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第31話「ど~してこうなったかな?」

 古城の依頼完遂から、1週間後の午前……

 魔境『ダンの自宅』


『ううむ。ど~してこうなったかな?』


『いろいろ原因はあると思いますが、マスターと私の判断によるところが大きいございますね』


 ダンとスオメタル、ふたりは外のベンチに腰掛けている。


 あれからダンはギルドへ依頼の完遂報告を行った。

 ギルドからすぐ連絡が行き……

 時は金なりとばかりに、翌日、すぐキングスレー商会の、

 不動産部門担当者が確認に行った。


 担当者数名がおっかなびっくりで入ったところ、

 城内はしんと静まり返っていた。

 くだんのスケルトン……スパルトイも、亡霊の出現も皆無であった。


 大いに満足した担当者は速攻でギルドへ報告。

 ダンとスオメタルへは今後も宜しくという意味合いで、

 200枚割増しの報奨金、金貨1,000枚が支払われたのである。


 しかしその依頼完遂には、大きな代償があった。

 連れて行ってくれとせがまれ、お持ち帰りした不死者アンデッド達が、

 居候として魔境のダン宅、城内に住み着いたのである。


 という事で……


 ベンチに座った、ダンとスオメタルの視線の先には、

 先日開いたばかりの畑があり、結構な数の者が忙しそうに立ち働いていた。


 しかし違和感がある。

 立ち働いているのは人間ではなかった。


 何と!

 骸骨である。

 そう、付き従った不死身のスパルトイ達がまめまめしく畑仕事をしているのだ。

 

 立ち働くスパルトイ達は、意外にも!

 畑仕事に手慣れていた。


 彼等の前世は半農半士だったらしい。

 

 ちなみに半農半士とは……通常は農村等に居住、農林業に励み、

 緊急時には出動体制をとる戦士の事だ。

 

 それにしても骸骨の農夫とは……

 他者が見たら「何という、シュールな光景だ」と言われそうではある。


 やがて、その内のひとりがぎくしゃくしながらも、

 素早い動きでダンとスオメタルの下へ歩み寄って来た。

 

 このスパルトイが恭順の意思を示した、

 彼等のまとめ役スパルトイリーダーである。

 

 ダンへ向かい、「びっ!」と敬礼をする。


『マスター、畑の整地と草むしり、そろそろ終わります』


『ごくろ~さん、じゃあ休んで良いよ』


『いえ、私達スパルトイは疲れないので休みは不要です。 何か仕事を申し付けてください』


 と、そこへ……

 黒ゴスロリメイド服姿の亡霊少女がひとり、びゅっと飛んで来た。


 亡霊少女はダンとスオメタルが座るベンチの背後に浮かんでいる。

 こちらは……

 ほぼ無理やりついて来たタバサであった。


『ね~ね~、ダーン様ぁ。宿舎の部屋でまったりするのも飽きちゃったぁ。魔導書読むのも昼寝するのもぜ~んぶ飽きちゃったよぉ~~、何とかして~! 暇だったら相手してよ、ね~~!』


 超が付く怠惰なセリフにむかついたのか……

 スパルトイリーダーが「がちゃっ」と骨を鳴らし、

 タバサを威嚇する。


『こら!』


『わう、びっくりした、いきなり脅かさないでよぉ、骨吉ぃ!』


『何が骨吉だ! 無礼者!』


 スパルトイリーダーはタバサを睨むと、ダンとスオメタルに向き直る。


『マスター、スオメタル様、こ~いう役立たずの性悪ゴーストは我々の敵です。すぐに解雇すべきだと思います』


 対して、タバサも負けていない。


『何だとぉ、肉体労働しか能がない骨野郎。あ、笑っちゃう~。骨だけでぇ、肝心の肉体がね~でやんの』


『黙れ、クソ怠け者!』


『うるせ~、馬鹿ワーカホリック!』


 骸骨と亡霊の、不毛な争いが激化して来た。

 なのでダンとスオメタルはふたりを分断する。


 ダンはスパルトイリーダーへ告げる。


『ほらほら君達はあの荒れ地を整地して、そこでストレス発散に武道訓練でもして来なさい』


『了解致しました、マスター』


 そしてスオメタルはタバサをなだめる。


『タバサには午後、魔法を教授するでございますから、予習として部屋で魔導書読むでございます』


『ホント? イエッサーです、スオメタル様』


 結果、スパルトイリーダーは仲間達と荒れ地の整地を始めた。

 一方、タバサの姿はあっという間に消えていた。

 自分の部屋へ戻ったらしい。


『困ったもんだ』

『でも居候達も、適性と立ち位置が見えて来たでございますよ』


『だな! まあ俺とスオメタルのふたりだけだったから、町の住人が増えたと思えば良いか』

『御意でございます』


『という事で、昼メシにしようか』

『御意でございま~す』


 ダンとスオメタルは顔を見合わせ、苦笑すると……

 仲睦まじく、『本館』の城へ歩いて行った。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ランチ後……


 ダンとスオメタルは別行動を取る事にした。


 スオメタルは半人前のタバサへ魔法の教授を、

 そしてダンはスパルトイ達を連れ、外出したのである。

 ダンと一行を傍から見れば、スケルトンを従える死霊術師と見えなくもない。


 大自然に満ち溢れた景色を見て、スパルトイリーダーが話しかけて来る。


『成る程、魔境と呼ばれるこの地のこの辺りは、マスターのお持ちになる広大な領土なのですね』


『いや、違うって。元々魔境は魔王デスヘルガイザーの領土だった。奴が死んだので今は空白地帯。なので俺が隠遁してるんだ』


『何と、隠遁とは! 俗世間を逃れ、隠れ住む事ではありませんか。魔王を倒した偉大なるマスターが何故こそこそと』


『いや、こそこそってわけじゃないけど、勇者ってのもいろいろ面倒でな』


『勇者が面倒……何となく分かります』


『サンキュ! 理解して貰えて何よりさ。だから、のんびり暮らしてスローライフな人生を全うしたいと思った。すっぱり引退して、ここへ移り住んだんだ』 


 ダンの言葉に反応したのは、別のスパルトイであった。


『リーダー、私にはマスターの仰っている事が分かります。過酷でもあるこの大自然に抱かれ、わずらわしい社会と離れ、悠々自適に暮らす』


『そうそう、わずらわしい社会は、もうノーサンキューさ』


『はい、必要がある時だけ、街へ出る。……えせニートの引きこもり、いえ、良き暮らしではありませんか。マスターには素敵な想い人もいらっしゃるし』


 不死者アンデッドのスパルトイとは思えない、人間の如き共感ビーム。

 ダンは思わず感嘆する。


『おお、それそれ! 途中何か、微妙な表現があったけど、基本的には良い事言うじゃないか』


 そんなこんなで、ダンとスパルトイ達は談笑しながら、いろいろと探索し、

 遂に湖まで来た。

 相変わらず風光明媚である。


 スパルトイリーダーは景色を称賛する。

 こちらも人間のように反応していた。


『おお、マスター。ここは素晴らしい場所ですな』


『おお、お前達には、この自然の美しさが分かるのか!』


『はい!』 


『よっし、今日はお前達に、この場所で人生の楽しみを与えたいと思ってさ』


『人生の楽しみ? この場所で、ですか?』


『いえす! この湖で、だ。その為にお前達を連れて来た』


 聞き直すスパルトイリーダーに対し、ダンは穏やかに微笑んだのである。

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