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クロスゲート~このきに願いを~  作者: NAo
第2章 大森林開拓計画
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暴食攻防戦1

粘液大爆発(ウーズビックバン)


 グラトニースライムの膨れ上がった体は限界を迎えて、爆発する。全範囲に向けての粘液の津波がマキ達に迫る。

 マキはラムのくっついている左腕を頭上に上げ、


「ラム、頼んだ!!!」

「うん!!!」


 ラムはその体を伸ばして頭上の枝に掴まり、そのまま引っ張り上げるように枝の方へと元の姿に戻ろうとする。それに合わせてマキの体も宙に浮き、粘液の津波を回避する。


 ――マキは「立体軌道Lv1」を習得した

 ――ラムは「立体軌道Lv3」を習得した


 木の枝に避難した後、目下の状況を見るとそこには、木や草を腐らせながらも広がっていくグラトニースライムの粘液がひき詰められており、その中心にはスライムコアが剥きだしの状態で放置されている。

 マキは刀を中段で腰にまわす様に構え、素早い刀の振りを繰り出す。


辰風(たちかぜ)!!!」


 辰風(たちかぜ)……マキが持っていた技のひとつ、エフェクトは波動、効果は斬撃、威力は依存、属性は風。

 武器の威力をそのまま飛ばす遠距離用の技で属性は余って居たから付けたのだが、そのおかげで速度もあって使い勝手のいいものになったとゲームをしていた時のプレイヤーの××は満足そうにしていた。

 斬撃はグラトニースライムのコアに接近するも粘液の壁を造られて、風の刃は阻まれる。

 斬撃は粘液の壁を切り裂き、軌道がそれてコアに当たらずに通過する。


「危ないですね。そんなの当たったら無事じゃすまないじゃないですか?」

「まきはずれた!」

「わかってる! ラム、触手が来るぞ! 別の木に移って避けるんだ!」


 ラムは言われるがまま別の木に触手を絡ませてマキを連れて引っ張るように別の木に移る。元いた木には多数の触手がマキとラムがいたところを通り抜ける。

 移動の間にマキ達に迫る触手は刀を持って切り捨てるが、落ちた触手は元の地面に広がっている粘液に混ざって元通りになる。


「まきどれくらいこれをやっていればいいの? まきおもくてつらいよー!」

「みんなが渓谷を越えるまでの我慢だ。最後の馬車が走り出して結構経ってる。今頃は渓谷の渡り道についてるはずだ」


 マキ達がしているのは、要は殿でグラトニースライムがマキ達を追って里に入らないようにするためのもの。だからマキ達の目標はみんなの時間稼ぎもしくはグラトニースライムの撃破なのである。

 本能的に時間をかければグラトニースライムを倒せる事は理解できている。だが、そうなると里のラースゴブリンには間に合わない。


「元から俺たちだけであの化け物を倒せるなんて思っていない。俺は端役の剣士でしかない……それでも」


 それでもと、マキは目の前の捕食者を見据える。前の時間で「君ならできる」とラムが言ってくれたから。みんなを救うと誓ったから。


「だからこそお前をみんなのもとには行かせない!!!」


 刀身から繰り出される風は先ほどから何度も粘液の壁を切り裂いては逸れてを繰り返している。

 だが、次第にその軌道はコアに近寄っていき、グラトニースライムにも危険性を感知してだんだん粘液の壁が分厚くなっていく。


「ちまちまちまちま…煩わしいぞ! 人間!!!」


 一度コアに戻った粘液はどんどん膨れ上がっていき、破裂寸前の風船のようになる。

 マキはその状態に警戒を強めてラムに避ける体勢でいるように指示を出す。


粘液圧水塵槍(ウーズランサー)!!!」

「今だ! 別の木に回避しながらあいつのコアに近づいてくれ!」


 マキの指示に従ってラムはグラトニースライムの頭上を通り抜けるように触手を伸ばしてマキを引っ張りあげる。粘液圧水塵槍(ウーズランサー)はマキ達がいなくなった所を穿ちその勢いのまま森の屋根を突き抜けていく。


 ――マキは「立体軌道Lv2」に上がった

 ――ラムは「立体軌道Lv4」に上がった


 圧が弱まるまで放出しているグラトニースライムは隙だらけであり、マキはその隙をついてグラトニースライムに近づき風の刃を放つ。


「なめるなぁぁぁぁ!!!」


 残っている粘液を使って壁を造りだし、身を守ろうとする。しかし、先ほどまでよりも薄い壁はマキの一撃の前には効果もなく、簡単に切り裂かれる。

 刀から放たれた斬気を纏った風はグラトニースライムのコアに掠めるように横切る。斬撃はコアの中心から少しそれて通り抜け、コアの端のほうに傷がつく。辺りに広がっていたグラトニースライムの粘液は大きく波打った後、もがき苦しむような悲鳴を上げてコアを包み込むように元に戻り、その場で暴れる。


「効いてるのか?」

「すらいむにとってこあはしんけいのようなもの。それにきずがついたらいたいにきまっている」


 木の上から、グラトニーを見つめていると、そのまま暴れていた動きが小さくなり動かなくなる。

 生きているのかどうかもわからずに様子を見ていると、グラトニースライムの粘液は沸騰したかのようにボコボコと気泡を出しはじめ、気泡が破裂する度に当たりに瘴気が充満していく。

 瘴気を打ち消すように斬撃を撃ち出すが、すぐに別の瘴気がグラトニースライムを包んでしまって容易に近づけない事態になっている。


「だめ、ダメヨ……コンナ傷で我を忘れてはイケナイワ……。マズハ、きずを……治すエイヨウガいる。アツメナキャアツメナキャアツメナキャアツメナキャ……」

「ラム……すぐに動く準備をしておけ。何かやばいのがくるぞ」


 グラトニースライムの異常さに身の危険を感じたマキは、すぐにラムに指示を出し、抜刀していた刀を鞘に戻し、その手を空けておく。


「もっとモットひとつにナラナキャ……喰らいてノゾムは世界のシンリ……」

「来るぞラム!!!」


暴食ナルハ我ガ本能(グラトニー)ィィィィ!!!」





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