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ゲ・オリジン  作者: しろ組


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一三、窓際の攻防戦

一三、窓際の攻防戦


「ここから先へは、行かせませんよ!」と、源庵は、睨みを利かせながら、丸顔の男の後から来た男達を見据えて居た。少しでも、時を稼いでおきたいからだ。

「へ、俺らも、覚悟を決めるしか無いようだぜ」と、無精髭の男も、身構えた。

「そうだな。ゲオ様との約束は、守れないかも知れないが、意地は見せておかねぇとな」と、丸顔の男も、反転して、戦闘態勢を取った。

「テン・ネーンさん。こいつら、やる気満々ですよ」と、小柄で、自前の(うろこ)状の金属の(メイル)を着た男が、口元を綻ばせながら、口にした。

ひょほひゃは(そうだな)」と、テン・ネーンも、頷いた。

「早く、こいつらを片付けないと、誘拐犯共に、逃げられちまいますぜ!」と、右側の鉄の輪で編まれた帷子(メイル)蜥蜴戦士(リザードマン)も、進言した。

「うむ」と、テン・ネーンが、相槌を打った。

「皆さん。ここだけは、何としてでも、死守しましょう! とにかく、馬車が、発車すれば、我々の勝ちですのでね!」と、源庵は、告げた。発車まで足止めをする事が出来れば、最低限の条件は、達成だからだ。

「そうだな。それくらいの事はしないとな」と、丸顔の男も、同意した。

「そりゃそうだ」と、無精髭の男も、賛同した。

「俺達、かなり、なめられているみたいだな」と、鱗鎧(スケイル・メイル)の男が、不快感を露わにした。

「確かにな」と、蜥蜴戦士も、同調した。

「まあ、タケ・ババ傭兵(ようへい)団の実力を知らないから、こんな口を利けるんだと思うぜ」と、鱗鎧の男が、勿体振った。

「おい? タケ・ババって、知っているか?」と、丸顔の男が、無精髭の男に、問うた。

「う〜ん。初めて聞く名だな…」と、無精髭の男が、頭を振った。

「ライランスでは、ちょっとした有名な傭兵団だがな」と、鱗鎧の男が、不満顔をした。

「なるほどな。聞かない名だぜ」と、丸顔の男が、納得した。

「名前を売り出したいが為に、こんな奴らと手を組んだって事か…」と、無精髭の男が、溜め息を吐いた。

「御二方、あまり相手をなめてはいけませんよ」と、源庵は、忠告した。何にせよ、気を抜ける状況ではないからだ。

「おう!」と、二人が、即答した。

「テン・ネーンさん。さっさと、こいつらを()っちゃいましょうよ!」と、鱗鎧の男が、提言した。

「後ろの連中も、路地の方へ行くように、号令を!」と、蜥蜴戦士も、要請した。

ひょうひ(ようし)!」と、テン・ネーンが、応じた。その直後、振り返り、「ふひゃ(うら)へ、ひゃふぁへ(まわれ)!」と、叫んだ。

「くっ! 拙者らでは、どうにも出来ないでござる…」と、源庵は、歯嚙みした。後続の足止めをする事は、不可能だからだ。

「くくく…。形成逆転だな」と、

鱗鎧の男が、含み笑いをした。

「確かに」と、蜥蜴戦士も、にこやかに頷いた。

「どうだ? そこを通してくれれば、命だけは、助けてやっても良いぜ」と、鱗鎧の男が、提案した。

「ケッ! どうせ、口だけに決まってらあ!」と、無精髭の男が、悪態をついた。

「そうだな。モリータの手先みたいな奴の言う事なんて、信じられるかっ!」と、丸顔の男も、吐き捨てるように、口走った。

「拙者も、自分だけが助かろうとは、思ってないでござる。なので、出来ない相談でござるな」と、源庵も、毅然(きぜん)とした態度で、拒んだ。姫を裏切るなど、(もっ)ての(ほか)だからだ。

