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第39話「魔法帝国研究所①」

 タバサが感極まり号泣してから数日後……

 ダンとスオメタルは飛翔魔法を発動、魔境の遥か上空を飛んでいる。


 今日も天気は快晴。

 雲ひとつない。

 吹く風もさわやかである。


 情報屋の妖精猫ジャンから、

 「ガルドルドの研究所らしき遺跡が見つかった」という報告を受けてから、

 しばしの時間が経過していた。


 やっと時間の折り合いが付き、目的の遺跡へ向かっているのだ。

 スオメタルの真の身体を所在を求め、城の留守をタバサとスパルトイリーダーに託して……


 ジャンが教えてくれた、気になる研究所遺跡の場所とは……

 何と魔境内である。


 とはいっても、この魔境自体がやたらに広い。

 先述したが、広大なこの大陸の1/4を占めている。


 研究所遺跡がある場所は、ダン達が居住している城からは、

 西方へざっと2,000Km以上 離れていた。


 このような遠距離移動の場合、比較的安全な最寄りの場所まで転移魔法で跳び、更に飛翔魔法で『現場』へと向かう。


 初見の場所は、転移魔法では誤差が生じてピンポイントに跳ぶのは困難である。

 また、いきなり現場へ入ると状況が読めず、敵襲等のリスクもある。

 未知の場所なら尚更であり、魔境ともなれば危険度が著しく増す。


 かといって、まともに自宅の城から飛翔しては移動時間が膨大となってしまう。

 転移魔法で時間を節約、少し離れた場所の上空からリスク回避の為、徐々に接近。

 用心深く偵察しながらと現場へ入る。

 それが、いろいろ考えた末のダンのやり方である。


『すまない、だいぶ遅くなっちまった』


 飛翔しながら、ダンが詫びた。

 言葉が足りなくともスオメタルには、すぐ分かる。

 情報取得から間を置かず、速攻で遺跡に向かえなかった事を謝っているのだ。


 手がかりさえあれば、スオメタルは自分ひとりだけでも、

 すぐに身体を探したい。

 そう、考えているはずだと、ダンは認識している。


 正直……

 スオメタルも、ダンの認識通りの気持ちだ。

 少しでも早く、生身の人間に戻り、ダンと結ばれる。

 彼の子を産みたいと切に願っている。


 しかしふたりは、新たな生活を確立させる為、結構な時間を費やさねばならなかった。

 早く遺跡へ行って探索したい。

 忸怩たる思いを持つスオメタルの為に、ダンは気晴らしとして、

 いろいろな料理を振る舞ってくれた。

 素敵な野外デートをしてくれた。

 

 そんなダンの思い遣りを良く分かっている。

 だから、スオメタルはけして無理を言わない。

 勝手な行動はとらないのだ。


『いえいえ、マスター! マスターが勇者やめてから、いろいろありましたでございますから』


『だな! 追放され、あの城に住み始めてから、本当にいろいろあった』


 ふたりの言う通りである。

 本当にいろいろあった。


 ふたりを取り巻く環境は、住み始めた頃よりも、劇的に変わった。

 一番変わったのが、生活を支え合う仲間が増えた事だ。


 仲間に『元人間』は居る。

 しかし純粋な人間は皆無だ。

 魔族と不死者アンデッドである。

 

 仲間となった経緯と理由は『押しかけ』が多かった。


 いろいろわけあって、臣従を願う者。

 連れて行って欲しいと望んだ者。


 気が付けば大所帯となっていた。

 たったふたりだけで暮らしていた頃とは全く違う。

 朝から晩まで、とてもにぎやかである。


『スオメタルとふたりきりで、のんびり静かに暮らそうと思っていたのに、すまんな』


『いえいえ、マスター。楽しいでございます。それに魔族や不死者とはいえ、皆、善良でございます』


『その典型がスパルトイリーダーだな』


『はい、仲間のまとめ役になってくれてるでございます。誠実なのは勿論、博識で強く、いろいろ任せて安心でございます』


『だな! 人狼族もオーガ族も、今やスパルトイリーダー達をリスペクトしてるぞ』


『はい! 適材適所の方針に納得したようだし、熱心に指導を受けているでございます。それとタバサも、凄く張り切っているでございますよ』


『おう! あいつは魔法に農業に、全てを学び習得しようと、気合が入ってる』


『マスターが仰る通り、以前とは全然違うでございます。私との勉強の際も、魔法の質問いっぱいして来るでございます。早く水の魔法を完璧に使いこなしたいと気合に満ちあふれているでございます』


『おお、凄いな』


『はい、マスターが執り成して、仲直りしたスパルトイリーダーも、タバサの質問攻めで困ってると、笑っておりましたゆえ』


『良かった! 一人前の魔法使いを目指すリスタートのきっかけになったな』


『はい、彼女のターニングポイントになったでございますね』


『おう! それとあいつは亡霊。味わい食べるという楽しみがない。人生の張り合いを欲していただろうから』


『人生の張り合い! まさにその通りでございます。スオメタルもマスターに食事機能付けて貰う前は、タバサと全く一緒でございましたゆえ』


『ああ、だから食べる楽しみの代わりに、美味しい野菜や美しい花を育てる楽しみを、そして俺達の生活基盤を支えているという励みが、あいつにあればと思ったんだ』


『生きがいというのも、タバサは死んでいるからおかしな物言いでございますが、彼女には必要だったでございます』


 やはりスオメタルはダンの気持ちを、

 そして邪険にしながらもタバサの悩みを見抜いていた。

 

 それが、ダンにはとても嬉しい。


『うん、良かったよ。いろいろ上手くいってさ』


『はい、バッチリでございます。マスターのそういう優しいところが……スオメタルは大好きでございます。帰ったら今夜も私を抱っこしてくださいませませ~』


『了解! 俺だって、お前には癒される。思い切り甘えさせて貰うよ』


『御意でございます! 大いに甘えてくださいませませ!』


『おっと! もう遺跡の上空だ。気を付けながら、降りようか』


『はい、スオメタルの身体が見つかれば万々歳でございますが、あまり期待を持ち過ぎないよう、探索致しましょう』


『うん、入れ込み過ぎると、見つからなかった場合のショックが大きいからな』


『はい、成果があがらなかった場合、気持ちの反動が大きいでございます。……スオメタルは今のままでも、充分幸せでございますから』


『ああ、だがしっかりベストを尽くすよ』


『御意でございます!』


 ふたりは笑顔で頷き合うと、眼下に広がる大森林へ……

 目的の古代遺跡から少し離れた場所へとゆっくりと降りて行った。

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