一章 二人のアイドル名は、[Cosmos]!!
《はい! 今日のゲストはなんとなんと! 今話題の[Cosmos]の、お2人で~す!!》
ウサ耳カチューシャのマイクを付けて喋っているのは、司会者だ。
『ワアァァァァァァ!!』
観客はステージの端から出てきた2人を見て、叫ぶ。
歌も歌ってないのにペンライトを振り回す馬鹿もいる程。
ここにいる観客は、2人目当ての人が何人いるだろうか?
彼女達のファンは日本だけでも1億人はいるだろう。
歓声が中々鳴り止まなくて、司会者が困っている。
ついでに警備員も。いや、警備員であるにも関わらず、歓声を送っている人もいる。
1分経っても鳴り止まない。
だが、[Cosmos]の1人が息を吸い、マイクを口に近ずけ、第ー声を発する時には。
《おっはよーございまーす!!》
歓声は、ピタリと止んでいる。
一言一句、聞き逃さないように。
もし、誰かが、司会者でさえも、一言でも発したのならば、その誰かはもうここには来られないだろう。
そんなピリついた空気の中、声を発していいのは……[Cosmos]の2人だけだ。
《ハ~イ!! モモ達の今日のコスプレは、『プリプリぷりんのスプーン』の彩芽と》
《さ、紗桜です!! よ、《よろしくお願いしま~す!!》》
彩芽と名乗った少女は、お尻に付けているモフモフのしっぽと狐耳を振りながら、モフモフの手袋をした手で、紗桜と名乗った少女の肩に手を置く。
《いつものことだけど、今日もサクちゃん緊張してるので~、お手柔らかにいきま~す!》
紗桜は、頭に付けているプリプリのぷりんを揺らしながら、レースの手袋をした手で口をおさえている。
その姿はまるで……いや、その姿をイメージして、つくったのだろう。
本物の、お姫様みたいだ。
いや……お姫様だ。
完璧に紗桜というお姫様を、演じている。
それで言うと彩芽という役は、紗桜の初めての友達、といったところか。
観客が『プリプリぷりんのスプーン』という物語を知っていても、知らなくても、どっちでもいい。
知っていたら、嬉しい。だが知らなくてもいい。
[Cosmos]の二人がちゃんと演じてくれるから。
役者じゃない。
[Cosmos]の二人はアイドルなのだ。
だが二人は演じる。
アイドルなのだから、歌も歌う。役は壊さずに。
こんな大人数の観客がいるのに、観客は何もしない。
ただ、見ているだけだ。
みとれているのだ。
[Cosmos]は素晴らしい。
ステージが終わった後でもまだ、ステージにその姿があるように、目が離せない。
誰も気ずかない。
二人は“人”ではないということを。
気ずくはずもないだろう。
全員、信じてるのだから。
そして、二人は演じているのだから。
ただ、一つだけ。
“人”というモノを。
[人は鬼をデザートのように食べます。]の一章を読んでいただきありがとうございます。
逢峰 小命です。
えっと、少しあざといですが、どうやってこの物語を知ったのか、など、感想の一言のところに書いてほしいです。
いいところとか、気になるところは、書かなくても大丈夫なので。
えっと。
これからも[人は鬼をデザートのように食べます。]と逢峰 小命をよろしくお願いします。