「どうやら、痛い目に遭わないと、分からない連中のようだぜ」と、鱗鎧の男が、嘲笑した。

「そうみたいだな。特に、丸顔と無精髭の奴らは、震えて居るみたいだしよ!」と、蜥蜴戦士が、見透かすように、見解を述べた。

「へ、確かに、俺らは、素人だぜ。けどなあ、足止めくらいにはなってやれるぜ!」と、丸顔の男が、啖呵を切った。

「そ、そうだぜ! 戦場の経験は無くても、人生経験は、それなりに有るぜ!」と、無精髭の男も、から元気で、答えた。

「確かに、人生経験は、有るみたいだな。俺らよりも、()けているからな」と、鱗鎧の男が、上から目線で、皮肉った。

「くぅ〜! 舐めやがってぇ!」と、無精髭の男が、地団駄を踏んだ。

「おっさん、大人しく通しなよ。無理をしたって、結果が、見えているんだからよ」と、鱗鎧の男が、勧告した。

「はい、そうですかって、素直に通させられる訳無いだろうがっ! 俺らにだって、意地が有るからよっ!」と、丸顔の男が、怒鳴った。

 その間に、源庵は、外の様子を一瞥した。その刹那、ゲオ達が、馬車へ到達したのを視認した。そして、「お二方。ここは、通してあげませんか?」と、提言した。今から通らせても、馬車へ乗り込むのは、難しいからだ。

「お、ようやく、その気になったか!」と、鱗鎧の経験はが、口元を綻ばせた。

「お、おい! 先刻(さっき)の言葉は、嘘かよ!」と、丸顔の男が、信じられない面持ちで、口にした。

「そうだぜ! これからって時によっ!」と、無精髭の男も、口を尖らせた。

「文句なら、後で、幾らでも聞きますので、この場は、拙者の言葉に、従って下され」と、源庵は、頭を下げた。この場を無傷で切り抜けるには、この方法が、最適だと判断したからだ。

