゃだか知らんが、いきなり俺のウチへ押しかけて来た上、暴れやがって許さんぞ」
「マスターの仰る通りでございます」
ダンとスオメタルの物言いに反応。
マスターシンは、配下と共にふたりを睨みつけた。
「はっ、勇者ダン。とうとう出て来やがったか! 闇堕ちした守銭奴勇者の癖に何言ってやがる」
「闇落ちしとらん。守銭奴でもないっての」
「ふん! 御託を抜かすな。加えて、その女に加勢させるのか? どさくさ紛れで魔王になろうとする外道は卑怯極まりないな」
「はは、むちゃくちゃ言ってくれるじゃないか」
シンの言いたい放題、悪口雑言を聞き、憤怒の顔付きとなったスオメタルが「ずいっ」と更に前に出た。
「ふむ、ヌンジャのシンとやら、言う事はそれだけで、ございますか?」
「何がヌンジャだ! 言い直せ! マスターニンジャのシンだよ! ちっこい女はすっこんでろ! 邪魔だ!」
「ふふ、ちっこいとか、すっこんでろとか、邪魔とか、さっきから言いたい放題でございますね。単なる殺し屋風情が」
スオメタルは冷たく笑っていた。
彼女がわざと言い間違えたのは確かであった。
ダンに加え、自分も馬鹿にされたので、とんでもなく怒っている。
瞬間!
スオメタルが稲妻のように動いた。
同時に肉を打つ重い音が響いた。
がん!
ごん!
どか!
ばき!
どご!
がん!
「な、な、なんだぁ!?」
慌てふためいたマスターニンジャシンが気が付けば、あっという間。
スオメタルは元の位置へ戻り、何事も無かったかの如く、シンと対峙していた。
「……お前をぶち倒すのは、マスターの役目でございます。その前に雑魚を片付けて、露払いをしたでございます」
「な! ざ、雑魚をだと!? つ、つ、露払い!? な、何言ってる?」
「言葉通りでございますよ。超雑魚の盗賊はともかく、ニンジャはもう、お前ひとりでございますゆえ」
そう言うと、スオメタルは「ピン!」と指を鳴らした。
ばたばたばたばたばたばた!
背後に控えていたシンの部下達は全員が倒れ、地へ伏してしまった。
慌てて、振り返ったシンが見やれば、全員白目をむき、口から血を吐いている。
「な、な~っ!! バ、バカなっ!! い、いつの間に!!」
「ほんのちょっとだけ、本気を出したでございます」
「ほ、ほんのちょっと? ほ、本気だと!!」
「はい、ニンジャは、魔王軍より全然弱いでございますね。全員あばらを折ったでございます」
スオメタルの攻撃は認識した。
しかし、シンには納得がいかない。
「く、くそ! ニンジャはあばらの一本や二本! へ、へ、平気なはずだぞ! お、おかしいじゃねえか! そんなんで倒れるわけがねぇ!」
自分が思い切り舐め切って、馬鹿にしたスオメタルにより……
精鋭の部下達をあっさりと全員倒され、シンは虚しく叫んだ。
対してスオメタルはまたも鼻で笑う。
「ふっ、お前は、本当におバカでございますね」
「な、何だと!」
「活動に必要な魔力も抜いたから、痛みには我慢出来ても、体力がゼロに近くなったでございます。誰でも倒れるのは必然……でございますね」
と、その時。
ダンも動いた。
だが、シンは、ダンの動きが全く追えない。
シンが気が付けば、そのダンが目の前に立っていた。
「今度はお前の番だ。安心しろ。死なん程度に、手加減してやる」
当然、シンは慌てふためく。
「わ、わあああああああああっ!!」
ぱああああああああああああんん!!!!
瞬間!
ダンの平手打ちが一発、シンの頬へさく裂していた。
「ぎゃぶ!」
ダンの平手打ちは、たった一発だけ。
しかし魔王を倒した勇者の平手打ちである。
ニンジャマスターシンは呆気なく吹っ飛び、「ごろごろ」と転がり、
動かなくなってしまった。
「ひええええええっ!」
頼みとしていたニンジャ軍団が、瞬殺され……
盗賊団の首領ウジェーヌは、ショックからか、立っていられず、絶叫。
「すとん」と腰を落とした。
腰が抜けてしまったらしい。
「うわわわ、やばい!」
「ひ~、逃げろ!」
「ず、ずらかれ!」
一方、部下達も、あっさりと首領を見捨て、悲鳴を上げて逃げ出した。
しかし、そのまま逃げられるなど甘い。
砂糖のように甘すぎる。
ダンとスオメタルが戦っている間に、完全復活し、蘇ったスパルトイ軍団の木刀に散々に打ちのめされ、次々と昏倒したのだ。
これで、ニンジャ軍団、盗賊団全てが地へ伏した。
襲撃者のうち、残るはウジェーヌたったひとりである。
ニヤリと笑ったスオメタルは、「すたすた」と近付き、ウジェーヌの髪をつかんで、「ぐいっ」と引き起こす。
「さて、次はニンジャの雇い主たるあんたの番でございます。全部ゲロして貰うでございますよ」
「いたたたたた! た、助けてくれ~!! ぎゃああああああああっ!」
スオメタルは髪をつかんだまま、ずるずると引っ張り、
ダンの前へ連れて行った。
「ぽいっ」と、乱暴に放り出す。
「マスター、後は引継ぎ宜しく、でございます」
「了解」
ダンは無様に転がったウジェーヌを見下ろす。
ウジェーヌはダンを見て悲鳴をあげ、芋虫のように這って逃げようとする。
「ひ、ひえええええええっ!」
「おい、コソ泥。いちいち尋問するのも面倒だ。お前の心を読み取る」
ダンの瞳が妖しく光った。
不可思議な感覚に囚われ、またも悲鳴をあげるウジェーヌ。
「うわあああああああっ!」
「……………成る程。俺が金を持ってるという噂を聞き、世界最強を自負するニンジャを雇い、殺して奪おうと思って来たか」
「……………」
「お前ら! 王都やその近辺で押し込み強盗や殺人を散々やったな。許しを請う女子供も容赦なく殺した」
「ひえええええ! たた、助けてく、くれいっ!!」
ダンは瞬時にウジェーヌの心を見通したようだ。
全てを見透かされ、もうウジェーヌは反論も反抗もする気力がない。
ただただ、許しを請うだけである。
しかしダンは険しい表情で首を横に振る。
「助ける? 無理に決まってるだろ。お前等の行く先は地獄しかない。魔法で衛兵隊本部へ送ってやる。ニンジャともども、速攻で死刑になるんだな」
スオメタルも厳しい視線を投げかけている。
「マスターの言う通りでございます。冥界の最下層へ、みじめに堕ちるが良いでございます」
「わああああああああっ!」
こうして……
不届きにもダンの城を襲った盗賊ウジェーヌとその配下、そして東方から流れて来たニンジャ軍団は……
ダンの城における記憶を一切消された上、
深夜、王都の衛兵隊に転移魔法で送られたのであった。
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