アーリアの道のり2
「モンスターフォレスト……」
ゲームの時、この森で唯一初心者が相手にできない魔物であり、ビギナー殺しと言われてた強力な魔物。
レベルに比べてステータスが高く、雑魚と見立てて戦う初心者を狩ってきた存在。
「くぅっ……」
フォレストは掴まえたアダムを殺そうと木の根の束縛をきつくしていく。アダムの苦痛の声が聞こえた瞬間、ラムは殺意に身を任せフォレストに突っ込んで行った。そんなラムの行動にフォレストはにやりと笑った気がした。
「あだむをはなせ!」
「駄目だラム離れろ!」
直線的に動いていたラムの下から突如木の根が飛び出し、ラムの体を打ち飛ばす。衝撃で飛ばされたラムはダメージを受けてしまい苦痛の声を漏らすも殺意の篭もった視線でフォレストを睨む。
「ラム平気か!?」
「もんだい……ない!!!」
立ち上がろうとするが、ダメージのせいかそのまま膝をついてしまい、そのまま人型を保てずスライムに戻ってしまう。
ラムはもう戦えない状態になってしまい、アダムを救うにはマキが戦うしかない状態になってしまう。
躊躇いがちに腰の刀を引き抜きその刀身を見つめると、不安そうな自分の表情が刀身に映る。刀を持った事のないマキに取って、それはとても重く感じられた。
「勝てるのか……」
刀を構えてフォレストとの距離を縮めようと近づく。切れる距離もわからず近づいて行こうとするも臆しているマキの心境を察したのかフォレストはにやりと笑う。マキがフォレストとの距離が一定まで近づいた時、突如足元からフォレストの根が飛び出しマキに殴りかかる。
咄嗟のことに反応できず、マキはフォレストの攻撃を受け、地面を転がり刀を取り落とす。
「うわあああああ!!! 攻撃された!? いた……くない?」
攻撃を受けたにもかかわらず、マキは平然と立ち上がり自分の体を確かめる。打ち付けられたところに土がついているが触れても痛みはなくそこには若干何かに触れられた感覚しか残っていない。
ダメージが入らない事を知ったフォレストは警戒して、マキから距離をとろうとしていることからフォレストの攻撃手段は他にない事が伺える。
「あれでダメージがないんだったら」
マキは地面に落ちてる刀を拾い、フォレストに向かって走り出す。フォレストも悪あがきのマキの体を根で打ち付けるがダメージの入らない事を知ったマキはそんなのお構いなしにフォレストに近づいていく。
焦りだしたフォレストはマキを捕らえようと根を伸ばし拘束するが、マキはその根を力任せにひき千切ってしまう。その痛みから断末魔を上げるフォレストに意を反さぬまま切れる距離まで近づき刀を構える。
「これで終わりだ!!!」
フォレストの幹に刀を振りかぶるも刀を使った事のないマキは野球のフルスイングのように刀を振るも斬る事はできず、殴るように振られた刀の衝撃によってフォレストはばらばらに砕け散る。
フォレストに拘束されていたアダムの束縛も弱まり、するりと抜け出し地面に着地する。着地した後地面に蹲り束縛されていたせいで呼吸はし辛かったのだろう、咳をしながらも呼吸を落ち着かせようとしている。
「アダム無事か?」
「ケホッ……ケホッ……はい、僕は大丈夫です。それよりラムの治療をしないと」
呼吸を整え、ラムの倒れている所まで近づきラムに回復を行う。ラムの体はすぐにきれいになり、さっきまでと同じような人型にならずにアダムに近づく。スライムの姿でもなんだか気まずそうな雰囲気でしょんぼりしている。
「あだむ……ごめん。まもれなかった」
「ううん。僕だって何もできてなかったから気にしないで」
しょんぼりしたスライムの姿のラムを抱きかかえ頭を撫でながら立ち上がると、マキの所にトコトコと近づいて90度になるかというほどに頭を下げる。急な事にどう対応したらいいのかわからずマキもその場でためらってしまう。
「マキ君、助けてくれてありがとう」
「気にしないでくれ、俺だって最初何もできなかったんだから」
「それでも助けてもらった事には変わりないですから」
そう言いながら笑うアダムの顔に見とれていると、ある事に気づいてアダムに背を向けポーチをまさぐる。アダムはどうしたのかわからずキョトンとした表情でマキを見つめているとポーチから外套を取り出しアダムに渡そうと差し出す。
「さっきの戦いで……その……」
「戦いで?」
アダムはそのまま下の方に視線を向けると自分が来ていた服とも言えない服が完全の意味を成していない事とそれによってラムが抱いている部分がほぼ丸見えになっている事を知ってしまう。
その瞬間、顔を真っ赤にしてマキが差し出している外套を受け取ると茂みの方へと走っていってしまう。
「とりあえず……みんな無事で良かった」