ひゃっひゃほひへっ(はやくおえ)!」と、テン・ネーンが、急かした。

「ほら、退()けよ!」と、鱗鎧の男が、丸顔の男を左腕で、押し退()けた。

「うわっ!」と、丸顔の男が、よろけた。

 少し後れて、蜥蜴戦士も、続いた。

 源庵も、右へ避けるなり、「まだ、間に合うと思いますが…」と、神妙な態度で、告げた。協力をする振りをしておけば、この場を無事に切り抜けられると考えたからだ。

「げ! あいつら、もう、あんな所に!」と、鱗鎧の男が、語気を荒らげた。

「俺の足でも、ぎりぎりだぜ…」と、蜥蜴戦士も、ぼやいた。

「とにかく、追うぞ!」と、鱗鎧の男が、口にした。

「おう!」と、蜥蜴戦士も、即答した。

 程無くして、二人が、小窓を潜り抜けて行った。

 その刹那、源庵は、小窓の鎧戸を閉じた。そして、間髪容れずに、(かんぬき)をした。三対一ならば、何とかなるだろうからだ。

「なるほどな」と、丸顔の男が、含み笑いをした。

「形勢逆転だな」と、無精髭の男も、満面の笑みを浮かべた。

()ほひゃへひゃ(おまえら)…」と、テン・ネーンが、恐れおののいた。

「おいおい。先刻の威勢は、どうしたんだい?」と、丸顔の男が、凄んだ。

 次の瞬間、テン・ネーンが、反転するなり、駆け出した。

 少し後れて、「待ちやがれ!」と、丸顔の男と無精髭の男が、追い掛けた。

「二人共、まだ、他にも居ますのにねぇ」と、源庵は、溜め息を吐いた。人数は、判らないが、何人かは、居残って居る可能性も、踏まえておくべきだからだ。

 少しして、「おい! お前だけか?」と、元役人の大男の声が、聞こえて来た。

ひょほひふほほ(ほかのやつら)は?」と、テン・ネーンの戸惑う声がして来た。

「何を言っているのか判らないから、聞いても無駄だな」と、ゲラーナのぼやきが、聞こえた。

 少し後れて、「二人共、早かったな」と、無精髭の男が、あっけらかんと口にした。

「何だか知らんが、表の連中は、慌てて、別の所へ行っちまったぞ」と、元役人の大男が、淡々と返答した。

ひゃんひゃっへ(なんだって)!」と、テン・ネーンが、素っ頓狂な声を発した。そして、「ふほほ(ほかの)ふふ(やつ)はっ!」と、怒鳴った。

「何を言って居るのか、さっぱりだが、俺らが、ここに居るという事は、モリータ達は、居ないって事なんだぜ」と、ゲラーナが、理由を告げた。

 その間に、源庵も、合流するなり、「じゃあ、一先ず、安泰という事ですね?」と、訪ねた。しばらくは、戻って来なさそうな物言いだからだ。

「ああ。伝令みたいな奴の言葉を聞くなり、さっさと居なくなっちまったぜ」と、ゲラーナが、回答した。

「あんたも、こんな所で、のんびりしてちゃいけないんじゃないか?」と、元役人の大男が、半笑いで、指摘した。

「そうだぜ。ここよりも、上司の後を追った方が、良いかも知れないぜ」と、丸顔の男も、おどけながら、口添えした。

ふふひゃひ(うるさい)!」と、テン・ネーンが、怒鳴った。

「何を言っているのか、さっぱりだぜ」と、ゲラーナが、溜め息を吐いた。

「さっさと行かねぇと、今度は、鼻っ柱へ、一発、お見舞いしてやろうか?」と、元役人の大男が、威圧した。

 その瞬間、テン・ネーンが、顔面蒼白となり、頭を振った。

「早く行けよ!」と、丸顔の男が、右足で、テン・ネーンの腰へ、前蹴りを食らわせた。

 次の瞬間、テン・ネーンが、前のめりになった。そして、振り向きざまに、丸顔の男を睨み付けた。

「やるか! この野郎!」と、丸顔の男が、身構えた。

