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クロスゲート~このきに願いを~  作者: NAo
第1章 世界樹の乙女
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居食住って大切だと思うんだ

 アダムたちとの生活が始まって数日が経った。

 森には何かを造るような音が響きそのたびにその音に驚いて鳥たちが逃げ出していた。

 食事があって生活に困らないかと思っていた最初の一夜でマキはある重大な事に気が付いて行動しているのだが……。


「これはひどいですね……」


 目の前に建てられた歪な物にアダムは引き攣った笑顔をしている。

 ラムは今出来上がった物をつんつんと突いて崩れないかどうか確認している。突いた瞬間ぐらぐらと揺れる柱がこの歪な物の耐久性を物語っていた。

 なんでこんなものを造っているのかと言うと、しばらく一緒にいる事になるって事はここで生活することになるということである。生活するにはここは気候的にも穏やかで棲みやすいが()()()()()って訳ではない。

 異世界に来てしまった事は万歩譲って妥協したマキだが、人としての尊厳だけは守りたい……と言うより女の子にいつまでも野宿スタイル貫いて欲しくないという願望からこの物造りは始まった。

 皆さんがお察しのとおり、現在マキたちは家を造るべく慣れない大工仕事をしているのである。


「やっぱり、こういう物造りは専門の奴に頼ったほうがいいのかも知れないな」

「ですね~。ところであれどうします?」


 歪な物は野生の鳥が停まった瞬間またぐらぐらと揺れ、鳥を遠ざけてしまう。

 触れただけで揺れる柱に、これ台風来たら消し飛ぶんじゃないかと安易に想像できてしまう。台風がこの世界にあるのかは知らない。


「あのままじゃ危険だし壊すか」

「わかった」

「ちょっ、ラム!?」


 取り壊そうと近づこうとした瞬間、ラムが球体に変形して歪な物に突っ込んで体当たりをする。

 歪な物はラムの体当たりに耐えられずそのまま崩れ落ちる。下敷きになったラムは瓦礫の隙間から次々と出てきて一体化するとドヤ顔で威張ってみせる。


 ―――ラムのレベルが1上がった


 どうやらあの歪な物でも経験値が入るらしく、ラムのレベルが上がることができたらしい。


「もう危ないまねして、ちょっとダメージ受けてるじゃないこっちおいで」


 アダムに手招きされるまま、ラムはトコトコ歩み寄りそんなラムにやんちゃな妹を見るような優しい表情で回復を行う。ラムの体にはいっていた木屑が体から出て行き、きれいなスライムボディに戻るとラムは嬉しそうにアダムに纏わり付く。アダムもなれたのかラムのしたいようにされるがままにしている。


「それで、マキ君は家造りに詳しい人って知っているの?」

「ああ、今居るこの森の近くに二つの国があって、その片方に腕利きに職人が居るんだ」


 ゲームだったころの知識で、あの国にはギルドの@ホーム製作依頼できるNPCがいる事は知っていた。

 マキたちが居たパソコン部でも小さいながらもちゃんとした@ホームを造ってもらった事があり、その時頼んだのがそのNPCなのである。


「ついでにお前の服も買うか、いつまでもそれじゃ目のやり場にこまるしな」

「あははは……お手数おかけします」


 自分の胸の部分を隠しながら申し訳なさそうに謝るアダムにマキは無遠慮だったと、頬を掻きながらそっぽを向く。


「と、とりあえず、ここまでの道すじを調べながら行くとして、アダムもラムもその格好じゃあの国にも入れてもらえないだろう。ちょっとまってろ」


 マキが腰に下げてあるポーチを弄ると中からマキの背丈ぐらいの大きさの外套(マント)を二つ取り出し、アダムとラムに一つずつ渡して行く。


「相変わらず、そのポーチは不思議ですね」


 このポーチも元は課金で買ったアイテム欄拡張のもので、自分の持ち物を調べた時にこれも一緒にあったのだ。中にはマキがゲームで持っていたアイテムやお金が全部入っており、この世界で数年豪遊できるらしい。

 最初マキの来ていない服を着せてあげようかとも思ったのだが、サイズがぜんぜん合わずそのまま着せるには危ないと判断された。


「国までは結構歩くから、二人にも何か武器を渡しておきたいんだが。希望とかあるか?」


 ポーチの中にはいつも使っている刀の他に昔使ってた初心者用の剣や棍棒なんかの売却不可のアイテムも入っている。このあたりならアダムでも装備できるだろうし、最悪無くなっても困んないという判断ができた。


「僕は後ろで回復とか支援してますのでいらないと思います」

「らむはこのからだがあればいい」


 取り出した装備を断られ、しょんぼりとした表情でまたポーチの中にしまいこみながら今度は地図を取り出し現在地と向かうべき方向を確認する。

 ゲームだった時も地図は表示されず、自分たちでこうやって地図を確認しながら冒険していた事を思い出しあの時の面倒くさい事も、いざ現実でやることになった時に役に立つと実感した瞬間だった。


「行き方角もわかったし、それじゃ出発しようか?」

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