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ゲ・オリジン  作者: しろ組
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十二、対峙

一二、対峙(たいじ)


「さあて、そろそろ、表へ出るとするかな!」と、ゲラーナは、意気込んだ。頃合いだと思ったからだ。

「そうだな。モリータ達を()らすのも、これくらいで、良いだろう」と、元役人の大男も、口元を綻ばせた。

ゲオ(チビハゲ)も、そろそろ、部屋へ着いた頃だろうし、あいつらの相手をしてやんな!」と、ティーサが、けしかけた。

「へいへい」と、ゲラーナは、生返事をした。元より、そのつもりだからだ。

「さあて、いっちょ、揉んでやるかな!」と、元役人の大男が、左右の手の指を、交互に鳴らしながら、口にした。

 少しして、二人は、表へ出た。その直後、モリータが、得意満面の顔で、待ち構えて居るのを視認した。

「待たせたな!」と、ゲラーナは、開口一番に、告げた。なめられる訳にはいかないからだ。

「何だ? お前達だけか?」と、モリータが、余裕の笑みを浮かべながら、問うた。

「ああ、そうだ。俺らだけで、十分だからな」と、元役人の大男が、憎まれ口を叩いた。

「お前、なめた口を()いてんじゃないぞ!」と、モリータが、即座に怒鳴った。

「は? 何を言って居るんだ?」と、元役人の大男が、右手を、右の耳に当てながら、おちょくった。

「あんたこそ、これだけの人数で、俺達を止められるとでも思ってんのか?」と、ゲラーナは、尋ねた。見るからに、実戦経験が、(とぼ)しそうだからだ。

「おいおい。虚勢を張るのは、止めるんだな。やる前から、結果はでているんだからな」と、モリータが、したり顔で、言った。

「ほう。確かに、結果は、出ているみたいだな」と、ゲラーナは、不敵な笑みを浮かべた。劣勢を、ひっくり返す気満々だからだ。そして、元役人の大男ヘ、目配せした。

「そうだな」と、元役人の大男も、頷いた。

「中々、素直じゃないか…」と、モリータが、感心した。

「おいおい。何か、勘違いしているみたいだな」と、ゲラーナは、苦笑した。モリータの筋書き通りの結末にならない事だけは、確かだからだ。

「ははは。確かに、目出度(めでた)い野郎だぜ」と、元役人の大男も、嘲笑した。

「何だと! 私を虚仮にするつもりかっ!」と、モリータが、怒鳴った。

「別にぃ〜。なあ?」と、ゲラーナは、元役人の大男を一瞥した。虚仮にしていないからだ。

「ああ」と、元役人の大男も、相槌を打った。そして、「まあ、お前の思い通りに、他人は動かないって事さ」と、言葉を続けた。

「お前、上司に逆らおうってのかっ!」と、モリータが、凄んだ。

「は? 俺は、お前の私兵じゃないぜ。だから、テン・ネーン(あいつ)の口の中へ、手切れ金を入れてやっただろ?」と、元役人の大男が、頭を振った。そして、「いつまでも、上司を気取ってんじゃねぇよ!」と、補足した。

「そうだったな。お前は、上司を殴って、懲戒免職となり、その上、罪人だからな」と、モリータが、罪状を述べた。

(ついで)に、お前も、殴ってやろうかっ!」と、元役人の大男が、がなった。

「威勢の良い事だな」と、モリータが、口にした。

「上司って、ひょっとして、空気の漏れたような声を出す奴の事か?」と、ゲラーナは、尋ねた。何と無く、そんな気がしたからだ。

「ああ、そうだ」と、元役人の大男が、力強く頷いた。そして、「口の中に、治療代も入れて置いたんだがなぁ~」と、言葉を続けた。

「ははは。それなら、何の問題も、無いんじゃないのか?」と、ゲラーナは、高笑いをした。気の利いた後始末だからだ。

「おいおい。そんな嘘をついちゃあ駄目だよ。テン・ネーンの口の中には、何にも無かったぞ」と、モリータが、したり顔で、つげた。

「嘘を言っているのは、お前だろう! どうせ、テン・ネーンが、目を覚ます前に、抜き取ったんだろっ!」と、元役人の大男が、すぐさま反論した。

「そうだな。お前は、色々と悪い話しか聞かないからな」と、ゲラーナも、口添えした。モリータを信じる事など、到底、出来ないからだ。

「ふん、何とでも言うが良い。憶測で、物を言うという事は、名誉毀損だな。証拠の無い事で、私の品格を、貶めてくれたからな」と、モリータが、語った。

「やれやれ。とんだ都合の良い勘違い野郎だな」と、ゲラーナは、溜め息を吐いた。都合の良い言葉しか並べていないからだ。そして、「お前の本当の目的は、都合の悪い者を()る事なんだろ?」と、指摘した。ゲオを始末しに来たのだと察しが付くからだ。