「お止めなさい! この方には、戦意は無さそうですので、このまま、行かせてあげなさい」と、源庵は、口を挟んだ。これ以上、痛め付ける意味など無いからだ。

「そうだぜ。取っ組み合いをしたところで、時間の無駄だしな」と、無精髭の男も、同調した。

「まあ、決めるのは、本人だし。やるってんだったら、相手をしてやりゃあ良いんじゃないか?」と、ゲラーナも、意見を述べた。

「そりゃ、そうだ」と、丸顔の男も、頷いた。そして、「で、やるのか? やらねえのか? どっちか、決めろよ!」と、促した。

 その直後、テン・ネーンが、立ち上がり、一目散に、裏口の方へ、駆け出した。そして、瞬く間に、逃げ去った。

 少しして、「おいおい。あんまり、調子に乗ってんじゃねぇぜ」と、無精髭の男が、冴えない表情で、口にした。

「へへへ…。つい…」と、丸顔の男が、苦笑した。

「喧嘩慣れしていないのバレバレだったぜ」と、元役人の大男が、告げた。

「そうだぜ。膝が、震えて居たもんな」と、ゲラーナも、補足した。

「へへ、バレたか…」と、丸顔の男が、苦笑した。

テン・ネーン(あいつ)が、掛かって来たら、どうするつもりだったんだ?」と、元役人の大男が、問うた。

「やってたかもな…」と、丸顔の男が、神妙に返答した。そして、「まあ、負ける気がしなかったしな…」と、言葉を続けた。

「おいおい。大口をたたくのも、大概(たいがい)にしとけよな」と、無精髭の男が、溜め息を吐いた。

「で、ゲオさん達は、どうなったんだ?」と、元役人の大男が、尋ねた。

「恐らく、逃げる事が出来たと思います…」と、源庵は、憶測を述べた。確認はしていないが、ぎりぎり逃げられたと思っているからだ。

「ちょっと、あやふやだなぁ~」と、ゲラーナが、指摘した。

「そうだな」と、元役人の大男も、相槌を打った。

「じゃあ、確認に行ったら、いいんじゃないのか?」と、丸顔の男が、提言した。

「確かに、旨く行ったかどうか、確認しておいた方が、間違いは無いだろう」と、元役人の大男も、賛同した。

「ついでに、残りの連中も、追っ払えて、一挙両得ってところだな」と、無精髭の男が、にこやかに、口にした。

「そうですね。私も、はっきりさせておきたいですからね」と、源庵も、意見を述べた。不安要素は、取り除いておきたいからだ。

「そうと決まれば、急ごうぜ」と、ゲラーナが、踵を返した。

 少し後れて、元役人の大男も、続いた。

「でも、わざわざ、現場まで行かなくても、小窓から覗いたら、良いんじゃないのか?」と、丸顔の男が、口にした。

「確かに、その方が、手っ取り早いな」と、無精髭の男も、同調した。

「いいえ。それは、止めた方が宜しいかと…」と、源庵は、頭を振った。そして、「先程の傭兵達を招き入れる事になりますよ」と、言葉を続けた。せっかく、閉め出した者達を呼び戻すような事は、したくないからだ。

「た、確かに…」と、二人が、声を揃えた。

「まあ、急がば回れって事ですよ」と、源庵は、淡々と言った。無理に、危険を(おか)してまで急ぐよりも、時間が掛かっても、安全に行った方が、確実だからだ。

「それも、そうだな。ゲオ様達の事は気になるが、ここは、無難な方を選んだ方が、賢明だな」と、丸顔の男も、理解を示した。

「言えてるな」と、無精髭の男も、相槌を打った。

「さあ、行きましょう。皆が、無事に、逃げて居ると信じて!」と、源庵は、意気揚々に、歩き始めた。

 少し後れて、二人も、続いた。

 やがて、三人は、裏口から路地裏へ出た。そして、足早に、歩を進めた。しばらくして、裏通りへ出るなり、右を向いた。すると、数歩先で、元役人の大男達とタケ・ババ団の二人組が、対峙して居た。

