第43話「帰還と報告」
自宅の城より西方へざっと2,000Km……
情報屋、妖精猫ジャンの情報は確かであった。
失われたガルドルド魔法帝国の遺跡は存在していたのだ。
しかも封印された扉の鍵は魔法帝国唯一の生き残り、スオメタル自身であったという落ちがついてしまった。
数多の者が中へ押し入ろうとしても拒み、固く閉ざされていた扉は……
スオメタルの心の波動に反応し、呆気なく開いたのである。
開いた扉の向こうは、ダンとスオメタルの想定を遥かに超えていた。
旧き魔法帝国ガルドルドの遺産、広大な地下都市が目の前に広がっていたのだ。
襲いかかる魔道具、守護者達を排除しながら……
ダンとスオメタルは地下都市を探索した。
残念ながら、結局、最大目標たる『スオメタルの真の身体』は発見出来なかった。
だが、収穫は多かった。
ダンとスオメタルは数多のいろいろな『お宝』を得る事が出来たのである。
最大の発見は、未使用らしきスオメタルと同型の少女自動人形である。
整備に時間がかかるだろうし、使い道は模索して行く事となるだろう。
さてさて!
探索を終了した後、ダンとスオメタルは内部に魔法水晶の視点を設置した。
設置後、凍らせた守護者達を解凍し、遺跡から脱出した。
そして開けた入り口を再び魔法で施錠。
念の為、入り口周囲を含め外部にも、防犯対策としていくつも視点を設置したのである。
「もしもの時は、この遺跡を避難場所にする」という方針を決め、
万全の後始末をしてから……ダンとスオメタルは帰還した。
帰りは転移魔法で一気に自宅の城まで跳んだから、行く時より帰る時の方がずっとずっ~と楽であった。
自宅に帰ってひと息ついたダンとスオメタルは、
タバサとスパルトイリーダーを呼び出し、打合せをする事にした。
まずはタバサを呼ぶ。
『マスター、スオメタル様、おっ帰りなさ~い!』
大広間に現れたタバサは悩んでいた事が嘘のように元気であり、はつらつとしていた。
新たに得た仕事、そして魔法の勉強が順調なのに違いない。
『おう、ただいま。良く留守番をしてくれた』
『今、帰還したでございます、ご苦労様でございます』
『は~い! 留守の間は、このタバサが宰相としてばっちり仕切っておきました。まっかせなさ~い』
『いやいや、自称宰相の名の下にお前は一体何をやった』
『おしっこ事件等々、悪事の数々、不安しかないでございます』
『ひっど~い。新生タバサは以前とはひと味もふた味も違うのですよぉ!』
『新生って、もうお前は死んでるだろが』
『師として、敢えて申し上げましょう。不肖の弟子が偉そうに言うほど、進歩の跡は見られないでございます』
『ひっど~い! ひっど~い! 新たに生まれ変わったような気持ちの進歩ですってばぁ!』
いつものタバサが戻っていた。
相変わらずなところはあるが、タバサの場合は元気と明るさが一番。
全ての失敗、欠点をもすっきりと払拭してくれるだろう。
『じゃあここからが本題だ』
『話は核心へ入るでございます』
『本題? 核心?』
『おう! 大収穫だ。遺跡には魔法工学研究所があった。いっぱい資料や機材を持ち帰った。タバサ、お前にも整理を手伝って貰うぞ』
『ゲットしたモノがた~くさんあるでございますよ。魔法使いにはわくわくするものばかりでございます』
『わぁお! 水属性の魔法習得に、農業全般、今度は魔法工学かあ! いっそがしくなりそうですね~! 大変だあ!!』
そう言いながら、タバサの顔は輝いていた。
超が付くくらい、やる気満々である。
『よし、後で打合せだ』
『頼りにするから、頑張るでございますよ』
『わっかりましたぁ!! ガンガン頼ってくださいよ~!』
空中で一回転し、びっと晴れやかな笑顔で敬礼。
なんやかんやと、ダンとスオメタルにいじられながらも……
やはりタバサは、著しく成長していたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
タバサが嬉々として去り、次に呼ばれたのはスパルトイリーダーである。
『マスター、スオメタル様、遠征お疲れ様です』
『おう、ただいま。良く留守番をしてくれた』
『今、帰還したでございます、ご苦労様でございます』
タバサに対しての労いと同じ言葉をかけた後、真の宰相? スパルトイリーダーからは報告を入れて貰う。
『マスター、そしてスオメタル様。今のところは万事順調です』
『万事順調か』
『全てがノープロブレムでございますね』
『はい! オーガ族、人狼族を張り合うようにライバル設定にしたマスターの作戦は大成功ですね』
『そんなに上手く行ったか』
『ばっちりでございますか』
『はい、まずオーガ族ですが、彼等の働きにより、いくつもの獣道が拡張、整地。石畳こそありませんが、立派な道路となりました。農業の方も城の農地の100倍の農地が開拓されました。タバサ殿の努力もあり、灌漑も万全です』
『お~、それは凄い』
『スパルトイリーダーの指導の賜物でございます』
『いえいえ、私の指導など……次に人狼族ですが、活動範囲がぐんと広がりました。彼等は毎日領内のパトロールと狩猟に精を出しております。もう少ししたら、別の役目も考えようと思います。近々ご相談したいと思います』
『うん、俺もいろいろ考えよう』
『適材適所……更に前向きな進歩。文句なしでございますね』
『それで、我々スパルトイからお願いが』
『何だい?』
『遠慮なく言うでございます』
『近々、また食糧確保と息抜きを兼ねて釣りに行きたいかと。つきましては、また新たな疑似餌のスプーン開発、未知たる釣り場の開拓等をご相談したいのですが』
『おお、お前達も前向きだな。趣味と実益を兼ねた素晴らしい提案だ』
『楽しみながら、しっかりと実も取る。とても素敵でございます』
『で、ではご了解頂けると』
『当たり前だ! 新しいスプーンをたくさん作って、未知の釣り場で、未知の魚を釣ろうぜ』
『今度は、絶対にスオメタルも同行するでございます』
『あ、ありがとうございます!』
全てが順調なダンとスオメタルの辺境開拓。
しかし……
以前ダンが懸念したように、
ある陰謀の影がじわりと忍び寄っていたのである。
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