「確かに、お前にしては、仕事熱心だな」と、元役人の大男も、同調した。

「う、うるさい! 私は、職務として、遂行しているだけだ! 何なら、お前から、捕まえてやろうか?」と、モリータが、語気を荒らげた。

「どうやら、図星だったようだな」と、ゲラーナは、口元を綻ばせた。核心を付いたと確信したからだ。

「へ、殺れるものなら、殺って貰おうかな?」と、元役人の大男も、挑発した。

「そうだな。ここで言い合うよりも、腕ずくで、決着を付けた方が、手っ取り早いな」と、ゲラーナも、賛同した。ここで撃退しておけば、ゲオ達が、逃げ易くなるからだ。

「ほう。つまり、我々、役人に、手を()げようって事なんだな?」と、モリータが、確認するように、問い返した。

「まあ、まともな役人なら、俺も、手を挙げたりしないが。お前のように、役人を(かた)る悪党に、とやかく言われる筋合いは無いぜ」と、ゲラーナは、淡々と反論した。役人の立場を悪用する奴に、言われたくはないからだ。

「そうだぜ。お前のは、職務(しごと)じゃねぇ! 役人の地位を利用して、利己的に立ち回っているだけだ!」と、元役人の大男が、批判した。

「ぐぬぬ…! 言わせておけば!」と、モリータが、激昂した。そして、「全員! 先ずは、そこの不届き者を引っ捕らえろっ!」と、周囲の者達へ、命令を下した。

「さあて、やりましょうかねぇ」と、ゲラーナは、頭を左右に動かした。準備運動には、持って来いだからだ。

「そうだな。暴れたくて、ウズウズしていたところだ」と、

元役人の大男も、笑みを浮かべた。

 突然、「モリータ様、大変です!」と、一人の兵士が、

叫びながら、駆け込んで来た。そして、左隣へ立つなり、囁き始めた。

「何だ? 水を差された感じだな…」と、ゲラーナは、ぼやいた。出鼻を(くじ)かれた気分だからだ。

「おいおい。早く始めようぜ!」と、元役人の大男が、急かした。

 間も無く、モリータが、愕然とするなり、「こ、侯爵様の御屋敷で、日輪熊猫(パンダ)が…!」と、全身を震わせながら、言葉を発した。

「ですので、応援を寄越して欲しいそうです!」と、駆け付けた兵士が、要請した。

「それは、一大事だな」と、モリータが、聞き入れた。そして、「者共、侯爵様の御屋敷へ向かうぞ!」と、告げた。

「モリータ様。酒場の賊や前の者共は、如何致しますか?」と、右隣の兵士が、尋ねた。

「こんな連中など捨て置け! 今は、侯爵様の(もと)へ駆け付けるのが、最優先だっ!」と、モリータが、即答した。

「何だ? 喧嘩を売っておいて、逃げようって言うのか?」と、ゲラーナは、(なじ)った。モリータの都合など、知った事ではないからだ。

「そうだぜ。先ずは、俺らの相手をして貰わないとな」と、元役人の大男も、半笑いで、口添えした。

「行くぞ!」と、モリータが、反応せずに、踵を返した。

 少し後れて、周囲の兵達も、引き揚げた。

「無視かよっ!」と、ゲラーナは、吐き捨てるように言った。無反応なのが、イラッとなったからだ。

「確かに」と、元役人の大男も、相槌を打った。

「侯爵様って奴に、何か、心当たりは無いか?」と、ゲラーナは、問うた。どのような人物なのか、興味がそそられるからだ。

「う〜ん。心当たりは、無いなぁ〜」と、元役人の大男が、眉根を寄せた。

「まさか、この国を仕切って居る公爵じゃないだろうな?」と、ゲラーナは、眉間に皺を寄せた。それ以外に、考えられないからだ。

「う〜ん。だったら、もっと、良い地位に居るんじゃないのか? 多分、違うと思うけどな」と、元役人の大男が、口にした。

「それもそうだな。それに、この国のちゃんとした役人は、弱い者を虐めるのは、大嫌いだからな」と、ゲラーナは、語った。役人が、民を虐げるのは、国の恥だからだ。

「あんた。妙に、詳しいな。公爵様にでも、仕えて居たような口振りだな」と、元役人の大男が、感心した。

「ちょっとな…」と、ゲラーナは、言葉を濁した。今は、昔の事を話したい気分ではないからだ。そして、「ゲオ(おっさん)らが気になるから、奥へ行こうぜ」と、提言した。テン・ネーン達の動きが、気になるからだ。

「そうだな。全員が、抜け出せなければ、意味が無いからな」と、元役人の大男も、同意した。

 間も無く、二人は、踵を返した。そして、店内へ戻るなり、臨戦態勢を取っているティーサを視認した。

「どうだ?」と、ゲラーナは、声を掛けた。きな臭い雰囲気だからだ。

「どうやら、入られたみたいさねぇ」と、ティーサが、回答した。

「こっちへ来る様子は?」と、ゲラーナは、問うた。不用意に、扉を開けられないからだ。

「どうだろうねぇ〜」と、ティーサが、言葉を濁した。

「どうする? 奴らが来るまで、こうして居るのか?」と、元役人の大男が、尋ねた。

「ゲオのおっさん達が、気掛かりだし、一か八か、行くしかないだろうな」と、ゲラーナは、口にした。待つよりも、突入した方が、良さそうだからだ。

「へ、そうだな。奥の奴らにも、モリータ達が逃げ出した事を伝えてやらなきゃならないからな」と、元役人の大男も、同意した。

「じゃあ、奥は頼んだよ」と、ティーサが、一任した。

 二人は、すぐさま頷いた。そして、扉を開けるなり、速やかに、通路へ進入するのだった。

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