「お二人さん、どうするんだい?」と、ゲラーナが、問い掛けた。

「見たところ、テン・ネーン達に、置いてきぼりにされちまったみたいだねぇ」と、元役人の大男も、口添えした。

「どうするんだい? どうせ、俺達と一戦交えても、一アルスの特にもならないぜ」と、ゲラーナが、口にした。

「逆に、治療費の方が、高く付くくらいだぜ」と、元役人の大男も、補足した。

「確かに、テン・ネーンが居ないんじゃあ、あんたらと戦っても、タダ働きにしかならんな」と、鱗鎧の男が、溜め息を吐いた。

「まあ、あんたらも、どうせ、大人しく捕まる気なんて、無いだろうけどな」と、蜥蜴戦士も、口を挟んだ。

「確かにな」と、ゲラーナも!頷いた。そして「あいつらには、どう報告するつもりだ?」と、尋ねた。

「そうだな。最低限の報酬だけ貰って、別の雇い主に、売り込むつもりだ」と、鱗鎧の男が、考えを述べた。

「果たして、モリータが、報酬を支払うだろうか…?」と、元役人の大男が、ぼやいた。

「そりゃあ、どういう意味だ?」と、鱗鎧の男が、問い返した。そして、「まるで、あいつらの事を知っているような口振りだな」と、言葉を続けた。

「知っているも何も、本日付けで、辞めたばかりだからな」と、元役人の大男が、にこやかに、回答した。

「ほう。詳しく話を聞かせてくれないか?」と、鱗鎧の男が、興味を示した。

 元役人の大男が、経緯を語り始めた。

 その間に、源庵達も、到着した。

 しばらくして、「なるほど。あの馬車の中に、モリータの弱味を握っている奴が居たから、テン・ネーンを焚き付けて、俺らを雇った訳か…」と、鱗鎧の男が、理解を示した。

「どうも、気に入らないと思ったら、そういう事だったんだな」と、蜥蜴戦士も、納得した。

「それでも、俺らと戦うか?」元役人の大男が、質問した。

「へ、決まってらあ!」と、鱗鎧の男が、力強く返答した。そして、「俺は、この仕事は、降りるぜ」と、告げた。

「そうだな。俺らは、始末屋じゃない。この仕事は、失敗して、正解だったって事だな」と、蜥蜴戦士も、同意した。

「確かに、大なり小なり、戦の助っ人はしても、悪事の真似をするなんて、自尊心(プライド)が、許さないからな」と、鱗鎧の男も、頷いた。

「で、モリータの奴、幾ら出すって、言ってた?」と、元役人の大男が、興味津々に、尋ねた。

「アルス金貨を一〇枚とか言ってたぜ」と、鱗鎧の男が、回答した。

「安いな」と、元役人の大男が、口にした。

「そりゃあ、どういう意味だ?」と、鱗鎧の男が、訝しがった。

「う〜ん。旨く言えないが、役人以外の者を雇うとなると、アルス金貨二〇枚を、役所が、支給する筈なんだがな」と、元役人の大男が、説明した。

「あの野郎、俺らの報酬まで、ちょろまかしていたって事かっ!」と、蜥蜴戦士が、語気を荒らげた。

「ひょっとすると、金を渡した後で、()すつもりなのかもな」と、元役人の大男が、しれっと言った。

「有り得るな」と、ゲラーナも、口添えした。

「まあ、ゲオ様に、罪をなすり付けようとした奴だから、やばいかもな」と、丸顔の男も、口を挟んだ。

「なるほど。まあ、俺達の稼業にも、そんな奴は、ざらに居るしな」と、鱗鎧の男も、理解を示した。そして、「ならば、返り討ちにしてやるまでさ」と、言葉を続けた。

「止めとけ。理由は、何にせよ、この街で、役人に手を出した時点で、牢屋へ放り込まれるぜ」と、元役人の大男が、忠告した。

「くっ…! 性質(たち)のわるい!」と、鱗鎧の男が、顔を顰めた。

「確かに…」と、蜥蜴戦士も、相槌を打った。

「この件は、割に合わんから、手を引いて、街を出る事を、お勧めするぜ」と、ゲラーナが、助言をした。

「そうも行かないんだよなぁ〜」と、鱗鎧の男が、眉根を寄せた。

「そうそう」と、蜥蜴戦士も、頷いた。

「そうか。まあ、あんたらの自由だし、これ以上、俺らが、口出しする事でもないからな」と、ゲラーナが、あっけらかんと言った。そして、「そこの酒場の女主人のティーサを頼ると良い。案外、用事が、早く済むかも知れないぜ」と、提言した。

「そうするか?」と、蜥蜴戦士が、左隣りの鱗鎧の男を見やった。

「そうだな。まあ、最後の手段として、考えておくか…」と、鱗鎧の男が、聞き入れた。そして、「モリータの行き先は、知っているか?」と、問うた。

「いや。耳打ちされた後、慌てて、何処かへ向かったみたいだが…」と、元役人の大男が、冴えない表情で、返答した。

「余程、優先しなきゃあならない事案だったんだろうぜ」と、ゲラーナも、補足した。そして、「あいつの背後(バック)には、何者が居るか、判るか?」と、質問した。

「う〜ん。俺には、見当が付かないな。現場は、ここだけだし、他の事は…」と、鱗鎧の男が、眉間に皺を寄せた。

「着いて、すぐに(つの)った仕事だから、あいつらの事なんて、碌に知らないぜ」と、蜥蜴戦士も、口添えした。

「そうか。モリータの背後の奴さえ判れば、もう少し、手を打てるかと思ったんだがな…」と、元役人の大男が、溜め息を吐いた。

「今の俺達には、それを確かめ時間が無いしな」と、ゲラーナも、淡々とぼやいた。

「どうしてだ? 悪い事をしていなければ、街を出て行く必要も無いだろう?」と、鱗鎧の男が、指摘した。

「金品をちょろまかす奴とまともに、(おおやけ)の場で、やり合えると思うか?」と、丸顔の男が、口を挟んだ。

「そうだぜ。どうせ、正直に出たところで、俺らは、罪人扱いにされるのが、オチだぜ」と、無精髭の男も、付け足した。

「まあ、モリータやテン・ネーンは、役人の立場を悪用して、都合の悪い事を、全部、なすり付けるんじゃないのか?」と、

元役人の大男が、憶測を述べた。

「そうだな。ゲオ(おっさん)を亡き者にしようとしていたくらいだからな」と、ゲラーナも、同調した。

「なるほどな。だったら、俺らが、モリータ達の背後に居る奴を調べても良いぜ」と、鱗鎧の男が、申し出た。

「おいおい。無茶は、駄目だぜ」と、元役人の大男が、頭を振った。

「俺らだって、このままじゃあ、腹の虫が治まらない。ちょろまかされて、黙って居る訳にはいかないしな」と、鱗鎧の男が、口にした。

「そうだな。それに、俺らは、まだ、モリータ達に、目を付けられて居ないから、この街では、自由に歩き回れるからな」と、蜥蜴戦士も、強味を述べた。

「なるほど。確かに、現時点じゃあ、モリータ共は、疑って居ないだろうな」と、ゲラーナも、頷いた。

「しかし、雇うとなると、相応の報酬を用意しなければならないでしょうねぇ」と、源庵は、眉根を寄せた。無報酬(タダ)という訳にはいかないからだ。そして、「私は、この国の通貨を持ち合わせて居ませんけどね」と、言葉を続けた。

「俺も、テン・ネーンの口の中へ、突っ込んじまったからなぁ〜」と、元役人の大男も、ぼやいた。

「逃走資金のほとんどを持って行かれたから、雇う程の金は、俺らには無いな…」と、丸顔の男も、嘆息した。

「へ、そう湿気(しけ)た事を言うなって!」と、鱗鎧の男が、にこやかに言った。そして、「あいつらが、ちょろまかしている金貨一〇枚で、受けてやるよ」と、宣言した。

「しかし、モリータが、ちょろまかした金を請求したところで、まともに、払ってくれる訳が無いだろうし…」と、元役人の大男が、険しい顔をした。

「だったら、別の形で、こっちも、相応の請求をさせて貰うまでさ」と、鱗鎧の男が、含み笑いをした。

「そうだな。俺らを(たばか)った事を後悔させてやるくらいの額の金品を頂くまでさ」と、蜥蜴戦士も、同調した。

「まるで、盗賊の技量(スキル)を持っているみたいだなぁ〜」と、無精髭の男が、舌を巻いた。

「そりゃあ、色々と技量の要る場面が、在るからな」と、鱗鎧の男が、ドヤ顔で、回答した。

「こいつは、手先が器用だし、簡単な錠前くらいなら、お手のもんだぜ」と、蜥蜴戦士が、補足した。

「なるほどな。そういう技量を有しているから、余裕って訳だ」と、元役人の大男も、納得した。

「まあ、自慢は出来ないがな…」と、鱗鎧の男が、自嘲した。

「確かに…」と、蜥蜴戦士以外の者達は、声を揃えた。

「まあ、技量を有していても、その使い方だよなぁ〜」と、丸顔の男が、口にした。

「確かに、そうですね。心掛け一つで、善し悪しが、決まるものですからね」と、源庵も、頷いた。身に付けた技量に、善悪は決められないからだ。

「まあ、モリータやテン・ネーンは、私利私欲で動いて居るから、間違い無く、悪だな」と、ゲラーナが、皮肉った。

「ははは! 言えてらあ!」と、元役人の大男も、同調した。

「で、あんたらは、何処へ行こうってんだ?」と、鱗鎧の男が、質問した。

「この街を出て、東へ行った先のハド村って所から、ライランス大陸へ渡るつもりだよ」と、元役人の大男が、回答した。そして、「多分、この大陸での再会は、無理だろうな」と、言葉を続けた。

「確かに、難しいだろうな。まだ、モリータ達の信用を得られていないからな」と、鱗鎧の男も、頷いた。

「ライランスだったら、ワトレ辺りで、どうだろう?」と、蜥蜴戦士が、口を挟んだ。

「どのような所でしょうか?」と、源庵は、冴えない表情で、尋ねた。目立つような場所は、あまり好ましくないからだ。

「大陸随一の商都だ」と、蜥蜴戦士が、返答した。

「なるほど。そこなら、仕事も有るだろうし、どうにかやって行けるだろうな」と、元役人の大男も、賛同した。

「ロメナズ商会ってのを頼ったら良いぜ」と、助言した。

「ロメナズ商会?」と、ゲラーナが、眉間に皺を寄せた。

「お心当たりでも、在られるのですか?」と、源庵は、問い掛けた。情報は、一つでも多い方が良いからだ。

「う〜ん。ちょっと、知り合いに、そんな名前の奴が、居たような気がしたもんでな」と、ゲラーナが、言葉を濁した。

「そうですか。一度、そこへ寄っても良いでござるな」と、源庵は、口にした。寄るだけ寄ってみてから、決めれば良いだけだからだ。

「じゃあ、いつになるかは、判らないが、連中の背後が判れば、ワトレへ行くから、それまでは、待って居てくれ」と、鱗鎧の男が、告げた。

「そうだな。ゲオさんと合流したら、そう伝えておくよ」と、元役人の大男が、承諾した。

「ああ、そうしてくれ」と、鱗鎧の男が、一任した。

「そう言えば、ゲオ殿も、ワトレの事を口にしてましたなぁ〜」と、源庵は、口を挟んだ。先刻の会話の中で、出て来ていた事を思い出したからだ。

「奇遇だなあ〜」と、丸顔の男が、感心した。

「じゃあ、話が早いな」と、元役人の大男も、頷いた。

「考える事は、皆、同じだって事だな」と、ゲラーナも、同調した。

「そうと決まりゃあ、ゲオさんの所へ行きましょうぜ」と、無精髭の男が、提言した。

「そうだな。早く追い掛けないと、置いて行かれるかも知れないしな」と、丸顔の男も、賛同した。

「しかし、ティーサさんに、挨拶くらいは、しておくべきですねになったのですから…」と、源庵は、意見を述べた。何も言わずに()つのは、些か、気が引けるからだ。

「俺が、面通しがてら、出発した事も、伝えておくぜ」と、ゲラーナが、申し出た。

「しかし…」と、源庵は、難色を示した。礼節を欠いて発つのは、失礼だからだ。

「あんたの気持ちも分かるが、今は、ゲオさんらを追い掛ける方が、先決だからな」と、元役人の大男が、言った。

「また、取り囲まれたら、次は、無いだろうぜ」と、無精髭の男も、補足した。

「そうですね。今回は、挨拶を見送らせて頂きましょうか…」と、源庵は、聞き入れた。どういう状況かは、判らないが、礼節を欠いてでも、落ち合う場所まで行った方が、最善だと察したからだ。

「俺は、独りでも何とかなるが、あんたらは、ゲオ(おっさん)天美(おじょうさん)の大事な人だ。早く行って、少しでも、安心させてやりな」と、ゲラーナが、促した。

「確かに、中吉殿だけでは、厳しいですからね」と、源庵も、頷いた。中吉だけでは、到底、不測の事態に、対処し切れるものではないからだ。

「そうだな。ゲオ様も、ミイラになって動けないしな」と、丸顔の男も、同調した。

「急いだ、急いだ。一緒に居るところを、モリータの仲間に見られると、こっちまで、ヤバくなるからよ!」と、鱗鎧の男も、急かした。

「そうだな。今は、この関係を知られるのは、不味いな」と、ゲラーナも、頷いた。

「じゃあ、俺らは、先に行かせて貰うぜ」と、元役人の大男が、聞き入れた。

「まあ、時間になっても、俺が来なかったら、行ってくれ」と、ゲラーナが、口にした。

「ああ。そうさせて貰うぜ」と、元役人の大男が、承諾した。

 間も無く、源庵達は、立ち去るのだった。

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